赤との電話
今回はカイとチカの会話中心に進んでいきます
“呼び出し中”
「もしもし」
「俺、俺」
「詐欺?」
「違う。今帰ってきた」
「で?」
「いやチカが電話しろ、って言ったんじゃん」
「あぁ、そうだった」
「で、何?」
「夏休み暇?」
「暇っちゃ、暇だけど」
「うちらの島に来ない?」
「うちらの島って、チカが住んでる?」
「家、民宿やってるんだけど、団体さんの予約が入って、人手不足なんだ、だからカイが手伝えと」
「期間はどのくらい?」
「2日間で良いから、やってくれたら、夏休み無料で泊めてやるよ」
「分かった、全身全霊をかけて手伝わせて頂きます」
「で、船が明後日のに乗らないと間に合わないんだけど…、大丈夫だよな!」
「まぁ一応」
チカに毎日会えるなら、何日でも手伝いたい、でもこんなに早く会える何て、世の中棄てたもんじゃないな
「で、仕事内容は?」
「料理できるだろ?」
「特技が料理ですから」
「朝と夜の飯を作って欲しいんだ」
「良いの?俺なんかで?」
「良いの良いの!で、どうするの?」
「一度“やる”って言ったんだからやるよ」
「流石カイ。でも良いの?大事な夏休みをタダ働き何かに、費やして」
「良いよ、こっちいても、つまんないし、そっちの方が楽しそうだし」
「何にもないぞ」
「だからだよ」
「何で?」
「何もない所が大好きだから」
「変な奴」
「あっ、もう手伝わねぇ」
「アタシはその考え立派だとおもうよ、うん」
「民宿の手伝い、頑張るか!」
「調子の良い奴」
『ハハハ!』
何で、
何で電話なのにこんなに楽しいんだろ、
何で声だけで相手の心がわかるんだろ、
何でこんなに俺、笑ってるんだろ、電話越しなのに笑ってる
「チカ、ありがと」
「何だよ急に、気持悪い」
「うるせぇ、素直に受けとれよ」
「…どういたしまして」
「何かチカと話てると、楽しい」
「アタシも」
「一番早くてそっちに行く、フェリーはいつあるの」
「明後日」
「はっ!?」
「明後日の、それを逃すと5日後」
「じゃあどっちにしろ明後日か」
「何、凹んだよ?」
「早くチカに会いたいから、2日は長いなって」
「えっ?」
「なぁんてな、ビックリした?」
「…馬鹿」
あれ、何か涙声だぞ、ヤベェもしかして、また泣かしたの俺
「ゴメンゴメン、泣くなよ、なっ?」
「泣いてねぇよ!」
「ホントに?」
「しつこいなぁ、ホントに泣いてねぇよ」
「よかった」
「何で?」
「女を泣かす男は最低だろ、女の笑顔を作れる男になりたいんだ、だからせめてチカだけは笑顔でいて欲しい、他の女を裏切るかもしれないけど、チカだけは笑顔にできる男になる、そう決めたから」
「何でアタシなの?」
「始めてできた、親友だからかな」
「何だよ、アタシに惚れてるのかと思った」
「へ、変な事言うなよ。親友、親友だよ」
図星?少しテンパった
「でも何かカイって、哀しいね」
「何で?」「つい最近会ったアタシが、唯一の親友だよ、アタシの何倍も、話して・笑って・怒って・泣いた人だっているでしょ?」
「他人に感情を出すことは、まず有り得なかったんだ、だから笑いもしないし、怒りもしない」
「何で感情を出さないんだよ?」
「ゴメン、言えない」
「どうして?」
「俺がこの事を話す相手は、何があっても守り抜く人、そう決めてるんだ」
「何か重そうだな、いつかその重りがとれる時が来ると良いな」
「そうだな」
「何かしんみりしちゃったな、今日こんくらいにしとくか」
「そうするか、じゃあな」
「じゃあな」
“プッ”
切れちゃった、守り抜く人か、チカにあの事を話したかった、でも今の俺に他人を守り抜く自身も力もない、いつかは言えるような男になるよな。
その日まで待ってて欲しい