青と赤と白と黒で年越し
今年も残すことあと4時間、ユキといろいろ話をしてると約束の時間になってた、集まるって言っても、そば食って、カウントダウンして、お参り行くくらいだからな
「ユキ!カイ!入るぞ!」
いつもの事ながら、どこの家にもチャイムってものがあるんだから使えよ
「あけおめ!」
「死語だし、まだ12月31日の20時だよ、先走りすぎ」
「細かい事は気にするな!」
テンション高すぎだよ、後ろにいるマミ姉も呆れてるよ、ついていけるのはユキだけだよ
「カイ、年越しだぞ、年越し!一年が終わって始まるんだぞ、お祭りだよお祭り!」
「チカ、俺は分かるよぉ」
似たもの同士だなコイツら、マミ姉は一人でこのテンションについていってたとなるとキツイよな
「マミ姉、どうにかならない?」
「治まるまで待つしかないよ」
放任主義か、ほっとけば人間だからいつかはおさまるだろ、でも治まる前にこっちがおかしくなりそう
少し早いけど夜飯でそばを食べた、当然俺の手打ちです、ダシからこだわった一点もの
「そば美味しい!」
「当然だろ」
「そばまで打てるなんて凄いなぁ」
「どこでこんなの覚えてくるの?」
「立ち読みとか、見よう見まね」
「流石アタシの男だ」
当たり前だ、と、今回のは我ながら出来が良かったから、良い年になるな来年は、ってか他人にそば食わしたのは井上以外だと始めてだな、前の親は家にいなかったから、井上は無理矢理来てただけだけど、今思うと井上は俺が引きずってた事を知ってたんだろうな
「毎日でも食べれるよぉ」
「疲れるからやだよ」
「そんなこと言わないでさ〜、アタシからも頼むよ」
「甘えても無理」
「お願い、カイ君」
「少し色気を出しても無理」
『ケチ』
前略、おとぉおかぁみんなが僕を良いように遣います
「紅白やってるよぉ」
紅白か、毎年飽きずにやってるよな、派手な衣装で路線がずれてる奴らもいるし、あんまり俺は好きじゃない
「プラ●ド見ようよ」
「俺もそっちが良いな」
「マミはぁ?」
「私も武●が見たい」
「はい決定!はい変えろ!」
ユキが渋々チャンネルを変えた、調度●蔵が試合をやってるところだった、武●が出たとたんマミ姉が騒ぎ始めた
「頑張れ!そこでローは無いだろ、何でパンチしないの!?」
「マミ姉、どうしたの?」
「私、格闘技とかみると興奮しちゃって、大好きなの●蔵とか」
「意外」
あんまり格闘技とか見ないタイプだと思ったのに、マミ姉の意外な一面が見れて良いか
「マミ姉って格闘技見るといつもあんななの?」
「そうだよ、唯一マミ姉が興奮する瞬間」
「あぁなると誰も手をつけられないんだよねぇ、ちなみにチャンネル変えたらぁ、来年は迎えられなくなると思った方が良いよぉ」
野球を見てる酔っ払いばりにたちが悪いと、確かにさっきから異常に熱くなってるマミ姉がいるけど、いつもの大人な感じと違って、拳を振り上げて応援してる。
プ●イドも終わって、俺達はお参りに向かってた、その間も除夜の鐘を聞きながら、ちなみに只今90回を突破したところです、あと少しで年が明ける
「あと少し、あと少し!」
「深夜なのにテンション高すぎだよ」
最近は歩いてる時は、チカと俺、ユキとマミ姉で歩いてるのが当たり前になってきた
「今何分?」
「55!今年はあと5分だよ!」
「ユキ、マミ姉、あと5分だからここら辺でカウントダウンしよ」
ユキが携帯を開いて時計を見た
「ホントだぁ、ココでやるかぁ」
今年はいろいろあったな、一番濃い一年だったな、来年はもっと濃い一年になるんだろうな、年が変わっても俺達は何も変わらないけど、年を積めば変わる事もあるんだろうな
「カイ!あと20秒切ったよ!」
「よっしゃ、じゃあ行くか…」
『……5・4・3・2・1!ハッピーニューイヤー!!』
「カイ!年越しちゃったよ!アタシ達4人一緒に年越したんだよ」
「分かってるよ…、ってあれ」
俺が見た先にはユキとマミ姉がキスしてた、人目を憚らないで、堂々と
「嘘…、大胆」
「過ぎだろ」
キスが終わったらしい
「どうしたのぉ?二人ともボケ〜っとしちゃってぇ」
「せめて見てない所でやれよ」
「良いじゃないの、前に一回みたんでしょ?」
「見たけどさぁ…」
二人がそんなに大胆だったなんて思わなかった、最初に見たときは遠目だったから良いけど、今は目の前で堂々と
「ほらぁ、良いから早く神社行こうよぉ、人が集まっちゃうよぉ」
「行くか」
ユキとマミ姉が先を歩いて行った、俺達は軽いカルチャーショックを受けてた。
神社はそれほど人がいなかった、10分ちょっと並んだだけでお賽銭出来た
“チカとずっと一緒にいれますよ〜に”
ベタでバカだけど、俺がホントに願ってることだからな、気合い入れて50円も入れたから叶うだろ
「なにお願いしたんだよ?」
「言う訳ないだろ」
「教えろよ」
「願い事は教えると叶わないんだぞ」
「ホントに!?」
「知らないけど」
チカがフグみたいに膨れた、人の邪魔になるし、いつの間にかユキとマミ姉がいなくなってたから裏に行った、お祭りの時に教えてもらったところに
「ユキとマミ姉いなくなったな」
「また二人でイチャイチャしてるんだろ」
「カイは人前でキスなんてしないよな?」
「するしないじゃなくて、出来ないよ」
チカの顔がさっきの事を思い出したのか真っ赤になってる、暗闇でも分かるくらいだからかなり赤いんだろうな
「アタシ達の始めてのキス覚えてる?」
「覚えてるよ、ユキとマミ姉のキスを見た後、無理矢理俺がキスしたんだろ」
「あの時、心臓が破裂しそうなくらいビックリした」
あの時は意味わかんない理由で無理矢理キスしたからな、自分でも大胆さにビックリだよ
「チカに対するキモチが爆発した結果、気づいたらキスしてたんだよな」
「アタシ、カイに一目惚れしてた、だからキスされた時凄く嬉しかった」
「俺も一目惚れかな、始めての感覚だったよ、あの時の俺は受け入れたく無い事だったと思うくど」
チカには悪いけど、初恋じゃないけどあんな感覚は始めてだった、だから自分を抑える事ができなかったのかな
「アタシね怖いんだ」
「何で?」
「人をこんなに必要としたことが無かったから、兄貴もユキもマミ姉にもこんなに依存しなかった、まる一日泣けば気がすんだ。でもカイは違う、完全に依存してるんだ、アタシの頭の中はカイでいっぱい、今アタシの中に物凄い嵐を作ってるの、でもその嵐が無くなった時アタシは生きて行けないと思う」
チカが俺の事をそこまで思ってくれてるのが嬉しかった、俺もチカがいなくなったらあの時より心が荒むと思う
「大丈夫だよ、絶対にチカから離れない、チカが遠くに行かなきゃいけなくなったら俺も行く、絶対にチカをはなさないから」
「でも、もしカイがアタシに飽きたりしたら?」
「飽きない、チカ以上の人が見つかるとも思えないし、俺もチカと同じくらいチカに依存してるから、だから俺もチカと同じくらい不安もあるから、だから依存しあってれば良いじゃん」
チカがぽろぽろと泣き出した、また泣かしちゃったよ、もとから泣き易いってのもあるけど、心が痛む
「チカ、じゃあ誓うよ、チカに、ユキに、マミ姉に、ミナに、学校のみんなに、チカを絶対に離さないって」
「ホントに?」
「誓うよ」
チカがうるんだ目で俺の目を見た、俺もしっかり見てチカに近付いた。
心が通じあった気がした、目を瞑ってキスをした、今年始めてのキスを、去年の事が頭に浮かぶなか、チカの記憶だけをかきあつめて