赤の好き
期末テストも終わって、受験生には戦いの季節がやって来る、でも青春を歐歌する人達にはビッグイベントが
「もう少しで冬休みだけど、受験生だから遊びと勉強を半々で」
フウちゃんのいつも通りの気の抜ける話、眠くならないのは良いことだけど、ずれてるんだよな
「先生、半々じゃなくて、普通全面的に勉強じゃないの?」
サエ、良いこと言うじゃん
「だって勉強しないでしょ?」
『確かに』
一同納得、悲しいけどそうだな、みんな勉強しなさそう、一番しなくていいサエが勉強してるだけ
「俺は勉強も手につかないよ」
「コクっちゃえば、楽になるかもよ」
「まだだよ、最低でも卒業してからだね」
ダイチの恋、思った以上に辛そうだな、ダイチが選んだ道だもんな、俺にはそんな恋出来ないよ
「カイ、久しぶりに海行こうよ」
今日は午前中授業だし、サーフィンもしてなかったから行くか、最近ウェットスーツを入手したし
「OK」
「学校終わったボード取って直行な」
海に着いた時は波は落ち着いてたけど、暫く待ったら良い波が出てきた、冬は荒れるけど良い波が来るんだよな、寒いけど
「やっぱ、冷た」
「何情けない事言ってんだよ、サーフィンが出来るんだからありがたいって思えよ」
確かに、学校から帰ってすぐサーフィン、今の俺にとっては最高の贅沢だよ、寒いのに海なんて、とか思う奴もいると思うけど、冬は水の方があったかいぞ
「チカ、悪いな、二人でクリスマスできなくて」
「良いよ別に、ココは何も無いからみんなで騒いだ方が楽しいだろ」
「そうだな、二人とも高校受かったらデートしよ」
「うん!」
チカの笑顔、コレを見るたび、俺は癒される、どんな所にいても、どんな事が起きようと、チカの笑顔だけでいい
「クリスマス、最高の思い出にいてやるから」
「アタシは辛口だよ」
「大丈夫、絶対に楽しませるから」
「頼んだよ」
チカとの思い出が一つ増えるたび、俺の心がチカに一歩近づくような気がする。
波が無くなって、日も沈み始めた時、俺達はボードを置いて夕日を見に行った、寒い時ほど光が綺麗に見えるからな
「カイ、人を好きになるのって、どういう事だと思う?」
「何だよ急に」
「何となく」
人を好きになるか、気にした事が無かった、自然現象みたいなものだと思ってたし
「相手に自分の全てを捧げる事かな」
「捧げる?」
「自分の気持ちも、過去も、未来も、今も、全部貴方がいるから回ってる、僕は貴方のサイコロに従いたい。みたいな」
「サイコロ?」
「我が侭とか、相手の気持ちとか」
「カイの“好き”って自分を犠牲にしてるよね」
犠牲か、チカのタメなら俺の犠牲は易いもの、これって俺のエゴだよな
「チカの“好き”は?」
「アタシは、解放かな、アタシの全てを受け入れて欲しい、アタシの心に入って来て欲しい、そんな感じ」
「強引じゃない?」
「良いの、恋は自己チューにならなきゃ」
それも良いかもな、でも何でチカはこんな事聞いて来たんだろ、好きなんて人によって定義は違うし、他人の意見を聞いて何かが変わるわけでもないし。
夕日はいつもと変わらなかった、導かれてるような感覚に陥る海の赤い道、照らされてる所は燃えてるみたに赤い、でもチカの髪だけは夕日に負けないで赤い
「カイと夕日を見ると、カイをもっと好きになる」
「俺も。夕日って不思議だよな」
自然とチカの顔を見てた、チカも見てた、目があうとまだ顔が熱くなる
『好きだよ』
チカにキスをしてた、意思が通じあってたかのように同時に、目を瞑って、顔を近づけた。
また一歩、チカを好きになってる俺がいた