青と勉強会
時間が流れるの早いな、東京にいる時は一秒すら遅く感じたのに、ココは一週間すら早く感じるよ、もう期末テストじゃん、今日からまた先生の日々だよ、これはこれで楽しくて良いんだけど
「今日はこれにて終了」
みんな頑張ってんな、ミッチーは前とは段違いに頭が良くなってるし
「ミッチー、いつの間にできるようになったの?」
「コノミさんの家庭教師のお陰です」
「コノミちゃんっていくつなの?」
学校も行ってない感じだし、若干俺らよりも年上に感じられるし
「16歳です」
「学校は?」
「家の事情で行けないそうです」
あんな元気だけど可哀想だな、住み込みで親が仕事して母子家庭らしい
「カイ、今日空いてる?」
「空いてるけど」
「勉強付き合ってよ」
「分かった」
サエにはあれからたまに勉強を教えてる、サエにはもう教える事がないくらいだけど、で、チカを帰らせるのが一苦労なんだよな
「チカ、悪いけど先に帰ってて」
「また?サエに優し過ぎない?」
いつもこれだ、ただサエに勉強教えるだけなのに、何か勘違いしてんだよな
「そうじゃなくて…、な、別に来ても良いけどもたなかっただろ」
前に一回、サエに教える時にチカが来たけど、30分もいられなかった、だから誘っても来ないんだよな
「勉強だけだからな!」
「分かってるって」
何とかチカを帰して図書室に向かった、毎度の事ながら、これで半分くらいエネルギー使うからな
「悪い悪い、待った?」
「全然」
何かカップルの待ち合わせの一コマみたいだな
「今日は何?」
「化学。ココなんだけど」
「これね、これは…」
あらかた説明し終わった、サエに勉強は必要なのかな、俺が言った事も把握してるっぽいし、サエなら一人でもできそうなんだけどな
「カイ、いつもありがとう」
「別にいいよ、暇だし」
チカを無理矢理帰すのが一苦労なだけだから
「カイは何であんな高校行くの?」
「チカがいるし、ユキもマミ姉もいるから」
「そんな理由で?」
サエからしたらそんな問題かもな
「理由なんてそんくらいで十分だろ」
サエは理解できないっていうか、呆れてるみたいな顔をしてる
「もったいないよ、カイならもっと良い学校に行けるよ」
「そんなに高校って大事か?」
「大事だよ」
何か必死だな、サエは学歴が全てって感じだからな
「何で?」
「だって偏差値が高い学校に行った方が、将来につながるでしょ」
「別に高校行かなくても成功してる人はいるし、どんだけ良い大学行っても、就職できない奴もいる、一概に良い学校行けば良いってもんじゃないんじゃないでしょ」
サエの言ってる事も一理ある、でも俺はサエの考えで高校は決められない
「カイは何でそんなに自信がもてるの?」
「自信?何で?」だんだんサエが不安そうな顔になっていく
「だって将来の事考えた事ないんでしょ?」
「無いね」
「私は怖い、自分に自信がないからかもしれないけど、将来ダメな大人になりたくない」
「俺は高校を一時の恋で決めて、将来の事なんかこれっぽっちも考えてないから?」
サエは無言で頷いた、確かにそうかも知れないけど、俺は今を大切にしたい、ヘタレ発言かもしれないけど、将来の事を考えて今のチカを手放したくない
「俺は俺の考えをサエに押し付ける気はない。でも、サエの考えを鵜呑みにする事も出来ない、分かるだろ?」
またサエが無言で頷いた
「お互いがお互いの道を信じる、それで良いだろ?」
「最後に聞かして、チカのタメに死ねる?」
何で急にサエはそんな事聞くんだろ、変な奴
「死なない。チカを一人にしない、でもチカを死なせない」
「それ、答えになってない」「でも誰かのタメに死ぬのが=その人の幸せになるとは思わない、少なくとも俺は嫌だ」
「でも、もし…」
「腕が千切れようが、足がなくなろうが、俺はチカのタメに生きるよ」
実際こんな事は無いと思うけど、俺はそれくらいの覚悟はある、ミナみたいにはさせない
「チカが羨ましい」
「何で?」
サエの顔が変わった
「だって、私にもその愛が欲しい」
「どういう意味?」
何言ってんの、全然理解できない、でも良くない気がする
「鈍感、私、カイの事が好きなんだよ」
「え…」
「私、カイの事、大好き、チカから奪いたいくらいに」
サエが、叶わない恋って、俺に?チカから奪いたい?チカは友達だろ?
「俺にはチカがいる、だからサエには悪いけど、俺はチカしか見えない」
「チカの次でも良い、カイの側にいたいの」
「無理だ、サエは友達、それ以上でもそれ以下でもない」
「でも!カイが好…」
「サエ!」サエが話てる横から怒鳴っちゃったよ、でも、サエとの関係を壊したくなかった
「分かってくれよ、チカを裏切れない」
「何でチカより先に、カイと出会えなかったんだろう」
サエがぽろぽろ泣き始めた、でも、俺がここでサエを受け入れたら、全てを裏切る事になる
「最初にサエに会ったら、サエとこうして話してすらいないよ」
「全部チカのお陰って事?」
「そう」
笑顔で泣いてる、胸が痛む、苦しい、でも、今甘えたら一生後悔する、だからサエを泣かせるしかない、最悪だな俺
「チカに負けたんだ、チカのどこに私は負けたの?」
「分からないんだ、不思議な奴だよ、女らしくないし、口は悪いし、でもチカじゃなきゃ駄目なんだ」
サエが呆れてる、告白した相手に自分の彼女の自慢されたらな
「じゃあチカには絶対負けない」
「だから、サエとは…」
サエが思いっきり笑った、サエのこんな笑顔を始めてみた
「カイより、もっと良い男を見つけて、最高の恋をするから」
やっぱりサエは強いや
「応援してるよ」
サエの笑顔、悲しいはずなのに、笑ってる、強いな、空元気かどうかは分からないけど、俺はサエが最高の恋をできるように願うだけ。
チカにこの事は言えなかった、サエとチカのタメにも、無知なのは可哀想だけど、知らない方が良いこともあるよな