青の過去
やっと俺はあの日の事を話す気になれた気がした、チカが俺の中で大きな存在になったんだ、話しても何も変わらない事は分かってる、でも話したら何かあるかもしれない、そんな気がした
「チカ、俺さぁ、5年前に幼馴染み、その時好きだった子が死んじゃったんだよね」
「えっ?」
―5年前、俺はまだ笑ってた、毎日が楽しかった、いつも3人でいた(一人はおまけ)
「カイちゃん、今日は何する?」
「未菜、もう5年生なんだから“ちゃん”は止めろよ」
「良いの、カイちゃんはカイちゃんで」
俺の事をカイちゃんと呼ぶ女の子が、石上未菜俺が子供なりの初恋の相手。
その日は井上がいなかったから二人だけだった、邪魔がいないし、好きな子と二人きりだったからはしゃいでた
「ミナは何したい?」
「おままごと!」
「いつまでそんなことやってんだよ」
「野球!」「ボール来たら、目を瞑るくせにできるわけないだろ」
「う〜」
いつもこんな感じで幸せな時間を過ごしてた
「じゃあカイちゃんの家に行こう!」
そういってミナは走って行った、この頃から親は家にいなかったから、うちで遊ぶのが多かった
「負けたら罰ゲームだよ!」
「分かった分かった」
しょうがないから追って行った、それが奈落の始まりだった。
ミナが十字路を渡ろうとした時だった
“キィッキィィィ!ドン!”
「ミナ!」
俺の前でミナが力なく人形のように宙を舞った、地面におちた瞬間血で水溜まりができた、俺は目の前が真っ白になって恐怖で動けなくなった。
ミナは即死だったらしい、葬式も通夜も行かなかった、当然ミナにお線香もあげてない。
それから俺は虚無になった、笑う事や人との触れ合いを自然と絶った―
「ミナちゃん、多分カイに来て欲しいと思う」
「分かってる。何度も家の前まで行ったんだよ、でも怖くて引き返した」
暫く沈黙が続いた、チカに話すべきじゃなかったのかな
「だから、チカは絶対に手放さない、これはせめてものミナへの償い」
「じゃあアタシは絶対にカイから離れない、これはミナちゃんの願い」
ミナなら喜んでくれるよな、絶対に笑って過ごすから
「アタシがミナちゃんがいた時より、ずっと幸せな毎日をやるよ、ミナちゃんの事を忘れろとは言わない、でもミナちゃんにしがみつくな、前だけを見て」
この言葉、分かってたようで逃げてた、ミナのいた時から進んでるようで、止まってる、でも今は動いてるよな、チカが動かしてくれたよな。
俺はチカをそっと抱きしめた
「チカ、ありがとう」
「何だよ急に?」
笑顔で
「気分!」
「変な奴」
「うるさい。もう時間だから帰ろう」
そういって手を差し出した、手を繋いでお祭りの真ん中を歩いて、待ち合わせてた鳥居の下に行った、そこにはユキとマミ姉が立ってた
「二人共遅い」
「まぁ良いじゃん、二人共なんか楽しそうだしぃ」
「本当だ、何かあったの?」
「ちょっと動きだしただけ」
二人の頭の上にはクエスチョンマークが浮かんでた
「何言ってるのぉ?」
「ユキには関係ないだろ」
「チカまでそんなことぉ」
「まぁ、良いじゃない、早くしないと花火始まっちゃうよ」
「そうだぁ!早く行こぉ」
ユキがマミ姉の腕を引っ張って走って行った、俺とチカは後ろを追って行った