赤との出会い
ジムで2時間くらい登って帰り支度をしてるとき、何となく渋谷に行きたくなった、いつもは行かないし、避けてた街なのに、無性に引き付けられた。
渋谷に着くととりあえず飯を食いに行った、洋食屋でハンバーグを食った、案外マズイ、絶対俺が作った方がうまい。
服やCDを見ながら渋谷を歩いてた。
「つまんねぇ、何でこんな街に人が集まるんだよ」
口には出さなかったけど、顔には出てたはず。
俺は吸い込まれるように、暗い路地に入って行った、ふと泣き声が聞こえた
「誰かいんの?」
何でこんなことしたんだろ、こんな面倒な事スルーすればいいのに。
「……」
黙りやがった、仕方ないから近くに行った。そこには赤い髪の女の子がいた、髪も短くてボーイッシュな雰囲気だった
「もしもし、どうした?」
しゃがんで覗き込むように、顔を近付けた
「ひっ!」
スゴい怯えてる、その瞬間ただ事じゃない事だって分かった
「どうした?力になるよ」
力になる?なに柄にも無いこと言ってんだ俺は、こんな事して何になる
「……」
「黙ってたら分かんないだろ」
少し引いてみた、ずっと覗くのに疲れた、女の子は俺の顔を見上げてきた
「話す気になったか?」
やっと泣き止んだ
「盗られた」
「何を?」
「バッグ」
「はっ!?スリにあったって事だよな?」
女の子は無言で頷いた
「携帯とか財布もか?」
また頷いた
「警察には行ったか?」
「行ったけど、見つからないって」
頭が真っ白になった、この後どうするか考えた。
ってか何で俺はこんなに必死なんだ、他人の事だろ、ほっとけば良いだろ、いつもそうしてきただろ
「家はどこらへん?」
「島から来た、明日の朝に帰る予定だったけど、全部盗られた」
「じゃあ、帰れないって事だよな」
静かに頷く
「なら家に来いよ」
あれ?俺の口から、おかしな言葉が
「一日だけ泊めてやるよ」
誰か俺の口使って何か言ってる、俺絶対こんなこと言わないだろ
「…でも」
「親いないから、大丈夫」
「違う」
「あぁ、何もしないよ、約束する」
そんな事じゃない、女の子があたふたしてるだろ、迷惑だから
「ホントに良いの?」
今だ、前言撤回のチャンスだ
「良いよ、お前が良ければ」
良くないんですけど、友達すらあげたことないのに、見ず知らずの他人を泊める?以上だろ
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
やめてくれよ
「お願いします!」
「お願いされた!」