青の仕事《後編》
憂鬱再来、アイツがいると俺が憂鬱になる、俺を怒らせる事ばっか言いやがる、でも女に怒れないのが俺のイタイところ
「カイ、何怒ってんの?」
「いろいろと」
「昨日の人?」
「まぁね」
アイツの事をぶり返さないでくれ、考えるだけで欝モード突入
「シシキ君、今日は接客の方をやってくれない?」
おの地獄から抜け出せるのは良いんだけど、アイツらを相手するのも地獄だよ
「いや、でも厨房が忙しいんじゃ…」
「私が行くから大丈夫、やっぱりシシキ君には可哀想だから」
良かれと思って言ってくれたんだと思うんだけど、やっぱり辛い
「良かったなカイ、キツイって言ってたもんな」
「じゃ、じゃあお言葉に甘えて、接客の方を…」
おばさんの笑みを見たら断れないって、第二次地獄戦争勃発。
接客の仕事は主に、料理を出すのがほとんど、でも終わってからが俺的にはこっちの方がキツイ
「シシキ君って言うんだ、カッコイイからモテるでしょ?」
「シシキ君は里花が狙ってるんだよ」
里花は渡辺の事だ
「でも、フラレたんでしょ、なら大丈夫だ」
この女二人の暴走を止めてくれよ、お前らに惚れるほど女に飢えてないから
「ねぇねぇ、今お仕事ないんでしょ」
「一応」
休憩中だからサーフィンしようと思ったのに、ゴキブリホ●ホイに捕まったゴキブリって、こんなに絶望感に満ちてるのかな
「なら遊べるよね?」
「いや、でも…」
「ほら、遊ぼう」
終わった…、と思ったその時!向こうから色黒の髪白のデカイ男が、ユキだ、救世主!
「ユキ…」
叫んだ俺の声がフェード・アウトしてく、後ろには女の群れが
「カイ〜」
ユキが目で訴えてくる
「助けてくれぇ」
って、でも俺も助けて欲しいんだよ、万策尽きるとはこの事だな
「シシキ君行こ行こ!」
「いや、ちょっと…」
無理矢理腕を引っ張られて連れてかれた、チカとかどこ行ったのかな、いれば違うのに
「シシキ君は好きな人とかいるの?」
好きな人、俺の好きな人か…
「そんな事聞いちゃダメだよ。もしかして彼女とかいたりするの?」
「別に…」
「なら私でもチャンスあるんだよね?」
早くココから抜け出したい、辛い、苦しい、こんなにチカが恋しくなったのは始めてかも
「ねぇ、アドレス教えてよ」
何かさっきから流されるままに相手が話を進めてるな。
ってか歩きながら話してたから、かなり歩いたな、向こうに何か変な群れがいる
「マミちゃんはどんな男がタイプなの?」
男の太い声、ってかマミちゃん?マミ…、マミ姉か!最高の救世主!
「マミ姉!」
「あらカイ君。じゃあ皆さん、バイバイ」
マミ姉が俺の腕を掴んで、周りに聞こえないように
「合わせて」
「じゃあ、行くか」
マミとその場を立ち去った、心強いよマミ姉、後ろから女の子の
「何あれ?」
っていう声や、男の
「何だよあれ?」
みたいなのが聞こえたけど、無視して民宿の方に歩いて行った
「みんな、こんな感じなのかな?」
「ユキはもっと酷かったよ」
「あらそう…」
ヤベッ、口が滑った、これはあんまり言わない方が良かったよな
「チカは?」
「分からない、チカちゃんだけいつも見当たらないのよね」
どこ行ったんだろ
「おい!ヤメロ!ふざけるな!この馬鹿が!」
女の子の叫び声だ、この口の悪さはもしかして
「チカ!?」
「カイ!助けて!」
声がする方に走ってくと、チカが男に襲われてた。
俺はその男の肩を掴んでこっちに向けた
「なにしてんだよ」
「あぁ!?うるせえな!どっか行けよ!」
うるせぇな、優しく言ってんだから
「お前がどっか行けよ」
「ぶさけるな!」
あ〜あ、殴りかかってきた、馬鹿だな、俺に喧嘩売るなんて
「あぁ!うるせぇ!」
思いっきり顔面殴ったら、吹っ飛んだ
「弱っ」
相手はそのまま顔を押さえて走って行った
「大丈夫か?チカ」
「あ、ありがとう…」
泣いてるよ、そんなに怖かったのか、ってかあのクソは旅行先で何してやがる
「何であんな事に?」
「あの人が島を案内してくれ、って言ったから案内してたら」
「馬鹿じゃないの!そんな男に着いて行くなよ!」
「でも…」
「でも、じゃない。何でマミ姉といいチカといい、危機感がないんだよ」
『ごめんなさい』
二人に謝られるとな、しょうがない
「まぁ、何も無かったんだから良かった」
思いっきり笑って、無理にその場の空気を変えるしかないだろ
「怖かった。カイ、ホントにありがとう」
チカが思いっきり泣いてる、何で俺がいる時にこんな事が
「もう泣くな」
チカの頭にそっと手を置いて、顔を近付けて笑った
「カイ君、私先に帰るよ、ユキ君の事も気になるし」
マミ姉には居心地が悪い空気だっただろうな、でもユキはこの後悪魔を見る事になるんだろうな
「チカもう泣き止んでくれよ、帰ったらずっと一緒にいてやるから」
その瞬間チカが俺の胸に飛び込んできた、転びそうになったけど、何とか受け止めた
「お、おい、チカ」
「ゴメン、少し胸貸して」
えっ?ちょっと良いムード?でもその瞬間ワッと泣き出した、俺が知ってる中では過去最高の泣き方だった。
俺はそっとチカ頭に手をあてた、その時俺は決めた
何があってもチカを守りたい、何処にいてもチカを守りたい