青への花火大会
「お〜い、二人で楽しそうだなぁ」
ユキが物凄い量の花火を持って走ってきた、マミ姉は手ぶら、ついていった理由があからさますぎて笑える
「多すぎじゃない」
「4人でやればあっという間だろぉ」
「マミ姉は全部ユキに持たしたんだ」
「そんな事しないよ」
そう言ってポケットからライターとロウソクを出した
「チカ、やっぱりマミ姉って悪魔だよな」
聞こえないように、チカの耳元で言った
「かなりな」
「二人で何話してるの?」
怖っ、悪魔な上に地獄耳、人は外見だけじゃないな
『いや、何でも無いです』
「なら良いんだけど」
「ほらほらぁ、日も暮れてきたから、早くやろうよぉ」
ユキが跳ね始めた、ユキはたまにガキっぽくなるんだよな、特にマミ姉と一緒にいるとき
「ほら、みんなでやろ。そうだ!カイ君の歓迎会も兼ねちゃおっか」
「マミ姉それ良い!カイ、良いよな?」
「俺なんかのタメに良いの?」
「良いに決まってるよぉ、だって俺等は親友だろぉ」
“親友”その言葉がすごく嬉しかった、マミ姉もユキも会って間もないけど、最高の友達だった
「親友か…。じゃあ、お願いします!」
「ユキ、用意だ」
「はいは〜い、ほらみんなで準備準備ぃ」
「カイ君良かったね」
「うん、みんな俺のタメに…、感謝してるよ」
「ココにいるみんな、カイ君の事好きだからね、特にチカちゃんは」
「どういう意味?」「そのうち分かるよ」「カイ!マミ姉!始めるよ、早くこっち来て」
「チカちゃんが呼んでるから行こう」
さっきマミ姉が言った事、気になる、まぁ気にしてても始まらない、花火楽しむか、親友がせっかく用意してくれたんだから
「え〜とぉ、カイがこの島に来てくれたお祝いの花火大会、カイのタメにみんなで楽しもぉ」
「ほらカイ、つっ立って無いで花火やるぞ」
「分かったからそんなにはしゃぐな、転ぶぞ…」
「痛っ!」
転んだ、思いっきり顔から砂浜に突っ込んでる、手を差し出した
「言わんこっちゃない、ほら立って花火するぞ」
「痛たた…、悪いありがとな」
「チカちゃん、カイ君がいて嬉しいからって、転ぶ事ないんじゃない」
「違うよ、変なこと言わないでよマミ姉」
「ほら、やるぞチカ」
俺はチカに花火を渡した
「うん」
個人的には花火は好きだ、一瞬に全てをかけて光を放つ、その儚い命から力強さを感じる
「綺麗だな、大きい花火も良いけど、小さいのも小さいなりの美しさがあるよな」
「何しんみりした事言ってんの、カイっぽく無いぞ」
「うるせぇ、たまにはこういう事言わせろ」
「あっ、消えた」
「俺も」
短いな、消えた時って、何か寂しい
「カイ、次はこれにしよ」
「閃光花火か」
「勝負だ、フリークライミングの時は負けたけど、これは負けないからな」
「もっと楽しもうよ」
「負けっぱなしは嫌だからな、勝負だ勝負」
「分かったよ」
「じゃあ、ヨ〜イ…スタート!」
勝負って言っても、ジッとしてるだけだし
「なかなかやるな」
「別にまだ落ちないだろ」
「パチパチしてきた」
「俺も」
『……』
地味だ、地味すぎる、静かすぎる勝負だ
『…あっ』
「落ちた」
「俺も」
「これって引き分け?」
「だな」
「また勝てなかった」
「引き分けだから、進化したじゃん」
「勝たなきゃ意味がないだろ、引き分けは負けと同じだよ」
「あっそ、じゃあ次は頑張れよ、ここまできたらチカには負けないからな」
チカに負けないか、対抗意識燃やしてどうする、別に負けたところで何もないし
「カイ、ホントにありがとな」
「何が?」
「手伝ってくれて」
「良いよ別に、東京にいてもつまんないし」
「アタシ、カイが来てくれるって言った時嬉しかった」
「俺も」
「カイが助けてくれた時、不思議だった、無条件でカイを信じられた」
「俺もだよ、普通だったら、声掛けないのに、家に入れたなんてありえない事だよ」
「何か不思議だよな」
信じられるって言われた時は、嬉しかった
「チカを家に誘った時、自分の考えに反して喋ってるような気がした、でも心の声が喋ってたのかもな」
「心の声?」
「コイツは救え、って」
「かっこつけちゃって、でもアタシには心の声だろうが、本心だろうが嬉しかった」
ヤベッ、涙腺緩みそう、嬉し泣きしそう何て始めてかもな、チカは俺の心の真っ青な氷を真っ赤な炎で溶かしてくれたのかもな
「にしても、ユキとマミ姉は一目散に、二人きりになったよな」
「あの二人は切っても切れないよ」
「それで良いんだけどな、アタシもマミ姉がユキを見つけたように、素敵な人が欲しいな」
俺がその素敵な人になりたい、でも今はまだその時じゃないし、今この事を言ったら、帰れなくなる、それが怖かった。
でもいつか言いたい、チカが想ってなくても、
チカの事が好きだって




