NO.2を選ぶ女
作者、中津派です。
花男しかり、イケパラしかり、なんでヒロインは一番めんどそうな男とくっつくのか……
何だかんだ言いつつ何でうまくいくのか、あ、そうか二次元だからか。
逆ハーの男はNO,1よりNO,2つまり脇役がいい奴だっていうのは鉄則だと思う。
つーか絶対中津派だわ。はぁ?道明寺?論外、論外。
と、言うわけで、今私は異世界と言うところに居るらしい。
しかもキラキラしい複数の男性に告白されてしまった。そう、複数の。
逆ハーとか…なんか二次元に迷い込んだのだと思った方が自然に思える。
さらに言うと、王子に結婚を申し込まれた。しかも王の御膳で!!
王もその家臣も我がオアシス、メイドシスターズもそれが自然の摂理だという風だったよ。
確かにこんなことされたら空気にのまれて受けてしまいそうだね普通の女の子は、
さては確信犯か。
王子が跪いて私に差し出している…隣の騎士の震える掌をつかんだ時はみんな、ポカーンってなってた。
ちょ、おまっ!!を通り越してめっさポカーンだった。
隣の騎士を見てもやっぱりポカーン。そうそう君だよNO,2――私は君を選んだんだ。
王子に騎士、その他諸々…ああ、庭師とかもいたな、しかも実は他国のスパイ。
あれを断ったのは不味かったかな、そのうち暗殺しに来たりして(笑)
……それよか魔王、あれは不味かったな、うん。
魔王がいるのに何で勇者がいないんだろうか、
確か異世界から呼ぶもんだと聞いたような……
ああ、私か、
こっちに来てすぐ魔術師に拉致(本人いわく、保護)されていたもんだから全く考えてなかったよ。
何でみんな言わないんだよ、もう!!
ホント言うと、彼に恋に落ちた時、NO.2とかNO.1とかそういうの正直どうでもよくなっていた。
NO.2だからじゃない、私は《彼》という人を好きになったんだ。
。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。
《ちょっくら魔王退治の旅に出るからよろしく、探さないでね、ちゅっ❤》
と、書かれた紙を自宅のダイニングで見つけた騎士は、またもやプルプル震えていた。
というより憤っていた。
「可愛く書いても許しませ――――んんん!!」
「…けっして可愛くありませーンンン!!」
頭を抱えて叫んだ彼の脳裏には『てへぺろぽよーん♪』とか
良く分からない呪文を唱えながらウインクする彼女の姿が浮かんでいた。
騎士が変人に見えるならそれは八割がた彼女の所為だ。
本来、彼は真面目な男だ。
「ただいま」を言う前に、彼女が駆けてきて「おかえり!」を言ってくれる。
ついこないだまで、自分の仕えるべき人の庇護下にあった彼女が、
自分の家に居て俺のために毎日異国の料理を作ってくれるなんて…夢みたいだ。
そう思っていた矢先のこと、
彼女が「ただいま」を言いに来なかったことを不安に思い急いで家に入ってみれば
彼女の姿は無く居間のテーブルに一枚の紙が残されていた。あれは断じて手紙では無い。
あれが恋人に贈る初めての手紙だということはない。絶対ない。
王の御膳での一件以来、王子の思い人を奪ったにも関わらず王宮での私の立場は変わることはなく、
王子本人も祝福してくれた。
むしろ今まで以上に多くの人と関わるようになったようになった。
部下たちとの会話も増えたし、下働きのばあさんも良くしてくれる。
一重に彼女の人柄ゆえの事だと思う。
――ただ、庭師のあいつは絶対俺の命を狙っていると思う。
というかあいつはきっと庭師じゃない。よし、今度洗いなおそう。
せわしなく過ぎてゆく毎日に幸せを感じる。
君に会って初めて知った。
幸せというのは作るものではなく、何処にでもあるのだということ。
ただそれを見つけるのは俺にはまだ難しくて、
君が傍に居てくれなければろくに笑うこともできないんだ。
だが、そんな俺にも君に伝えられることがある、異世界人だからじゃない。
みんな君が好きなんだ。ただ、世界は君を愛しすぎていると俺は時折思うんだ。
君は風のような人だからいつか俺を置いてどこかに言ってしまうんではないかと時折心配になる。
まあ、せいぜい見失わないようにするよ。
僕の大切な風を、
ちなみに、騎士の様子を見に来た王子が、ダイニングで彼女のものとともに騎士の置手紙を見つけ絶叫するのはそう遠い未来のことではない。