【間話2年 B 組 金ちく先生】第3話
【間話:2年B組金ちく先生】第3話 〜スナックZの奇跡とサクサクの絆〜
放送室の重い扉がゆっくりと開いた。
中から出てきたのは、肩を落とし、憑き物が落ちたような顔をしたやおたときよぴこだった。金ちく先生は無言で二人に歩み寄ると、渾身の力で二人の頬を引っぱたいた。
「バカ野郎ッ!!」
乾いた音が廊下に響く。だがその直後、金ちくは二人を壊れ物を扱うように強く、熱く抱きしめた。
「……よく、戻ってきた。それだけでいい」
二人は警察に連行されたが、新屋二中の教師たちも自らの非を認めたため、奇跡的に「一週間の謹慎処分」で済むことになった。
謹慎期間中、金ちく先生は二人の自宅を訪ねたが、どちらも留守。嫌な予感がして、あの「スナックZ」のドアを叩くと、そこには驚くべき光景が広がっていた。
エプロンをして洗い物をしているやおたとカウンターでコーラを飲んでいるきよぴこの隣に、長らく不登校を続けていたクラスメイト、佐久が座っていたのだ。
「佐久! お前、なんでこんなところにいるんだ?」
驚愕する金ちくに、佐久は表情一つ変えず、ただ一言だけ呟いた。
「サクサク」
すかさず、きよぴこが通訳に入る。
「先生、こいつは『不良に絡まれてボコられてたところを、やおたに助けられたんだ』って言ってるぜ」
「……待て、きよぴこ。なんで『サクサク』の四文字だけでそこまで意味がわかるんだ!?」と金ちくは思ったがスルーする。
やおたが静かに口を開いた。
「先生、こいつも被害者なんだよ。学校じゃ『不登校の変な奴』って黄色い目で見られ、誰も孤独から助けてやらない。……前の学校の俺と同じだわ。だから、ここへ出入りさせてんだ」
金ちくは、やおたの成長に目頭が熱くなるのを感じた。そして佐久に向き直る。
「佐久、お前も『教育を受ける権利者』なんだ。お前を黄色い目で見る奴がいたら、俺が守ってやるだから、学校に来ないか?」
佐久は少しだけやおたの顔を見た。やおたが小さく頷くと、佐久は金ちくの手を握り、はっきりと言った。
「サクサク(訳:二人の謹慎が解けたら、僕も行くよ)」
金ちくは不思議でならなかった。なぜ「サクサク」だけで「二人の謹慎が解けたら」という条件まで伝わるのか。だがスルーする。
「……よし、約束だぞ。お前ら三人、揃って登校してこい。その時は、俺が誰にもお前らのことを悪く言わせん!」
スナックZの場違いなミラーボールの下で、金ちく先生は確信した。
腐ったみかんなんて、この世に一つもありゃしない。あるのは、ただ、まだ磨かれていないだけの「宝石」なのだと。 つづく




