【間話】2年 B 組金ちく先生第2話
【間話】2年B組金ちく先生 〜放送室の咆哮〜
あの大暴れした転校初日の翌日から、やおたは学校に来なくなった。
金ちく先生は、夜の街を歩き回り、ようやくやおたが「スナックZ」で皿洗いのバイトをしているのを突き止めた。カウンターの隅で、金ちくは数時間にわたって説得を続けた。
「お前を腐らせるために、ここへ呼んだんじゃない。もう一度、やり直そう。俺を信じろ」
やおたは無言で皿を拭き続けていたが、明け方、ポツリと「……明日、行くわ」と約束した。
しかし、平穏な日々は長くは続かなかった。
やおたが前の学校、新屋二中で受けていた理不尽な仕打ちが明らかになったのだ。体育教師からの暴力、そして学校側が彼を「公正不可能、腐ったみかん」として切り捨てた過去。
その怒りは、今の学校に新屋二中の教師たちが訪ねてきたことで爆発した。
やおたは、番長のきよぴこと共に、自分たちをいたぶった当時の体育教師と校長を放送室に監禁。全校生徒と全教師が見守る中、校内放送を使って「最後の授業」を開始した。
(校内スピーカーから流れる、やおたとらきよぴこの荒い息遣いと怒声)
やおた:「……偶然こうなっちまったんだけどよ、この放送は全校生徒が聞いてるんだ。隠し事はなしだ。ちゃんと答えてくれよな。なあ、先生よ……俺たちをいたぶったのはなぜだ? なぜ、人間扱いしなかったのか、教えてくれませんか?」
体育教師(怯えた声):「そ、それは指導だ! お前たちが学校の和を乱すから……」
きよぴこ:「冗談言っちゃいけねえ! 腐ったみかんを放り出すのが、どうして指導なんですか! 俺がここ、B組で金ちく先生に最初に教わったことは、『良いことは良い、悪いことは悪い』っていう、当たり前のことだったぞ!」
やおた:「教育ってのはよ、腐ったみかんをゴミ箱に捨てることか? 生徒のためにあるもんじゃねえのかよ!」
(廊下で警察と新屋二中の教師たちが騒ぎ立てる中、金ちく先生がマイクを奪い取る)
金ちく:「聞こえるか、やおた! きよぴこ! ……今、外では教員たちが警察や新屋二中の連中と、お前たちの処遇を話し合ってる。だが、これだけは言わせてくれ!」
(金ちく先生は、並み居る大人たちを真っ向から見据え、魂の叫びを放つ)
「だから、腐ったみかんは放り捨てろっていう方程式ですか! 彼らを追い詰めたのは我々の責任です。ないとは言わせませんよ、あなたにだって!
この私に向かって、やおたが放送で言っていましたね。『我々は教育を受ける権利者だ』と。あれは私がやおたに言った言葉です。教育基本法にちゃんと書いてあるんです。問題が起こったっていいじゃないですか、彼らはまだ未熟なんです。だから間違えるんです。間違ったら繰り返し、繰り返し、それを間違えたと教えるんです。これが教育なんです!
だから、腐ったみかんを放り出せという論理ですか?
初めてやおたが放り込まれた時、私は自信も何もありませんでした。しかし、校長先生や他の先生の協力のおかげで、今日まで問題を起こさずにやってこれたのです。
学校の名誉、教師の生活、そんなもののために生徒を切り捨てていいはずがない! 教師が尻込みをしたら、生徒は一体どうしたらよいのでしょう。子供を預けている親御さんたちに顔向けできますか!
我々はみかんや機械を作っているのではない。我々は毎日、人間を作っているんです! 人間の触れ合いの中で、我々は生きているんです。たとえ世の中がどうであれ、教師が生徒を信じなかったら、教師は一体何のために存在しているんですか! お願いです、教えてください!!」
放送室の扉の向こうで、やおたときよぴこは、金ちく先生の叫びを黙って聞いていた。
全校生徒が息を呑む静寂の中、金ちく先生の目からは、熱い涙が溢れていた。
つづく




