煩悩のバブルとエロ変換の落とし穴
きよぴこのその後・第1話:煩悩のバブルと「エロ変換」の落とし穴
1980年代後半。かつて「エロ変換術」でテストを乗り切ろうとしたきよぴこは、地元の愛知を離れ、大阪の三流大学に通っていた。
周囲に、冷静にツッコミを入れてくれる「ちく」も、物理的に投げ飛ばしてくる「ケメ子」もいない。きよぴこは、ブレーキの壊れたダンプカーのように、大阪の街を暴走していた。
「大阪はいい。街全体が『笑い』という名のエロに満ちている……!」
ダブルの肩パッドが尖ったスーツに身を包み、前髪をトサカのように立てたきよぴこは、心斎橋のカフェバーにいた。
当時のきよぴこの目標は、女子大生の「アッシー君(車で送迎する係)」になることだった。しかし、彼が持っているのは中古の原付。しかも、なぜかフロントに「カッパのステッカー」が貼ってある代物だ。
「ねぇ、君。君の着ているボディコンの面積を、エロ単語に変換して脳内保存してもいいかな?」
声をかけた相手は、派手なソバージュヘアの女性だった。当然、返ってきたのは熱いビンタ……ではなく、大阪ならではの鋭いツッコミだった。
「あんた、頭沸いてんの? そのトサカ、むしり取って焼き鳥にしたろか!」
その瞬間、きよぴこの脳内に、中学時代のあの光景がフラッシュバックした。
リレーのゴール裏で、ちくにスカートをめくられ、般若のような形相で迫ってきたケメ子の姿だ。
「……これだ。この殺気、懐かしい……」
きよぴこは、冷たくあしらわれることに快感を覚えるという、中学時代から一歩も進歩していない自分を再確認した。
その後、きよぴこは調子に乗って、バブルの象徴であるディスコへと繰り出した。
お立ち台で踊る女性たちを見ながら、彼は必死に「エロ変換暗記術」をアップデートしようとしたが、周囲にいるのは札束をチラつかせる本物のバブル紳士たち。
原付の鍵を指に回して踊るきよぴこは、あまりにも惨めだった。
「ちく……俺、今ならわかるぜ。バブルっていうのはさ、やおたが言ってた『ツチノコ』と同じなんだ。みんな追いかけてるけど、実体なんてどこにもねえんだよ……」
一人でカクテルを啜りながら、きよぴこはポツリと呟いた。
遠く離れた場所で、あいつらも今、このバカげた時代の風に吹かれているんだろうか。
帰り道。きよぴこは原付に跨り、御堂筋を爆走した。
ふと見上げたビルの屋上に、青いネオンが光っている。
「あおちゃん……あんたなら、このバブルの空に何を放つんだ?」
きよぴこは、誰もいない夜道で「サクサクサクサク!」と意味不明な叫び声を上げながら、トサカヘアを風に激しくなびかせ、安アパートへと帰っていった。




