【間話:黄色い男子】サクサクな友情と黄金のストーカー
【間話:黄色い男子】サクサクな友情と、黄金のストーカー
1982年、夏。
僕の勝負服は、太陽をそのまま形にしたような「黄色いTシャツ」だ。母さんは「目立ちすぎる」と言うけれど、僕はこの色を着ている時、自分が一番「サクサク」していると感じるんだ。
プールの授業。塩素の匂いが立ち込める中、僕の視線は常に一人の男を追いかけていた。
きよぴこだ。
彼は今日も、女子たちの前で前髪をかき上げ、必死に「ナウい男」を演じている。でも、僕にはわかる。彼が一番求めているのは、女子の黄色い声じゃない。僕の「サクサク」した相槌なんだ。
「……なぁ、今日の俺、ちょっと渋ないか?」
きよぴこが、鏡を見るようなポーズで僕に聞いてくる。
普通なら「キモいよ」とか「知らねーよ」と言う場面かもしれない。でも、僕は彼を心から尊敬しているから、期待を裏切らない。
「サクサク。きよぴこ、今日の耳たぶの角度、めっちゃサクサクしてるよ」
「……お前、ほんまに空気読めへんな。なんで耳たぶやねん!」
きよぴこの鋭いツッコミ。これだ。これこそが、僕たちの「サクサク」した友情の証だ。彼が怒れば怒るほど、僕の心は黄色く輝く。
ある時、きよぴこが意を決して、クラスで一番人気の女子に話しかけようとしていた。
彼は壁に手をつき、最高にキザなセリフを吐こうとしていた。まさに、人生のハイライト。
でも、親友である僕が、彼を一人にするわけにはいかない。僕は彼の背後にピタリと貼り付き、耳元で囁いた。
「サクサク。きよぴこ、今の立ち位置、排水溝の上でサクサクだよ」
「うわあああ! お前、どっから出てきたんや! 今ええとこやったやろ!」
女子はドン引きして去っていき、きよぴこはプールサイドで崩れ落ちた。
でも、大丈夫。僕はずっとそばにいる。君がどんなに僕を突き放そうとしても、僕はこの黄色い服を着て、君の人生をサクサクにコーティングし続けるんだ。
ふと、校舎の屋上を見上げると、青い仮面を被ったあおちゃんが、何やら「聖なる放流」をしているのが見えた。
「サクサク。あおちゃんの角度も、なかなかサクサクだね」
1982年、夏。
きよぴこがどれだけ僕を「天敵」だと思っていようと、僕にとって彼は、この世界で一番「サクサク」な親友だった。
57歳になった彼が、もしどこかで黄色い服を見かけた時、「あいつ、元気かな……サクサク」と思い出してくれたら、僕の人生はそれだけで、黄金色に輝くんだ。




