第二演目 団長
よろしくお願いいたします。
舞台を終えた子供たちが控室に戻っているところだった。
「空中ブランコ、危なかった〜」
「もっと落ち着かないからだろ。しかしあの体勢からよく立て直したな」
アルは空中ブランコで手をすべらせたが、なんとか足を引っ掛けて耐え、そのまま演技をやりきった。
「うん、瞬発力とバランスは自信あるからね」
リゲルの方を向きながら歩いていたアルは何か大きな物体にぶつかった。
「いたっ!!ちょっと気をつけ、、、、、あ」
そこには派手な服を着た身長2メートルはありそうな大柄な男が立っていた
「「団長!!」」
二人は急いで頭を下げる。
「す、すすすみませんでしたっ!僕の不注意です!!今後気をつけますっ!!」
団長と呼ばれたその男は全力で頭を下げるアルを見ながら穏やかに笑った。
「いやいやすまない。私の方こそ、周りをよく見ていなかったよ。それよりアル、今日の演技とても良かったぞ。こちらまでハラハラさせてもらった。だが、今度はもっと綺麗なのを期待しているぞ」
アルはおそるおそる顔をあげ、涙目になりながらお礼を言った。
「リゲルも。正確に計算されたあの動き、ブラボーだ」
「、、、ありがとうございます」
3人の会話はそこで終わり、男と離れて二人になった後にリゲルは口を開いた。
「なんか好きになれないんだよな、あの男」
「え?そうかな、良い人だよー」
アルが不思議そうに言い返した。
返事をしないリゲルを気にしつつ、2人は再び控室へと歩き始めた。
テーブルを挟んで座り2人が談笑していたところ、勢いよく部屋の扉が開いた。
「お疲れ様ー!アル、今日のあれ、凄かったわね!!私ヒヤヒヤしちゃった」
目を輝かせながら話すこの少女の名はエルナト。アル達と同じく、サーカス団の子供だ。体の柔軟性は大人顔負けで、華やかな演技を得意とする。年は16歳。
「ありがとう!」
「リゲルも、いつも通りクールに決まってたわ」
「おう」
受け流すようにリゲルは答える。
「受け答えもクールよねあんたは」
軽くため息をついたエルナトは、ハッと思い出したように顔を上げた。
「そういえばあんた達、さっき団長と話してたわよね!?何話したのよ」
「あぁ、僕ぶつかっちゃってさ。それで謝ってたんだ」
頭をポリポリ掻きながらアルは答えた。
「何よ、ドジね」
エルナトは詰まらないと言いたげに口を尖らせた。
「なぁエルナト、あいつ何か変な感じしないか?」
「あいつって団長のこと?優しくて紳士な人じゃない。どう変なのよ」
「いや、俺も上手く言えないんだが、なんていうか…」
口をモゴモゴさせた後、リゲルは諦めたように顔を落とした。
「変なやつね」
「もう慣れったちゃったよ。リゲルはずっと団長と距離置いてる感じがするし」
「へぇ?どうしちゃったのかしらね。ま、いいわ。私自分の部屋戻るからまたね!」
エルナトに手を振り、見えなくなったところで2人は大きく息をついた。
「俺たちも部屋戻って寝るか」
そう言って控室の電気を落とし、団の子供たちの寝床である部屋へと帰った。
部屋と言っても薄暗く狭い空間に、二段ベッドが数台押し込まれているだけの味気ない場所に、子供たちはいた。
アル達以外にも男子が数人この部屋で夜を過ごしている。アルとリゲルは同じベッドの上段と下段で寝ていた。
大きなあくびをしていると、リゲルが上から顔を覗かせた。
「わかった、あいつの変なとこ」
「え、まだ考えてたの?」
「あぁ、何か今日は違和感をいつも以上に感じたからな。で、その違和感なんだけどさ」
リゲルは周りに聞こえないよう、一層声を小さくした
「機械っぽいんだよ」
「、、、?人間だよ」
「そうじゃない、話す内容とかだよ。いつも俺達のこと褒めてばっかじゃん。普通じゃないだろ」
「だから優しいんでしょ」
「それに、今日お前は一歩間違うと死ぬとこだっただろ。心配も説教も無しかよ」
「いや確かに心配はされなかったけどさ…、んー、変なのかなぁ」
眠い目を擦りながらアルは考えた。確かに、今までの事を思い返してもアルは怒られた経験が全くと言っていいほど無い。それどころか、他の子供を怒っている所すら見たことがない。
「まあどっちでも良いけどね。優しい人に越したことは無いけど、今までも問題なく暮らせてるし、これからもそうなら文句ないよ」
「そういうもんか?」
「とりあえず疲れたし、今日はもう寝よ」
「…おやすみ」
「おやすみ」
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次のお話もお楽しみに✨️




