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【改訂版】ギャンブル中毒者が挑む現代ダンジョン配信物【リメイク】  作者: パラレル・ゲーマー
F級編

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26/36

第26話 軍資金16万と千人の軍師

 神崎隼人の金策配信は、もはや彼と彼の熱心な視聴者たちにとって一つの心地よい「ルーティン」と化していた。


 毎日決まった時間に【ゴブリンの洞窟】へ潜り、軽快な音楽をBGMにゴブリンを「処理」していく。その動きはもはや芸術の域に達していた。無駄な動きは一切なく、最小限の労力で最大限の効率を叩き出す。


 彼の配信はもはやスリリングな冒険活劇ではない。それは、一人の熟練した職人が黙々と自らの仕事をこなしていく様をただ眺めるだけの、ある種の環境映像に近いものだった。


 視聴者たちもそれを理解していた。彼らはもはや隼人がゴブリンに苦戦することを期待してはいない。彼らが今か今かと待ち望んでいるのは、この退屈な「作業」の果てに一日に一度か二度だけ訪れる、あの奇跡の瞬間だけだった。


 視聴者A: 今日のオーブまだかなー

 視聴者B: もう100体は狩っただろ。そろそろ光ってくれ!

 視聴者C: JOKERギャンブルタイムはまだですか!?


「お前らせっかちだな。ギャンブルってのは、待つ時間も楽しみのうちなんだよ」


 隼人はコメント欄の催促に、やれやれと肩をすくめながら答える。


 その時だった。


 彼の目の前にいた、ひときわ体格の良い兜をかぶったゴブリン。彼が長剣の一振りでそれを光の粒子へと変えた、まさにその瞬間。


 洞窟の空気が変わった。


 これまでオーブがドロップする時に見てきた淡い青や黄色の光ではない。もっと強く、もっと濃密な、そしてどこか不吉な橙色の光が、ゴブリンが消滅したその場所から迸ったのだ。


 視聴者D: ん!?

 視聴者E: おい今の光の色…!オーブじゃないぞ!

 視聴者F: ユニークだ!!!!!!!!!!


 コメント欄が一瞬にして、爆発的な熱狂に包まれる。


 隼人の心臓もまた、ドクンと大きく脈打った。


 ユニーク等級。

 この世界の理を捻じ曲げる、唯一無二の伝説の装備。


 彼はゴクリと喉を鳴らしながら、その橙色の光の中心へとゆっくりと歩み寄った。


 光が収まった場所に静かに横たわっていたのは、一つの首飾りだった。


 黒く火山岩のようにざらついた質感の革紐。そしてその中央には、まるで燃え尽きた炭の中にかろうじて残った最後の熾火おきびのように、鈍い、しかし確かな熱量を放つ黒曜石のような宝石がはめ込まれていた。


 隼人がそれを手に取った瞬間、アイテム名が彼の視界に表示される。


 ====================================

 アイテム名: 灰燼の首飾りアッシュブリンガー・アミュレット

 種別: 首輪

 レアリティ: ユニーク

 装備レベル: 5

 効果:

 筋力 +50

 攻撃によって与える火炎ダメージ +25%

 最大HP +35

 周囲の敵を常に灰状態にする。

 フレーバーテキスト:

 我は歩まぬ。 我が怒りの代弁者が大地を焼くだけだ。 汝ただ灰の絨毯を踏みしめて進め。 その道の先にこそ世界の終焉がある。

 ====================================


「…なんだこりゃ…」


 隼人は、そのあまりにも極端でちぐはぐな性能表示に、思わず素っ頓狂な声を漏らした。


 まず彼の目を引いたのは、「筋力+50」という異常なまでの数値だった。


 レベル5の探索者が、装備一つで筋力が50も跳ね上がる。それはもはやバグを疑うレベルの破格の性能だ。これさえあれば、彼の剣の一振りはもはやゴブリンを「爆散」させるどころか、その存在を原子レベルで消滅させかねない。


 だが次に続く効果が、彼を混乱させた。


「火炎ダメージ+25%。火炎ダメージ? 俺はスキルを持っていない。全くの無用の長物ではないか」


 そして最後の「周囲の敵を灰状態にする」。


 灰状態? なんだそれは。聞いたこともない。


 筋力だけを見れば間違いなく大当たりだ。

 だが他の効果は、今の彼にとっては全く意味をなさないゴミ同然。


 あまりにも使いにくい。あまりにもピーキーすぎる。


 彼は自分のビルドとの相性の悪さに、思わず頭をかいた。


「STR+50はヤバいけど…火炎ダメージ? 俺使わねえしな。なんだこりゃ微妙な…」


 その彼の困惑した呟きが配信に乗った瞬間だった。


 これまで彼の戦いを冷静に分析していたベテラン視聴者たちの、コメント欄での空気が一変した。


 彼らは先ほどのユニークドロップの瞬間とはまた質の違う、ある種の専門家としての興奮に包まれていた。


 元ギルドマン@戦士一筋: おいおいおいおいおい!JOKERお前、自分が何を拾ったか分かってるのか!?

 ハクスラ廃人: 馬鹿野郎!微妙なわけがあるか!そいつは「ビルドのメインになる」アイテムだぞ!お前がそれを使いこなせないってだけだ!

 ベテランシーカ―: JOKERさん落ち着いて聞いてください。その首飾りはあなたのような物理攻撃型のビルドが使うものじゃありません。それは、ある特定の特殊なビルドを目指す者たちが喉から手が出るほど欲しがる最高の逸品なんです!


 隼人は、そのあまりの剣幕にたじろいだ。


「…特殊なビルド?」


 ハクスラ廃人: そうだ!世の中にはな、筋力を上げながら物理攻撃じゃなくて火炎属性のスキルで戦う変態的なビルドがあるんだよ!例えば『火炎トーテム』ビルド!地面に火を噴くトーテムを何本も何本も設置して、自分は安全な場所から敵が焼かれていくのを眺めてるだけっていう陰湿で最高に楽しいビルドがな!

 元ギルドマン@戦士一筋: そのビルドのキーアイテムの一つがそれだ。彼らはSTR50という破格のボーナスを、トーテムの設置数や他の装備の要求値を満たすために使う。そして火炎ダメージ+25%という純粋な火力アップの恩恵を最大限に受けるのさ。

 ベテランシーカ―: そして何よりも問題なのが最後の効果…『灰状態』です!JOKERさん、それは最強クラスのデバフなんですよ!

 ハクスラ廃人: そうだ!灰状態になった敵はな、まず移動速度がガクンと落ちる!そして何よりヤバいのが、そいつが受ける火炎ダメージが大幅に増加するんだ!つまりその首飾りを装備してるだけで、周囲の敵は勝手に炎に弱いノロマな的になるってわけよ!


 隼人は、その専門家たちの完璧な解説によって、ようやく自分がどれほどとんでもないお宝を引き当ててしまったのかを理解した。


 これは彼にとっては宝の持ち腐れかもしれない。

 だが、これを必要としている誰かにとっては、まさしく人生を変えるほどの究極の一品。


 そして、そういうアイテムには当然、途方もない「価値」が付随する。


 元ギルドマン@戦士一筋: JOKER、そいつはすぐに売れ。下手に自分で使おうとするな。STR型の炎ビルドをやってる金持ちの道楽プレイヤーが見たら、絶対に飛びついてくるぞ。相場をよく調べろ。安く買い叩かれるなよ。

 ハクスラ廃人: そうだぜ!安く見積もっても10万円は余裕で超える!F級ダンジョンのドロップ品としては破格中の破格だ!おめでとうJOKER!お前はまたデカい当たりを引いたんだ!


 十万円。


 その現実的な、しかしあまりにも大きな数字。


 隼人は、手の中にあるその黒く鈍い輝きを放つ首飾りを見つめた。


 これが十万…。

 ゴブリン・シャーマンの大魔石の倍の価値。


 これ一つで、妹・美咲の一ヶ月分の特殊な治療を受けさせてやることができる。


 彼の心に、熱い何かがこみ上げてくる。


 彼は深く息を吸い込むと、その高ぶる感情を無理やり押さえつけた。

 そして、いつものJOKERのポーカーフェイスに戻って、カメラの向こうの熱狂する視聴者たちに告げた。


「なるほどな。俺にとっては猫に小判だが…欲しい奴がいるってんなら、そいつに高く売りつけてやるのがこのアイテムへの礼儀ってもんだろ」


 彼はそう言うと、手に入れたばかりの【灰燼の首飾りアッシュブリンガー・アミュレット】を、インベントリの一番大切な場所へとしまい込んだ。


 今日の配信はここまでだ。

 これ以上ゴブリンを狩り続けても、この大当たりを超える興奮は得られないだろう。


 彼は視聴者たちに短く別れを告げると、配信を終了した。


 神崎隼人は、自室の古びたパソコンの前で静かに息を吐いた。


 インベントリの中で禍々しくも美しいオーラを放つユニーク首飾り【灰燼の首飾りアッシュブリンガー・アミュレット】。筋力+50という破格の性能と、今の彼には使い道のない火炎ダメージ強化、そして未知のデバフ「灰状態」。


 あまりにもピーキーで、彼のビルドとは全く噛み合わない奇妙な宝物。


 だが視聴者たちの熱狂的な解説によれば、これは特定のビルドを組む者にとっては、喉から手が出るほど欲しい究極の逸品らしい。


 そしてその価値は、十万円を下らないと。


(十万…)


 その数字の重みが、ずしりと彼の肩にのしかかる。


 ゴブリン・シャーマンの大魔石を売って得た五万円。それだけでも彼の人生にとってはありえないほどの大金だった。その倍。


 これをどうやって最も高く、そして安全に売り捌くか。


 彼の頭に二つの選択肢が浮かんだ。


 一つは、あのアメ横の混沌としたフリーマーケット。あそこならば足元を見て買い叩こうとする三流詐欺師も多いが、同時に正規のルートでは手に入らないような大金を持つ闇の富裕層も紛れ込んでいるかもしれない。交渉次第では、相場以上のとんでもない値段で売れる可能性もゼロではない。ハイリスク・ハイリターンな、彼好みのテーブルだ。


 だが彼は首を横に振った。


 あの場所は危険すぎる。今の彼が十万円を超えるような大金を動かしていると知られれば、どんなハイエナが群がってくるか分からない。裏社会の面倒はもうこりごりだった。


 ならば選択肢はもう一つしかない。


 ギルド公認の公式な取引所。


 手数料は取られるだろう。足元を見られることはなくとも、相場以上の爆発的な利益も期待できないかもしれない。ローリスク・ローリターン。


 だが今の彼が何よりも優先すべきは、「安全性」と「確実性」だった。


 この金は彼のただの遊び銭ではない。

 妹・美咲の命に繋がる金なのだから。


「…行くか」


 彼は決意を固め、椅子から立ち上がった。


 向かう先は再び西新宿。

 あの清潔でどこか息苦しいが、しかしこの世界で最も信頼できる金融機関へ。


 翌日。


 隼人は再び『関東探索者統括ギルド公認 新宿第一換金所』の、ガラス張りの自動ドアをくぐっていた。


 前回訪れた時とは、彼の心境は全く違っていた。もはやこの場所に気後れするような場違いな感覚はない。彼は確かな「商品」を手に、正当な「取引」をしに来た一人のプロのビジネスマンだった。


「いらっしゃいませ。本日は…あら、JOKERさん」


 カウンターの向こうで彼を迎えてくれたのは、幸運にも見知った顔だった。水瀬雫が、驚きと、そしてどこか嬉しそうな表情で彼に微笑みかけていた。


「また何かすごい物でも見つけられたのですか?」


「…まあ、そんなところだ」


 隼人はぶっきらぼうにそう答えると、インベントリから【灰燼の首飾り】を取り出し、カウンターのトレイの上にそっと置いた。


 雫はその禍々しいオーラを放つ首飾りを一瞥しただけで、その価値を瞬時に見抜いたようだった。彼女のプロとしての目が、驚愕に見開かれる。


「こ、これは…ユニーク等級…!しかも【灰燼の首飾り】じゃありませんか…!まさか、これをあのゴブリンの洞窟で…?」


「ああ」


「信じられない…」


 彼女はゴクリと喉を鳴らすと、すぐにプロの顔に戻り、テキパキと手続きを進め始めた。


「承知いたしました。これほどの高額商品となりますと、通常の買い取りではなく、ギルドの公式オークションシステムへの『委託出品』をお勧めしますが、いかがいたしますか? 手数料は落札価格の5%と少しお高くなりますが、その分日本中の富裕層の探索者たちの目に触れることになります。間違いなく、ただ売るよりも高値が付きますよ」


「…それで頼む」


 隼人は即決した。


 手続きは数分で終わった。


 【灰燼の首飾り】は雫の手によって厳重なケースに収められ、オークションの出品リストへと登録される。


 開始価格は雫が査定した最低保証価格の8万円。

 オークションの制限時間は半日…つまり12時間。


 その瞬間から、日本中の探索者がアクセスできる巨大な電子の市場で、一つの小さな、しかし極めて価値のある首飾りを巡る、静かなしかし熾烈な戦争の火蓋が切って落とされた。


 隼人は換金所を出て、どうやって時間を潰すか考えた。


 家に帰るには中途半端な時間だ。かといって、このビジネス街の小洒落たカフェに入るような趣味も金も持ち合わせていない。


 彼は結局、換金所のビルが見える公園の人の少ないベンチに腰を下ろし、自らのスマートフォンでオークションページの更新ボタンをただひたすらに押し続けるという、最も原始的で最も心臓に悪い時間の潰し方を選んだ。


 画面に表示される数字。それはただのデータではない。

 その一桁一桁が、妹の薬になり、治療になり、そして未来になる。


 そのあまりにもリアルな重圧。

 それが彼の心をじりじりと締め付けていく。


 いつの間にか、彼の額にはじっとりと冷たい汗が浮かんでいた。


 オークション開始から一時間。

 最初の入札が入った。「85,000円」。


 そこから戦いは、ゆっくりと始まった。


 90,000円。

 92,000円。

 100,000円。


 ついに大台を突破した。隼人の心臓がドクンと大きく跳ねる。


 だが戦いはまだ終わらない。


 価格はじりじりと、しかし確実に吊り上がっていく。


 110,000円。

 115,000円。

 120,000円。


 おそらくSTR型の炎ビルドを組む二人の金持ちプレイヤーが、互いに一歩も引かずに入札合戦を繰り広げているのだろう。


 隼人はもはや息をすることすら忘れ、ただスマートフォンの画面を睨みつけていた。


 そしてオークション終了10分前。

 価格は135,000円で膠着していた。


 もう決まったか。


 隼人が安堵の息を吐きかけたその時だった。


 残り1分を切ったその瞬間。

 画面の数字が跳ね上がった。


『現在価格: 140,000円』


 最後の最後で、新たな入札者が現れたのだ。


 それはまるで麻雀のオーラス。あるいはポーカーの最終ラウンド。

 極限の心理戦。


 隼人は固唾を飲んで、その結末を見守った。


 だが、それ以上の更新はない。

 先に競り合っていたプレイヤーが、この土壇場での殴り込みに降りたのだ。


 そしてついに。


 彼のスマートフォンの画面に、無機質な、しかし彼にとっては世界で最も美しい文字列が表示された。


『オークションは終了しました。最終落札価格: 140,000円』


「…よっしゃ…!」


 隼人は思わずガッツポーズを取った。周囲の目も忘れ、声を上げていた。


 手数料の5%…7,000円を差し引いても、彼の手元には133,000円という大金が転がり込んでくる。


 彼は震える足で立ち上がると、再びあの換金所へと向かった。


 隼人はその日の夜、再び配信のスイッチを入れた。


 場所はダンジョンではない。西新宿の夜景が見えるビルの屋上。彼が時々一人で考え事をする時に使う秘密の場所だ。


 配信のタイトルはシンプルにこうつけた。


『【雑談】今日の配当換金してきた』


 彼が配信を開始したその瞬間。

 通知を待ち構えていた数千人の視聴者が、一斉に彼のチャンネルへとなだれ込んできた。


 視聴者A: きたあああああ!JOKER雑談配信!

 視聴者B: ダンジョンじゃないのか!珍しいな!

 視聴者C: でどうだったんだよあの首飾り!いくらで売れたんだ!?


 コメント欄はすでに、オークションの結果を今か今かと待ち望む声で溢れかえっていた。


 隼人はその熱狂を焦らすように、ゆっくりとタバコに火をつけた。

 そして紫煙を夜空へと吐き出しながら、静かに告げた。


「ああ、お前らが気になってるアレな」


「――例の首飾り、14万で売れた」


 その一言が投下された瞬間。

 コメント欄はもはや制御不能の熱狂の坩堝と化した。


 視聴者D: じゅじゅうよんまん!?!?!?

 視聴者E: はああああああああ!?F級ダンジョンのドロップ品が14万!?

 視聴者F: 嘘だろ…俺の月給より高いんだが…

 視聴者G: F級で一発14万か…。夢がありすぎるだろこの世界…!

 視聴者H: 羨ましい…羨ましすぎる…!俺も探索者になろうかな…

 視聴者I: JOKERさんマジで神に愛されてるな…。


 嫉妬、羨望、驚愕、そして憧れ。

 あらゆる感情がごちゃ混ぜになったコメントの嵐。


 隼人はその熱狂を、どこか他人事のように眺めていた。


 彼にとって重要なのは金額の多寡ではない。

 この金で何ができるか。

 この金でどうやって次の勝利を掴むか。

 ただそれだけだ。


 隼人は自分の銀行口座の残高を、ARウィンドウで配信画面に共有した。


 そこには、これまでのダンジョンでの稼ぎと今日手に入れた133,000円。そして残っていた軍資金を合わせた合計「165,000円」という、彼にとっては天文学的な数字が表示されていた。


 さらに彼はもう一つのウィンドウを開く。それは、彼の配信チャンネルの収益管理画面だった。


『総収益(未確定): ¥1,124,500』

『次回振込予定日: 翌月末』


 隼人はその数字を指でなぞりながら、カメラの向こうの数千人の共犯者たちに問いかけた。


 その声は、次の最高のギャンブルの開始を告げるディーラーの声だった。


「さてお前ら」


「手元にある現金が16万5千円。そして月末には100万を超えるスパチャが振り込まれる。この状況で次に俺は何をすべきだと思う?」


 その、あまりにも魅力的な問いかけ。


 先ほどまでただ彼を羨んでいた視聴者たちの目が変わった。

 彼らはもはやただの観客ではない。


 このJOKERという男の人生を賭けたギャンブルのテーブルに参加する、プレイヤーの一人になったのだ。


 コメント欄の流れが変わる。


 羨望は、熱狂的な「提案」へと姿を変えた。


『16万で今すぐもっといい武器を買うべきだ!無銘の剣じゃもう限界だろ!』

『いや防具だ!月末の100万で武器を買うとして今は防御を固めろ!』

『スキルジェムだろ!金さえあれば強いサポートジェムが買える!』

『パッシブポイントが手に入るクエストの準備費用に使うべきだ!』

『いいやここはあえて全部貯金して妹さんの治療費に…!』


 無数の提案。無数の戦略。


 隼人はそのカオスな、しかし愛のあるコメントの一つ一つを、その驚異的な記憶力で脳内に焼き付けていく。


 どのカードを選ぶか。

 どの道に賭けるか。


 彼の次なる一手は、まだ決まっていない。


 だが確かなことは一つだけ。


 彼のショーは、まだ始まったばかりだということだ。

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― 新着の感想 ―
何処かに行くたびに彼はすでに〇〇ではない。□□なのだ。のような表現がされており、しつこいと思いました。 またプロのギャンブラーを自称する癖に情報収集能力が無さすぎる気がします。 毎回誰かに教えられてか…
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