7.
オレの方にテチテチと歩み寄り、嬉しそうに抱き着いてくる5歳くらいの女の子。
「どうちたの?フォレスは?サニーもくる?」
目をキラキラ輝かせながら問われると、子供番組をメインに活動するレイヤー魂に火がつく。
「えっと、フォレスとサニーは今日はお休みなんだ。わたしは雄大くんのお願いを叶えに来たんだよ」
女の子に視線を合わせるようにしゃがみ込み、小首を傾げながらしっかり目を見て応える。
幼女の夢を壊してはいけない。
コレは、子供番組をメインに活動するレイヤーにとって暗黙のルールとなっている。
一番はしゃべらないことが良いらしいけど、この状況ではそれは無理!
オレにできるのはできるだけマリリンっぽい声で、マリリンの口調で話すことだけ。
極力会話を減らしたいけど、ムリだろうなぁ……
「しょうなの?みきね、サニーが一番しゅきなの!ゆぅにぃちゃんはマリリンがしゅきだからきたの?」
純粋無垢な目で見つめられると心が浄化される。
いや、そこのヤンキー、決してお前のことではない。
なにちびっこと同じキラキラした目でオレのことを見てるんだ?。
「えっと……うん、そうだよ」
ホントはその雄大くんに脅されて無理矢理連れて来られたんだよ。なーんて、そんなこと子どもには絶対言えない。
それは本人もわかっているはずなのに、なに嬉しそうな顔してんだそこのヤンキー。
みきちゃんにはバレないようにまたチベットスナギツネのような虚無顔で見つめていると、オレの視線にやっと気付いたのか苦笑を漏らしていた。
「オイ、ちび共、帰ってきてすぐに手洗いうがいはしたのか?」
腕を組み、少しだけ怒った顔で弟たちに声を掛ける。
「あ、やべっ」
「まだだった!」
「おやつナシになる!」
遊び始めようとしていた三つ子だったが、広瀬に言われてワタワタと慌て出す。
「すぐ洗ってくる!」
「ちゃんと歯磨きもする!」
「みき、にぃちゃんたちと行こ~」
妹であるみきちゃんを、三つ子のひとりが抱えて洗面所に走って行った。
子どもたちが去った後、盛大なため息を漏らし、前髪をクシャッと掻き上げる広瀬。
「わりぃ……ついテンション上がっちまって、ちび共が帰って来る時間を確認してなかった」
困ったような表情を浮かべる広瀬になぜかドキッとする。
普段学校で見る姿とも、噂で聞いていたこの学校最強のヤンキーとしての姿とも全然違う。
まぁ、まさかあんな限界オタクだとは思わなかったけど……
でも、さっきからオレが見ている姿が広瀬の本当の姿なら……ちょっとだけ好感が持てるかもしれない……
だって、オレにとって初めてできる同志だから……
ずっとコス友を作ってみたかった。
コスプレしなくても、好きな作品、好きなキャラを語ることのできる友だちが欲しかった。




