14.
「イテテテテッ、何をするんだ!」
変態カメコが急に悲鳴を上げると同時に、オレの腕を掴んでいた手が離れる。
慌てて距離を取るように離れ、ギュッと瞑っていた目を開くと、ここに居るはずのない人が、変態カメコの腕をねじり上げていた。
「おい、おっさん。なに人の想い人に手ぇ出してやがんだ」
明らかに怒りがにじみ出ているオーラを放ち、変態カメコよりも高い位置から睨み付けている金髪の青年。
耳にゴツいピアスを付け、下唇の下の真ん中にもピアスを付けたヤンキー。
マリリンのことが好きで、意外に涙もろくて、弟妹のことを可愛がっていて……オレの、好きな人……
「ゆうだ……広瀬……」
オレが彼の名前を口にすると、さっきまでの怖い表情を緩ませ、困ったように眉を下げて笑みを浮かべている。
「ウミの専属も、海の専属も俺だけだ。コイツの隣はケンタだろうと譲らない!」
広瀬に腕を引かれ、彼の胸に飛び込む形で抱きしめられる。
「え?」
ケンタって、マリリンの好きな人だろ?まぁ、サニーである陽葵の彼氏だから、マリリンは失恋するんだけど……
なんで、今ケンタの名前が出るんだ?
「なっ!なんなんだキミは!ウミちゃんはボクの彼女だ!お前みたいなヤンキーが……」
「ア"?」
ギロっと広瀬が変態カメコを睨み付けた瞬間、ビクッと肩を震わせ慌て出すのが見える。
「コイツの恋人はお前みたいな変態なんかじゃねぇー!この俺だ!」
ビシッと自信満々に自分を指差し、ドヤ顔で言ってのける広瀬。
変態カメコもオレもポカーンとした顔をしてしまうも、あまりの自信満々な表情についプッと吹き出してしまった。
「あはははっ!そうそう、オレの恋人はアンタみたいな変態カメコじゃねぇーよ。それに、オレ、男だから」
地声である男の声で言ったおかげか、オレが男なのを理解して顔を真っ赤にして怒っている。
「ボ、ボ、ボク騙したな!この変態野郎!もう2度と撮影なんてしてやるかっ!掲示板にも晒してやるからなっ!」
「うるせぇっ!消えろカス!」
広瀬の一言に怯えた様子で逃げて行く変態カメコを見送り、やっと肩の力が抜ける。
「はぁ……やっと、あのストーカー野郎から解放された……」
ホッと息を吐くと、一気に震えが出てくる。
ずっと怖かったのに、誰にも助けてくれないと思っていたのに……
顔を上げると、広瀬とバッチリと目が合った。
「雄大、助けてくれてありがとう」
安堵感から今にも泣き出しそうな顔をしてしまうものの、ちゃんとお礼を言うことができた。
広瀬は驚いた顔をするも、すぐに笑みを浮かべながらも真剣な眼差しでオレのことを見つめてきた。
「なぁ、海……俺と重婚してくれね?」
「……は?じゅう、こん……?」
あまりにも真剣な眼差しで、生真面目に言うからつい言葉を復唱してしまう。
「マリリンもウミも海も、俺にひとりを選ぶことなんてできねぇ……3人分、幸せにしてやる」
馬鹿なことを真面目な顔で真剣に言ってくるからズルっと足の力が抜けてコケてしまいそうになる。
「なんだよそれぇ~。ってか、今日はみきちゃんの誕生日だろ?雄大、こんなとこに居ちゃダメだろ」
「みきのためにもお前を迎えにきたんだよ。一緒に祝ってくれるだろ?」
太陽のように輝く笑みを浮かべ、そのままお姫様抱っこで会場から連れ出される。
コスプレ姿でそのまま帰るのはご法度だけど、今日ばかりは許して欲しい。
水色のショートカット女の子が、オレに勇気をくれて、大好きな人と巡り合わせてくれたから……




