11.
みきちゃんの誕生日プレゼントをサプライズで作るべく、放課後はこうやって広瀬の家にお邪魔するのが習慣になってきた。
「なぁ、着替え終わ……」
オレの新衣装を見た瞬間、広瀬の表情は固まり、ダバーっと涙が流れ落ちる。
「マリリンの日常服!殺す気か!(最高)」
両膝と両手を付いて感極まった状態の広瀬を無視して居間に向かう。
もう何度も訪れているせいか、勝手知ったる広瀬の家だ。
「なぁ、ここに置いてあるお茶を持って行ったらいいのか?」
テーブルに用意されていたお茶の入ったポットとマグカップが2つ。
それと、小腹の足しになる用のお菓子が少し入ったお皿が用意されていた。
最初は居間で衣装を作っていたんだけど、ちびっ子たちが帰って来た時に慌てて隠すのが大変だという問題が発生し、最近は広瀬の部屋で2人で籠っている。
べ、別に……広瀬の部屋に入れるのが嬉しいってわけじゃないから……
でも、「部屋に誰か呼んだのなんて小学校以来かもな」って、ちょっと照れた笑みを浮かべながら言われた時は、心臓が止まるかと思った。
だから、今日の新衣装はその時の仕返し。
まぁ、変身した魔女っ娘衣装だと身動きがとりにくいっていうのもあるけど、帰りがちょっと恥ずかしいのもある。
日常服である、制服姿ならスカートだけどひらひらのレースとかが付いているわけじゃないから安心♪
これなら、万が一警察に声を掛けられてもなんとか誤魔化せる気がする。
今のところ、一度も声なんてかけられたことなんてないけど……
「ほら、雄大くん。サニーの服、早く仕上げよ?」
振り合えり様、右手の小指を唇に当てながらウィンクして、広瀬に声を掛けると、壁に盛大に頭を打ち付けていた。
「マジでかわいい……可愛すぎて死にそう」
馬鹿なことを言っているヤンキーに向かって、チベットスナギツネのような視線を送る。
「……ホントに学校最強のヤンキーって噂の広瀬 雄大と同一人物なのか、未だに不安になる……。実は双子の弟だったりする?」
「んなわけねぇーだろ」
拗ねたように唇を尖らしながら文句を言ってきた広瀬に笑みが零れる。
「えぇ~、ホントに~?まぁ、オレは今の雄大の方が好きだけどな」
ニっと笑みを浮かべ、クルッと方向転換してさっさと広瀬の部屋に入る。
どさくさに紛れてコッソリ告白してしまった!
ヤバい、めっちゃ顔熱い!
「あぁ~、日常服のマリリンが俺の部屋にいるのマジでヤバイ……」
当の本人は、アニメのキャラが自室にいる姿に見悶えており、オレが言った告白なんて全く聞いていない様子だった。
ズキリと胸がかすかに痛む。
マリリンはずっと憧れの女の子だ。
オレの憧れが詰まった可愛い女の子だ。
それなのに、好きな人のライバルがマリリンなんて……全然勝てる気がしない。




