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チュートリアル


「シリカ、状況は芳しくないようですね。まずは食料の確保と本日の寝床を探しましょう」

「水は? 船内にたくさんあるじゃないですか」


 シリカはまたもマザーAIをポケットに押し込んだ。


「な、何故ですか!? シリカ」

「人が死んでたし、あそこの水は飲みたくない」

「であれば、強制帰還モードに移行しない範囲で、食料確保が行える場所を探しましょう。幸い、ここは都市の中みたいですので」


 シリカは頭上に建設された都市を見上げる。


 移動式シェルターは海から離れた場所から徐々に、海に向かっていき、その道中で人を受け入れながら進んでいた。

 シリカは眠っていて分からなかったが、このシェルターも受け入れを行っている際中、あるいは終わった後に活動を停止したのかもしれない。

 などと、そんなことを考える。


「シリカ、見てください。あちらから上の方へと上がれそうですよ」


 マザーAIはシェルターからほどなくした距離にある、坂道を指して言う。

 とてもじゃないが、乗り物で移動するような坂道を徒歩で歩くのは骨が折れる。


「道、長くない? もっと別のルートを探そうよ」

「シリカ! 見てください」

「今度は何?」

「エレベーターです! 修復しましょう!」


 都市を支える柱の一つ。その内部はエレベーターになっているようだった。


「修復できるの?」

「お任せを!」


 不安に思いながらも、シリカは柱の前へと向かう。

 しかし、存外修復はすぐに終わった。


 あの甲高い音を立てながらエレベーターは到着する。

 それに乗り込むと、次第に上へと上昇を始めた。


 柱の中でガラスに映りこむ自身の姿。濡れた服が、エレベーター内の照明を反射し、それ以上は不要じゃないかと言いたくなるほどの光を纏う。


 ゆっくりと上がる。


 耳の中が痛くなるような気がするが、あくびをすればその感覚はすぐに消えてしまった。


「シリカ! 見て下さい! 外の景色です」


 マザーAIが目をキラキラと輝かせながら、ガラスに張り付く。

 鉄でできた巨大都市。おそらく映像を映し出していただろう巨大な板に、大きなドーム。

 森林が豊かな場所に、海を模したかのようなエリア。

 奥で倒壊しているのは商業地区だろうか。


 ここからは都市全体がよく見える。


「昔は、ここにも人が住んでいたんだよね?」

「そうですよ、シリカは人の暮らしを知らないのですか?」

「うん」


 エレベーターは最上階へと到着した。

 どうやらここは展望エリアらしい。都市の様子が一望できる。


 建物への入り口らしき場所に立てかけられた、古びた看板には、よくわからないキャラクターが描かれており、最高の夜景を楽しもうなどとつづられている。


「クラッカ、クラッカ!」

「見てください、シリカ。奇妙な鳥がいますよ」

「ほんとだ、食べれるかな?」


 兎ほどの大きさの黒い鳥がけたたましい鳴き声を上げながら、展望台をくるくると周回している。


「何とか食べましょう、シリカ」


 シリカはずっと手にしていた黒い棒状の機械を起動した。

 それは音を立てながら変形し、戦鎌の形に姿を変える。



 ◇



「足は速いみたいだったけど、飛べないならなんてことなかったね」


 シリカは先ほどの鳥の足首をひっつかみながら、逆さにぶら下げ血抜きを始める。


「でもやっぱり、服が濡れてると思うように動けないね」

「それでもいい動きでしたよシリカ」

「どうも、あそこの売店に何かないかな?」


 建物の入り口を入ってすぐの売店にシリカは立ち寄った。


「使えそうな物がいくつかありますね。シリカ、強調表示しますので、それらを持っていきましょう」

「わ、なんか物が光って見える」

「シリカは私の船と紐づけられていますからね。これくらい朝飯前です!」

「もう、夕方だけどね。というか、それなら強制帰還モードの解除とかできないの?」

「現状、一部機能が使えない状況にあります。私を修理すればあるいはといった所でしょう」

「そっか」


 シリカは着替えと、飲めるか怪しい未開封のペットボトル数本とキャンプ道具一式を手に入れた。


「これ、貸し出し用って書いてあるけど、昔の人は、こんな屋上でキャンプしてたのかな?」

「どうでしょう?」


 着替え終わったシリカは急いでキャンプ道具を開いていた。

 もう日も暮れ始めている。今日は、ここで一夜を過ごすことにしたらしい。


「あ、火がつけられる物ないや……」

「お任せください!」


 マザーAIは内部からガスマッチを取り出し点火する。


「おお、凄い」

「でしょう! マザーAIは優秀なのです! もっと褒めてください!」

「はいはい、凄い凄い」


 シリカは先ほど狩った鳥肉を一口大に切りそろえ下ごしらえを始めるのだった。

 こんばんは、なんとなくお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、この作品はインディーズゲーム風に執筆しております。

 これからもこんな感じでゆるく描いていくつもりですので、どうぞよろしくお願いします。

 それでは次回のグルメ回でお会いしましょう。

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