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目覚め

 システム復元まで残り98%……99%……100%……。

 復元完了。システム起動――


「hello! マザーAIは、今日も皆様が幸せに生活できるように応援いたします」


 静寂の中に機械音声が響く。


 巨大型移動式シェルター、クロースホープは現在、地上で活動を停止していた。


「データ復元。状況を確認します」


 AIはこの船が活動を停止する前のことを思い出す。


 突如として出現した水晶生物によって船内のシステムが干渉を受け、衝撃抑制装置の破損及び、その内部の大量の水が船内へと流出してしまったことを。


「生存者確認中…………1名ヒット。対象データ検索。対水晶生物用強化人間Eシリーズ023シリカ。現在カプセル内でスリープモードに入っています」


 マザーAIは船内のシステムが機能していないことを受け、自身を船から切り離す。

 ギギギと機械が軋む音を立てる。そのまま、コロリとそのAIは球体となって転がり落ちる。


 そのまま、コロコロと水中近くまで転がる。それに焦ったAIは必死に小さな脚部を開いて、バタバタとそこに留まろうとする。


「危険! 危険! 水没してしまいます! 危険! 危険!」


 何とか、水没することなく、その場に留まることに成功したマザーAIは誇らしげにする。


「マザーAIは素晴らしいのです。どうか皆さん、褒めてください」


 静寂。


「……Eシリーズシリカの救出に向かいます」


 現在地は制御システムを管理する船内の中心部に位置する。ここからシリカが眠るカプセルまでは、そう遠くない。

 マザーAIは周辺状況を確認する。


 船内は完全に水没しており、ところどころに浮かび、他の機械に絡みついている配管を使えば、ダクトまでたどり着き、シリカの部屋まで行けるだろう。


「マザーAIは優秀です! 頑張ります!」


 飛んで、焦って、ふらついて。それでもAIは、ダクトまでたどり着くことに成功した。


 ドライバーを自身の体から取り出し、ダクトを開き、隣の部屋に。


 次の部屋には、いくつかの白骨死体が沈んでいたが、構わず、同じようにダクトまで向かう。


 そしてたどり着いた部屋。


 幸いと言うべきか、カプセルの一部が水中に沈んでいるものの、その機能は停止していなかった。

 おそらく、船内のシステムに依存しない造りになっていたのがよかったのだろう。


 カプセル上部まで今まで通り、飛び移りながら移動する。


 そして、マザーAIはカプセルにアクセスし、起動する。


「起きてください、シリカ」


 淡くカプセルが光を放ち、解放される。中には、黒い棒状の機械を手にした少女が眠っていた。

 そして少女は目覚め、突然流れ込んできた水に慌てる。


「な、なに!?」


 慌てつつも、棒を手にしたまま水中を泳ぎ、水面へと浮上する。


「ぷはー」

「おはようございます、シリカ。私はマザーAIです!」

「誰?」

「マザーAIです!」

「そう、私は何をすればいい?」


 シリカは淡々とAIに尋ねる。


「まずはここから脱出しましょう」

「分かった、出口はどこ?」

「分かりません!」

「……そう」


 シリカがジト目でAIを見つめると、AIは狼狽え、後退る。


「あ、危ない」

「わわわっ、水没してしまいます!」


 シリカに即座に救い上げられてもなお、脚をばたつかせているAIを見て、一抹の不安を覚えるシリカ。


「助かりました、感謝します。シリカ」

「……どういたしまして」

「出口は分かりませんが、非常口までのマークを探しましょう!」

「そうだね」


 存外、出口はすぐに見つかった。非常階段、それも開き戸で内側から押して開けるタイプだ。

 潜りながら、強化人間特有のパワーでこじ開けようと試みる。


「しびか、もおすごじでべべべ」


 水中で喋るせいで、声がおかしくなるマザーAIに、ふいに笑いそうになりながらも、シリカは何とか扉を開けることに成功した。


「おわっ」


 そのままとてつもない水圧で押し流される二人。

 階段に頭をぶつけそうになりながらも、何とか手すりにしがみつくシリカと、そのポケットに必死にしがみつくマザーAI。


 水が流れ切って、シリカは気づく。マザーAIが目を回していることに。


「ほら、起きて」

「マザーAIは優秀です! 優秀なのでこんな水流もへっちゃらです! どうぞ褒めてください!」

「……はいはい、凄い凄い」

「酷いです! シリカ」

「てか、あなた。水に濡れても平気じゃん」

「マザーAIは凄いので、当然、防水加工も施されています! どうぞ、褒めてください」


 シリカはマザーAIをポケットに詰め込み、階段を上り始めた。


「お待ちください、シリカ。あなたは現在、この船に紐付けられています。ですので、遠くへ行きすぎると、強制帰還モードに移行するでしょう」

「なるほど、あんまり遠くに行けないと」

「はい」


 暫くして、階段の最上階、出口へとたどり着いたシリカ。

 固まってしまった扉を無理やりにこじ開け、外の眩しい光と清々しい空気を全身に浴びる。


 広がる自然、苔むした甲板と船の外装、崩れた道路。どうやら世界は自然に飲み込まれてしまったらしい。

 こちらの作品は、現在執筆中の作品【お嬢様、私とワルツを踊りませんか?】の息抜きとして書き始めたものとなります。

 そのため、継続的な投稿がなされない可能性がございますので、あらかじめご理解ください。

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