変わり目、上がり目
「もうすぐ新年度だね」
月見年往。4月からビカビカの高校一年生だ。
「また同じ学校ね」
紅一天。中国人風の名前だが、れっきとした日本人だ。この学校ではファーストネームを前に持ってくる生徒も見受けられる。年往からは紅さんと呼ばれている。繰り返すが、春から高一だ。
「紅さん、理数科で唯一の女子だね」
女子枠などではない。正々堂々、一般入試で難関を突破した。それもトップで。
「男女論で堂々巡りな議論が繰り返されるけど、結果を出してからなら、相手も聞く耳を持つんじゃないかしら」
争いのための議論では無く、寄り添いの議論でありたい。
「紅さんはスーパーガールだから、誰も文句を言えないよ。男から見てもなるほどなって話しかないし」
紅ちゃんと呼ぶには抵抗がある年往。
「わたしだって別になにか社会に役立ってるわけじゃないわ。まだ働いてないわけだし」
社会人になるまでの運勢は、家庭環境によるところが大きい。親の庇護を離れてからが、本当の戦いだ。
「紅さんを見てると、周りもガッツが出るからね」
※長い付き合いだが、恋人関係ではない。恋愛偏差値は絶望的に低い二人。
「ははは。七星中からも他に五人受かったわね。心機一転といきたいところだわ」
常に新鮮な面持ちで、物事に取り組む紅。
「学校や職場が変わったり、住むところ、あるいは年が変わってから心機一転って考える人が多いと思う」
細かく見れば、一日でがらっと世界が変わることは、多く観察される。
「まあ、そうね。もっと人生の岐路は無限に分割出来るんだけど、わたしは数量的に塩梅がいいのは、月単位での切り替えだと思うわ」
月が人類に及ぼす影響は、多く見ても6分の1ほどに軽視されている。
「うんうん! プロ野球のチームでもさ、あんなに不調だったのに月が変わるとめきめきと勝ち星をあげるってケースも多いんだ」
二人ともドラゴンズファンである。
「月曜日から頑張ろうって思う人の気持ちも分かるけど、日にちのカウンターが01に成ってることが、想像以上に幸不幸の出発点となりやすいの」
凡人は占星術を笑うが、ビリオネアは星の支配力を大いに活用する。