運命の選択
――――――――私は、間に合ったのだろうか?
窓から入る月の光に照らされて浮かぶ、人形作りに関する資料が積まれた机に椅子。箪笥に小さな棚。ベッド。
必要最低限、そんな印象を受ける部屋はそのままだ。
以前見た時と、家具や配置はそう変わってないように思う。
相変わらず椅子が倒れているところを見ると、今も慌ててこの部屋を出ていく習慣は変わってないんだろう。
でもなんとなく、なんとなく全体的に違和感を覚える。
――――目覚めるのが、遅かった?
一瞬跳ねる心臓に、その後速くなっていく鼓動。
不安を振り払うように首を振った。
その動きに少しつんとした埃っぽい空気が栗色の髪にまとわりつく。
もうあまり読んでいないのか積み重なった本に薄っすら埃が積もっている。
――――自分にできることは、した。
自分に全てを覆すほどの力がなかったとしても、自分にできることはした。
したつもりだ。した。した。したよ。したはずだ。
それでも。
――――――――この焦燥感は、なんだろう?
大事な何かを取りこぼしてしまったような、手のひらからすり抜けてしまったような、そんなどうしようもない気持ちがわいてくる。
そんな自分を責め立てるような気持ちを振り切るように、私は外へ繋がるドアへ手をかけた。