過保護
授業が終わり部室に向かう。
部室の扉を開けたら、あとは卒業式を待つばかりで二学期の終わりに部を引退された、文武両道でうちの部と生徒会長を兼任していた私が憧れている先輩が居られる。
暗い顔をした先輩は机に突っ伏してブツブツと何事か呟いていた。
「先輩、どうかなされたのですか?」
声を掛けると先輩は突っ伏していた顔を上げて不満を口走る。
「やっと、やっと、御父様の束縛から逃れられたと思ったのに……」
先輩の一族は明治の頃から国民の教育の向上に貢献して来た御家で、教育界で知らぬ者はいないと言われる程の方々なのだが、明治大正昭和平成の150年近く男子しか生まれて来なかった男系の一族。
それが18年前始めて女の子か誕生した、それが先輩なのだけど、女の子が生まれた事で先輩の一族は狂喜乱舞して一族挙げて大事に大事に先輩を育てていたのだが、その過保護とも言える束縛ぷりは凄まじい物があった。
私たちが通う中高一貫校に先輩が入学が決まった途端、先輩の御父様が学校長に就任されて学校内でも先輩の行動を束縛していたのだ。
だから御父様の束縛からやっと逃れられると喜ばれていた筈無のに。
「それなのに、進学する大学の学長に御爺様が就任されたのよ……」