表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

6

 左手のホルンを使い、会議を起こす。

 死体の足場に円卓が形成され、6番まで招集されて会議が始まる。

 先ほどの一蘭のように、各席はカーテンつきの個席になっており、5番のところは、カーテンが開けっ放しになっている。



『個人発言の時間です。残り30秒』


 俺の前のカーテンが開き、次々と個人発言の時間がやって来る。


1「あー、死体位置は、廊下。停電が起こって、隠れて、開けたら廊下に5の死体があった。外傷はないんだが、息をしてないし、触っても反応なかった。通報前に、近くに3がいた」


2「え、えと。私は気づいたら部屋の中にいたので、部屋、出ないほうがいいのかなと思って、そのまま停電も、ずっといました」


3「ニマニマ」


 3番のカーテンが上がり、先ほどの太っている男が、ニマニマなんてちょっと可愛らしいオノマトペが通じないほど、下卑た笑みを浮かべていた。

 この、顔面パンパンマンが。


3「廊下って、どこの廊下だよ。おい、聞いてくれよ。1番のやつ、俺の目の前で5番の死体を見つけて、いやらしいことをしてやがった。信じられねぇよなぁ。死体を辱めるなんて人として最低だぜ。男としては共感しかねぇけどよ」


4「……アリバイを整理したほうがいいですね。私は2階のショールームに入り、ネクタイピンを入れ替えるタスクをした後に、書斎から書類をシュレッダーにかけました。その後、停電となり、魔法電力部屋に向かい、6と一緒に照明の魔動機を修復してします」


6「そっすね。エントランス湧きから食堂に向かうところで1と会って、食堂の食器タスク後、正面玄関で3と出会った。その後3と別れて、停電を4と直した」


 あっという間に会議が流れていく。

 5の不謹慎発言が俺に刺さる。

 「ふざけんじゃねぇ」とか「俺はそんなことしてねぇぜ」としらを切ってもいいと思えた。

 この個人発言が順々にされていく都合上、感情を抑える時間があるのはありがたい。

 俺、すぐ顔に出るタイプだからな。


『全体会議を始めます。残り60秒』


2「し、死体を辱めたって、本当ですかっ!?」

1「本当に死んでるか、触って確かめただけだよ。3の言い方がアレなだけだ」


 嘘である。


3「んん~? おっぱい触ってるように見えたけどな~」

1「心音を確認するのに、胸に手を当てただけだ」


 嘘である。


2「わかりました……」

1「わかってくれたか。マジか」

3「お嬢ちゃんも気をつけなよ~?」


 2は表情を曇らせたまま、話題を変える。


2「ところで、その……これって、死んだら、どうなるんでしょう。そこの、5番さんみたいに、なるんでしょう? そしたら……」


 しん、と場が静まり返る。

 今さら。

 実に今さらな質問に、しかし死の恐怖を突きつけられ、動揺しないやつはいない(俺含む)。


4「……今は死後を考えるより、勝つ方法を考えましょう」

6「4に同意。タスク進捗は14%。2が動いていないことを考えると悪くない」

4「全員の発言を聞く限り、こなしたタスクの数は6個でしょう。それで14%ということは、総タスク数は約42です。あと36個のタスクを完了させれば、脱出できるはずです」

6「無理してキルを取ろうとすれば、必ずどこかでボロが出るはずだ。情報を精査して勝とう」


 TRPG経験者のサラリーマン4と、美青年6はほぼ同じ思考のようだ。

 すでに高度な会話を繰り広げている。

 生死よりも勝利を気にするところあたり、生粋のゲーマーという感がある。

 俺は──

 俺は、死ぬのが怖い。


1「こんなデスゲームごめんだね。俺は部屋にこもらせてもらう。と言うやつの気持ちがよく分かったぜ」

4「1番さん、協力を.

タスクで勝てる状況を作れば、人狼側もうかつには動けないでしょう。」

1「わーってるよ」


 自由会議の時間が終わる。

 終わり際に、4がぽつりと呟く。


4「二人一組で動くのもアリかも……」


『自由会議終わり。投票の時間に移ります。残り20秒』


 シャッとカーテンが降りて、左手のホルンが光る。

 え、投票!?

 ああ、そうか。初日と違って、もう吊る人を選んでいいのか。

 しかしまぁ、投票することまで考えてなかったから、戸惑う。

 うーん、吊るなら汚い笑みを浮かべる3番だよな。吊っても罪悪感少なそうだし……

 いや、待て。

 投票、誰に票を入れたか、バレるよな。

 誰でも吊っていいわけじゃない。

 誰でも吊っていいと考えるのは、人狼だけだ。

 だから、意味もなく票を入れて、「なぜ入れたのか」問い詰められるのは避けたい。


「……棄権する」


 左手のホルンに話しかけると、ホルンの光は静かに消えた。

 投票が終わり、3番のカーテンの上に、カンという乾いた木を打ったような音とともに、1票入った。


『投票時間終了です。事件現場に戻ります』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ