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会議が終わると、体がぎゅるんと、ワープするかのようにどこかに転送された。
厨房っぽいな。
時代は中世ヨーロッパくらいだろうか。
銀色の食卓。電子レンジはさすがに見当たらない。
ゲームを始めると真っ先にオプションを確認するタイプの俺は、まず自分の身を確認する。
若返ったり美少年化されてるってわけじゃなさそうだ。残念。
両手の甲には見慣れないマークが入れ墨みたいに刻まれている。
右手のナイフは『クールタイム30秒』。
左手のホルンは『クールタイム20秒』。と表示されて、刻一刻と秒数を刻んでいる。
「おっ」
ホルンでマップの表示もできるらしい。
ホログラムのように、立体的に地図が表示される。
自分の位置がポイント表示されており、さらに黄色い矢印アイコンと『次のタスクまで32m』と示されている。
方向音痴でも、これなら迷うことはないだろう。
まずはタスクをこなしていくか。
俺がいる食堂は、正面に大きな通路と、裏に小さな通路がある。
料理の配膳用の廊下と、食材の搬送用の裏口だろう。
俺は大通りのほうを抜けて、矢印の示すままに進む。
館だけあって、通路が広い。通路の中央に柱などの障害物があるので、そこに身をひそめることで、行き違うことも可能かもしれない。
また、通路の上部分は空洞になっているが、高さは3m以上あるので、常人には飛び越えられそうにない。
廊下を進むと、中央広場のような場所に出た。
赤いカーペットが敷かれて、黄金色の燭台に火が灯り、大きな階段が両腕のように広がる。
最初のタスクは……。
『魔法時計の振り子が遅くなるよう細工する』……?
なんだこりゃ。
脱出通路の確保のためのタスク……なんだよな?
まぁ、こういう脱出と関係ないタスクが用意されてるゲームもあるからな。
運営の都合ってことにしておこう。
柱時計みたいに置かれた、魔法時計のガラス戸を開け、振り子をいじって進みを遅くする。
魔法時計なんて知らんが、やり方はナビが出るので、基本的には指示通りにやるだけで済むみたいだ。
ちょっと手間取ったが、タスククリア。
終わったころに、6番のイケメンが通路を歩いてきた。
左手を見ながら歩いている。
歩いてるときも数字は書かれたままなんだな。
1「おう、6番。タスクは順調か」
6「今ひとつ終わってこれから食堂に向かうところだよ」
1「食堂ならこの通路の右手側にあったぜ。こっちからは裏口だから見逃さないようにな」
6「助かるよ」
すれ違うように、俺は廊下を歩く。
ふわっとちょっといい匂いがするのが腹立つ。
いくつもある部屋。その部屋同士が繋がっている場合もあるし、大部屋もあるし、中庭もある。
複雑な地形。
俺の視界は、そこでブツンと途切れた。