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全員の幕が上がり、初めての対面となる。
おっさん3人に、女子2人、イケメン1人。
それぞれが、好き勝手に喋り出す。
3「おいおい、えらいイケメンがいるなあ。6番。お前モテんだろ」
6「何だい急に。ゲームと関係ないことは知らないよ」
5「イケメンにとっちゃイケメンが基準だからな。おめーらおっさんとは違うんだよ」
3「あンだとぉ?」
1「なんでイケメンのマウントを他の女が取るんだよ」
2「あ、あの。まだ誰も殺されなくていいんですよね?」
4「ええ、大丈夫ですよ。人狼ゲームなら初夜から吊っていくところですが、タスクがある以上、下手に数を減らすのは得策とは思えません」
3「詳しいじゃねぇか、4のおっさん」
4「はは……私らの世代は、TRPGやボードゲームが遊びの主軸でしたから」
2「あの、ルールによると【鑑定士】がいるそうなんですけど、それはどなたですか?」
女子高生のうかつすぎるビギナー発言に、俺が釘を刺す。
1「初日から役職COする馬鹿はいねぇよ」
2「役職シーオー? とはなんですか?」
4「カミングアウトの略ですよ。役職を明かすことを、人狼用語でそう言うんです」
2「どうして名乗り出ないのですか?」
1「初日から【鑑定士】です、なんて言ってみろ。次の日、食い殺されるに決まってんだろ」
2番の女子高生が、ひっ、と短い悲鳴を上げた。
そう。【鑑定士】はサバイバー陣営にとって大きな、あまりにも大きな切り札だ。人狼を炙り出せなくても、スキルは最大2回使えるんだから、この6人盤面で自分を含めて半数の白が出せることになる。
強すぎる。
だから、『俺が【鑑定士】であることは絶対に伏せたほうがいい』。
6「人読みになるけど、この中だと人狼ゲームに精通してそうな、1か4が【鑑定士】という見方もできるね」
1「お前もずいぶん冷静だから、1.4.6だな」
ぎすり、と人狼ゲーム特有の嫌な空気が流れる。
人を疑うゲームだから、時に、人間性さえ疑ってかかるのが人狼ゲームだ。
誰の責任か、失言か、それがダイレクトに圧し掛かる。
この程度に怯んでいるようじゃあ話にならない。
なにせ、これから俺たちは、文字通り殺されるかもしれないんだから。
『全体会議終了。現場に戻ります』