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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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レオンハルト様の話


 宮殿を守る騎士様たちや通りすがりのメイドの皆さんたちからの生暖かい視線を感じながら……私、本当に泣きそう。ユリウス陛下に抱っこされたまま私は別室へたどり着いた。

 もし、私が恥ずか死したらユリウス陛下のせいだ。

 恨めしげにユリウス陛下を睨んだ。

 なのに、何で楽しそうな顔になるの?


「そんなに可愛い顔をされるとますます離してやれないだろう?」

 

 ユリウス陛下はそう言って口角を上げた。


 ユリウス陛下……かなり楽しんでいるよね?

 ほら? 別室で私たちを待っていたレオンハルト様が目を丸くしている。

 レオンハルト様……言葉も出ない感じで硬直していない?

 レオンハルト様の後に控えている側近二人も顔を引きつらせているんですけど?


 ユリウス陛下はそれを見事に無視して抱っこしている私に顔を寄せた。


「恥ずかしがらすに、私にもっと甘えてみせてくれ」


 いやいや、もう……お腹いっぱいです。


「待たせたようだ。エンデストリア王子、パーティー以来だな」


「はい。この度はヴァルシード嬢と話をする機会を取り持ってくださりありがとうございます」


 レオンハルト様は胸に手を当てユリウス陛下に頭を下げた。ユリウス陛下は軽く頷き、


「寛いでくれ」


 ソファから立ち上がっていたレオンハルト様に座るように促した。


 そして、レオンハルト様と対面するようにユリウス陛下自らもソファに腰を下ろした。


「私のことは気にせずティアーナと話すと良い」


 うわあ。ユリウス陛下、私を下ろす気ないよ。


 思わず遠い目になる。


 これって、何の羞恥プレイですか?

 

 私はレオンハルト様と向き合うように膝のうえで微調整されただけで抱っこ継続中。

 逃げ出そうにも、ウエストはしっかりユリウス陛下の腕で固定されてしまっている。


 暫し、レオンハルト様は唖然とした表情でユリウス陛下と私を見ていたが、軽く頭を振って表情を改めた。


 流石だ。

 レオンハルト様は一国の王子だけある。

 こんな、こんな恥ずかしい状況を目の当たりににしても取り乱さないんだ。


 でも、私は、恥ずかしくて取り乱しそうだよ。

 ……ううう、本気で泣こうかな。

 

 こんな恥ずかしい格好で私……レオンハルト様と話をするの?

 

「ティアーナ、お前に聞きたいことがある」


 ふ、はっ?


 レオンハルト様の言葉で恥ずかしいのがいっぺんに吹き飛んだ。


 さっきまでの格式張った言葉遣いは何処へ行ったの?


 ティアーナって呼んだ。しかも、お前って……。


 私が、驚くのと同時に、ユリウス陛下の舌打ちが小さく聞こえた。


 まじまじとレオンハルト様を見つめると、レオンハルト様は不敵な笑みを浮かべていた。


「私の唯一を名前で呼び捨ての上にお前とはな」


 ユリウス陛下の苦言に、レオンハルト様は『それが?』とでも言うように首を傾げた。


「まあ、良い。大方、私の唯一が許しているのだろう。ティアーナ、エンデストリア王子が気に触るようならすぐに言いなさい」


 ユリウス陛下は鷹揚に言うと、私の額に一つ口づけを落とした。


 うー。

 またキスされた。いくら仲の良いところを見せつける為とは言っても、こんなに密着していて人目も憚らず……これじゃあバカップルだよ。 


「……はい」


 ちょっと涙目になりながら私はユリウス陛下に頷いた。


 うええん。……もう、勘弁してええ。


 一瞬、ユリウス陛下は熱の籠った眼差しで私を食い入るように見つめると、私の耳許に唇を寄せた。


「その顔はそそるな」


 え、ひゃあ!


 熱い息がかかって耳たぶを食まれる。


 ふええ、これってやりすぎでは?

 

 ユリウス陛下、その無駄に色気を出してくるのやめてください。

 

 耳たぶ食べないでえ!


 私があたふたしていると、レオンハルト様が冷ややかに言った。


「そろそろ、ティアーナと話をしたいのですが?」


 その言葉で、私の耳たぶはユリウス陛下から解放され、室内に静寂が落ちた。


 シーン! だよ?


 うっ……居たたまれない。レオンハルト様は真面目に話をしようとしているみたいなのに。『こんなんで、どうもごめんなさい』と、思わず心のなかで謝ってしまった。


 ユリウス陛下に相変わらず抱っこされているけれど、私は気を引き締めて話を聞こうと姿勢を正した。


「あの、それで、私に話とは?」


「お前から、私の弟の匂いがしたことがある。初めて私たちが会った時だ」


 獅子の姿のレオンハルト様から不埒なことをされた時のことよね? 思い出すだけでもゾワゾワするけれど全身の匂いを嗅がれた。


「弟君の匂い? それが私からしたのですか?」


 今なら、それが猫ちゃんの……ヒューベルトくんの匂いだったのだとわかる。


「そうだ。だからお前に聞きたかった。私の弟を知らないか?」


 読んでくださりありがとうございます(*´▽`)


 いいね、ブックマーク、評価をありがとうございます。とても励みになります。


 執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。

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