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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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答え合わせ


 私は、ヒューベルトくんを見つめた。

 ヒューベルトくんは焦点が定まらない感じでまだボーっとしている。光のないエメラルドグリーンの瞳……。

 私は、彼がここまで怯えるほど獅子の匂いをつけていたの?

 確かにレオンハルト様に抱っこされてしまったけれど。

 ……あれでついちゃっていたんだ。ホワイトナイト様が何かにつけ匂い匂いと煩かったけれど大袈裟だと軽く見ていた。何しろ獣人のことはさっぱりわからないから。そもそも、それを知ろうとしているところだし。


 「ごめんね。ヒューベルトくん。」


 溜息と一緒に私の唇から言葉が零れた。

 

 ピクリとヒューベルトくんの肩が揺れた。

 ヒューベルトくんの瞳にゆっくりと生気が戻ってくる。青白かった頬に赤みが差して……。


 「……ティアおねえさま。」


 ふえっ?


 がばっと、ヒューベルトくんは腰に回されていたホワイトナイト様の手を振りほどいて勢いよく私に抱きついた。

 驚くほど熱烈に。

 座っていた私の膝の上に這い上がり、ギュッと腕を私の首に回して顔を埋める。


 「ティアおねえさま! ティアおねえさま! 」


 ふええ?

 一体これは何が起こっているの?

 ヒューベルトくんの温かい身体の重みと、甘く響く少し高めの透き通るような美声に翻弄される。


 うえええ! 待って! ヒューベルトくん!

 

 私の頭が追い付かない。

 心臓がドクンドクン音を立てている。

 お、推しに『おねえさま』と呼ばれて抱きしめられている!

 あまりに衝撃的すぎる。

 何で? 何で? 何で?

 頬に触れるヒューベルトくんの柔かい髪の毛の感触にプルプルと悶絶しそう。


 「ティアは、変態ですか。」


 呆れたようなホワイトナイト様の声と共に……私の身体からヒューベルトくんの感触が消えた。


 えっ!


ホワイトナイト様の腕の中に再びガチっと抱き込またヒューベルトくんが足をバタバタさせているのが見えた。


 「……油断も隙もないですね。」

 

 「魔法を使うとは卑怯です! 」


 ヒューベルトくんが目の前でホワイトナイト様に文句を言っている……。

 ああ、信じられないけれど、嘘みたいだけれど……。

 今更ながらにヒューベルトくんがここに存在していることを実感する。


 「あなたこそ、どさくさに紛れて何をしているのですか! 破廉恥な! 」


 「僕は、やっとこの姿に戻れたんです。ティアおねえさまに甘えてはいけませんか? 」


 私の方へ顔を向け、涙を浮かべた目ですがるように見るヒューベルトくんに胸が締め付けられる。


 命を狙われていたのなら……怖かったよね。心細かったよね。

 とにかく安心させてあげたい。ヒューベルトくんはゲーム設定では五歳だったよね。まだこんなに幼いのだもの……ギュッと抱きしめてあげたい。


 「駄目に決まっているでしょう! エンデ王国の第二王子が何を言っているのですか! 」


 「へえ……。

 さっきまでボーっとしていたから、あなたとティアおねえさまの会話は半分くらいしか聞けなかったんだけど……僕のことを知っているんだね? ねえ、どこまで知っているの? 」


 突然ヒューベルトくんの気配が変わってゾクッとした。


 ヒューベルトくん?


 つい今まで、涙を浮かべたヒューベルトくんに庇護欲を搔き立てられていた。

 ……なのにそのヒューベルトくんが獰猛な目つきでホワイトナイト様を見据えている。


 「本性を出しましたね。何が甘えてはいけませんかですか? 必要ないでしょう? 」


 冷ややかにホワイトナイト様が言い放った。


 「ティアが吃驚していますよ。」

 

 その言葉にヒューベルトくんは押し黙る。


 「答え合わせをしたいので、取りあえず座ってください。」


 「……わかりました。」


 ヒューベルトくんは、チラッと私を見て眉をひそめると不本意そうに頷いた。


 ホワイトナイト様の腕から解放されたヒューベルトくんは、


 「僕は、ティアおねえさまのお隣に座りたいです。」


 そう言って、素早く私の隣に座った。


 さっきのヒューベルトくんの獰猛な感じには驚いたけれど……どんなヒューベルトくんも好ましいと思ってしまう。こうして私の隣に座ってくれるヒューベルトくんはすごく可愛い。『推しだからって甘やかさないでくださいね。』という……ホワイトナイト様の心の声が聞こえてきそう。


 ホワイトナイト様は苦虫を嚙み潰したような顔をしたけれど、話を進める事を優先したのか黙認する事にしたようだ。


 「先ずは、あなたはヒューベルト・ヴィクト・エンデストリア第二王子殿下で合っていますね? 」


 ホワイトナイト様の問いにヒューベルトくんは頷く。


 「そうです。」


 「私が得た情報では、あなたはエンデ王国で命を狙われこちらに逃げて来られた。そして、あなたは、あなたの兄君レオンハルト・フォーティス・エンデストリア第一王子殿下から命を狙われていると思っていらっしゃる。そうですね? 」


 ヒューベルトくんの顔が強張る。


 えっ?

 レオンハルト様がヒューベルトくんの命を狙う?

 そんなことあり得ない……。

 けれど……。

 青ざめて悲愴感が漂うヒューベルトくんの顔に私は何とも言えない気持ちになる。今まで、どんな気持ちでヒューベルトくんはいたのだろう……。たった一人で逃げて来たの? お兄様のレオンハルト様とは仲が良かったはずなのに、そのお兄様から命を狙われたと思ったの? だとしたら、どれほど辛かったろうと思うとたまらなくなって……。


 私は、ヒューベルトくんをギュッと抱きしめた。


 



読んでくださりありがとうございます(*´▽`)


いいね、ブックマーク、評価をありがとうございます。とても励みになります。


執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。

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