ガブリエル・リデロ・ルシーア殿下
補足でーす。
シャルドリーゼ先生は自由にペアを組んでも良いといいましたが、賢い生徒たちは上級生と下級生でペアを組んだようです。
魔法技術(Aクラス)ペア
ガブリエル・リデロ・ルシーア(3年)
ティアーナ・ヴァルシード(1年)
ヒィロ・シュナウザー(3年)
マティス・カスティーユ(1年)
レオンハルト・フォーティス・エンデストリア(2年)
ソルジュ・レーヴェン(1年)
フローレンス・ベルン(2年)
セレスト・クライスラー(1年)
ガイアス・シモンズ(2年)
リリアナ・キンドレー(1年)
シェザリオン・ソリアル・リュミエール(2年)
フィオラ・ロベール(1年)
アルベルト・ツヴァイト(2年)
ミシェル・レンブラント(1年)
「ルシーア殿下、ティアーナ・ヴァルシードです。よろしくお願いします。」
ルシーア殿下の前に立ち頭を下げた。
「貴女がヴァルシードさん。よろしくね。」
顔を上げると、柔らかく微笑む繊細な美しい顔があった。
心ともなく見とれてしまう。
「分からないことがあったら私に何でも聞いてね。大抵のことは分かると思うから。」
とても優しい人だと思った。
穏やかな声と表情に安心する。
そのせいか……。
「はい! ありがとうございます! 」
つい元気よく返事をしてしまってから、ハッ! とした。これは駄目だ。淑女らしくない。何ていうか……部活とかの先輩後輩のノリだよね。
ルシーア殿下は、少しだけ驚いた顔をしてすぐにクスリと笑った。
「ヴァルシードさんは元気がいいね。」
あー。
笑われてしまった。私の小さい頃から頑張ったお妃教育の成果はどこへ消えちゃったの? 私は、ちょっと恥ずかしくなって俯いてしまった。
「誉めたんだよ。」
え?
思いもしなかった言葉を聞いてルシーア殿下の顔を思わず見つめた。
「元気の良い子は好ましいと思う。もっと元気でも良いくらいだ。……ね? 」
うわー! 眩しすぎる微笑みにクラクラしそう。まるでお伽噺話にでてくる王子様のようだ。いや、実際王子様なんだけれども……。ルシーア殿下の頬に落ちるプラチナブロンドの後れ毛が色っぽくてドキッとした。これは心臓に悪いかも。私を見つめ返す銀灰色の瞳も艶やかに揺れているし。こんなに綺麗でルシアン王国の王子様なのに……腰も低くて親しみ安い雰囲気で『もっと元気良くても大丈夫』みたいなことを言われて……。
「ありがとうございます? 」
どう反応したら良いのか分からなくて、首を傾げて言ったお礼が疑問形になってしまった。
それは、更に笑を誘ったらしく……。
「フフッ。貴女は面白いね。」
笑われた上に……面白いとまで言われてしまった。
いいのかな? 一応公爵令嬢な私……。華の私はもっと元気だったから、それから比べたらだいぶマシなはず。それにここは学園だし、私は学生だし……。気にしたら負けな気がする。うん。ルシーア殿下は特に気分を害した様子もないし。大丈夫。
「貴女とは、仲良くやれそうな気がするよ。」
ルシーア殿下の言葉に、恐れ多いなあ……とは思ったけれど、私も仲良くできそうな気がした。
「嬉しいです。仲良くしてください。」
私は、はにかむように笑った。
すると、ルシーア殿下は目を見張り何故か私をじーっと見つめた。
えっと、あの?
「あの? ルシーア殿下どうかされましたか? 」
美しいルシーア殿下からそんな風に見つめられて困ってしまった。
ルシーア殿下の銀灰色の瞳に吸い込まれそうだ。
……何だか長いし。
私、また何か可笑しなことをしてしまったのかな?
不安になってくる。
「……いや。失礼した。」
ルシーア殿下はスッと目を逸らした。
「そうだな……。」
「うん。」と頷いて、こちらを見たルシーア殿下はその瞳を煌めかせた。
「こうして、ペアを組んだのだから貴女のことをティアーナと呼んでもいいだろうか? 私のことはガブリエルと呼んで欲しい。」
うええ? またあ?
……このくだりは最近とても多い気がする。
直近ではエンデストリア殿下だ。結局レオンハルト様と呼ばせられた。
私をティアーナと呼ぶのは別に構わない。だけれど、王子様の名前呼びは本当に勘弁して欲しい。
「はい。私のことはルシーア殿下のお好きなようにお呼びください。ですが、ルシーア殿下をお名前でお呼びするのは恐れ多いです。」
私がそう言うと、ルシーア殿下は少し考えてからやんわりと言った。
「ごめんね。これは命令。ガブリエルと呼びなさい。」
ひいい。
「魔法技術授業のクラスメートでペアの相棒なのだから敬称も無しだよ。」
待って! 今、初めてルシーア殿下を私は怖いと思った。
……優し気で、王子様なのに威圧感もなくって安心していたのに、サラッと逃げ道を全て塞いできた。
これって……ルシアン王国王子をガブリエルと名前呼びの上に呼び捨て決定コース?
嘘お……。
しかも、三年生だよ? 上級生だよ? 年上なのに?
無理、無理、無理……。
どうしよう。
最早……私、涙目になっている。
「大丈夫。すぐに慣れるよ。ほら、呼んで? 」
……無理。
「指導的な観点で理由を述べてあげよう。ティアーナ、魔法事故の時や魔物襲来の緊急時に呼ぶ名前は短い方が良いんだ。わかるよね? 」
それは、わかる気がする。緊急時に長ったらしい名前をもたもた呼んでいる暇はないから。だけど……。
「仕方がない。」
諦めてくれるの?
ルシーア殿下はため息をついた。
「……私は貴女をティアと呼ぶから私のことはエルと呼びなさい。」
へ?
「一点の曇りもない合理的な呼び方にしてあげたよ。これでいいね。」
ハードルがぐーんと上がって愛称呼びになってしまった。
……もう、駄目だ。一点の曇りもない合理的なと言われれば、命令を受け入れるしかない。
「……わかりました。」
項垂れた私にルシーア殿下……エルは、
「必要なことだよ。」
と、言って私の頭を撫でた。
「そろそろ、皆、ペアは組めたか? 自己紹介も終わったな? 」
シャルドリーゼ先生の声が教壇から響いた。
「次からは実技に入る。教科書を良く読んでおくように。」
こうして、第一回目の魔法技術の授業が終わった。
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執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。




