ラファエル・シャルドリーゼ先生
なかなか話が先へ進まずごめんなさい。
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レオンハルト様に捕獲された私は……まるで獅子の獲物にでもなったような気分になりながら教室まで運ばれ、結果、授業に間に合った。……すごいスピードだった。階段を上がった踊場から教室までの比較的短い距離だったけれど、レオンハルト様の脚力は正しく百獣の王のものだった。その後から少し遅れてシェザリオン殿下たちもやって来た。レオンハルト様に運ばれている時に、遠くなっていくホワイトナイト様が私に手を振るのが見えたから、ホワイトナイト様は何処かはわからないけれど、私を見守っていた場所に戻ったのだと思う。
教室へ入ると他の生徒は既に着席していて、教壇に水色の長髪が目を引く長身の男性が立っていた。顔半分が前髪で隠れているけれど見えている瞳は澄んだ水色で美しい顔立ちをしていた。
格調高そうな白地に緑色の模様のはいったローブを着ている彼は私たちを見て、僅かに眉間にシワを寄せると一言「席につきなさい。」と言った。
……先生かな? 初めて見る。
空いている席に座らせるようにしてレオンハルト様は私を下ろしてくれた。
何て言うか……もう色々と私がすり減った。レオンハルト様に抱っこで運ばれるとか……。できるだけ近づかないどころかゼロ距離だったし。そもそもの原因……シェザリオン殿下の『女神セレネ様の神聖な気配がする。』って、あれは何? 私が光の属性を持っていることがバレたの? だけど、それは女神セレネ様の気配とは違う気がする。なんだろう? ホワイトナイト様があの瞬間に助けに来てくれたということは、私にとって不都合な問いかけだったのか……。後でホワイトナイト様に聞いてみないとだ。
「さて、これで全員そろったな。私は、このAクラスを受け持つラファエル・シャルドリーゼだ。よろしく。」
教壇に立つ彼はやはり先生だった。高校の科学の先生みたいに厳しそうな気がする。
あれ?
普通に高校の科学の先生みたいって思った自分に吃驚した。
私、科学の先生の顔は思い出せないけれど厳しかったのは覚えているんだ……。それも自然と思い出されて……前世の記憶っていう違和感が全く無かった。自分でも気づかないうちに華の記憶はもう綺麗に融合していて私に馴染んでいたんだ……。何だか心がほんのり暖かくなった気がした。
「このクラスは、特殊クラスだ。魔力の大きさや属性を鑑みて君たちは選ばれた。これからしっかり魔法を学んで実力を伸ばしてもらう。」
うん。やっぱり厳しそうな先生だ。
にこりともせずにシャルドリーゼ先生は真面目な顔で話している。
「三年のガブリエル・リデロ・ルシーアさんに、このクラスのリーダーになってもらう。彼は極めて優秀だ。わからないことは彼に教えてもらうように。」
ルシーア殿下への思いの外ぞんざいな扱いに驚く。生徒であっても王族なのに……。シャルドリーゼ先生はルシーア殿下をこき使う気満々に見えた。
……ルシーア殿下に教えてもらえと言われても、ルシアン王国の第二王子に教えてもらうというのはちょっとハードルが高いんだけどなあ。
そう思いながら……シャルドリーゼ先生が目を向けた先を追うと、プラチナブロンドの髪を緩やかに後ろで結んだ優しい面立ちの美人がいた。うん。女性的な美しさの男だ。たおやかな感じの人だった。
彼が多分ルシーア殿下だ。
「……ああ、そうだ。ここでは、それぞれペアを組んで授業をうけてもらう。ペアは自由に組んでよいが、ヴァルシードさんは無属性持ちなのでルシーアさんとペアを組むように。」
え?
思わず目をパチクリさせてしまう。
無属性とルシーア殿下とどういう関係が?
私の表情を見てシャルドリーゼ先生が補足した。
「ルシーアさんも無属性を持っている。ヴァルシードさんは彼から学ぶべきことが多いだろう。無属性は珍しいからな。」
無属性は珍しい。ソルジュもそう言っていた。その珍しい無属性をルシーア殿下も持っているの? シャルドリーゼ先生はルシーア殿下は極めて優れていると言っていた。ルシーア殿下とペアを組むのは恐れ多いけれど、そうすれば魔法が上達するのがはやくなる? 私は、まだ魔法が全く使えない。だけど、可能な限り早く上達したい。これはもしかして渡りに船なの?
「はい。シャルドリーゼ先生、ご配慮ありがとうございます。」
私がそうこたえると、シャルドリーゼ先生は満足そうに頷いた。
「チッ。」
隣から舌打ちする音がした。
「私がティアーナのペアになりたかったのだがな。」
レオンハルト様が低く呟いていた。
えええ!
それは……絶対嫌だ。
適度な距離でレオンハルト様とは接したい。最初の頃よりはレオンハルト様への忌避感は幾らか減ってきたけれど、何を考えているのかわからないから物凄く警戒してしまう。そもそも最初の出会いからして獅子だよ? 匂いを散々嗅がれたあげく、私に聞きたいことがあると付きまとうようなことをして……ほぼ不審者だし。あ、今週末ユリウス陛下の庇護のもとでレオンハルト様と会うんだった。すっかり忘れていた。でも、このところ毎日レオンハルト様と会っているよね? だけど、その事についてレオンハルト様は全然触れてこない。うーん。人目を憚る話なのかな。
「……アーナ、ティアーナ! 」
え? あっ!
ソルジュが心配そうに私を呼んでいた。うっかり考え込んでしまっていたみたい。
「ティアーナ、大丈夫? ボーッとしていたね。ペアを組んだ相手と自己紹介をするんだよ? 先生の話を聞いていなかったでしょう? ほら? 皆、移動して始めているからティアーナもルシーア殿下の所へ行かないと。」
えええ!
シャルドリーゼ先生の話を全然聞いていなかった!
もしかして、ルシーア殿下を待たせてしまっている?
「ソルジュ! ありがとう! 」
私は慌ててルシーア殿下の元へ急いだ。
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