聖王国の王子
登場人物が増えてきました。名前で呼んだり家名で呼んだりごちゃごちゃしてごめんなさい。
魔法技術(Aクラス)
ガブリエル・リデロ・ルシーア(3年)
ヒィロ・シュナウザー(3年)
レオンハルト・フォーティス・エンデストリア(2年)
フローレンス・ベルン(2年)レオンハルト側近
ガイアス・シモンズ(2年)レオンハルト側近
シェザリオン・ソリアル・リュミエール(2年)
アルベルト・ツヴァイト(2年)シェザリオン側近
フィオラ・ロベール(1年)大聖女候補序列一位
ミシェル・レンブラント(1年)
ソルジュ・レーヴェン(1年)
ティアーナ・ヴァルシード(1年)
マティス・カスティーユ(1年)大司教候補
セレスト・クライスラー(1年)
リリアナ・キンドレー(1年)
……え?
リュミエール殿下は白磁の……アンティークドールのような美しい顔に微かな笑みを浮かべた。
「君は……とても綺麗だ。」
無機質にも見える黄金の瞳が僅かに揺れる。
「……女神セレネ様の神聖な気配がする。どうして 」
えっ? ……何? 私は何を言われているの?
女神セレネ様の神聖な気配って? 言われている意味が全然わからない。
思わず私は、周りを見回す。
良かった……。わからないのは私だけじゃない。
ソルジュもレオンハルト様も唖然としていた。
そんな中、ツヴァイトさんに抱っこされていたロベールさんがガバッと私の方へ顔を向けた。ロベールさんは信じられないというような顔をして睨み付けるように私を見た。
「貴女は誰ですの? 」
えっと……。そうか、私はソルジュから聞いていたから彼女のことを知っているけれど、ロベールさんともリュミエール殿下ともツヴァイトさんともこれが初対面になるのか……。
リュミエール殿下のさっきの言葉はともかく、魔法技術の授業は同じクラスだし、しっかり挨拶をしておいた方が良いよね。本当はできるだけ関わらないようにしようと思っていたんだけど。……何だか聖女関連は鬼門のような気がするし、ヒロインかもしれないロベールさんとは距離を取りたいのに。
「初めまして。私はメイヴェ王国からの留学生でティアーナ・ヴァルシードと申します。よろしくお願い致します。」
学園なのでカーテシーはせず、軽く頭を倒してニッコリ微笑んだ。
「へぇ。貴女がヴァルシードさんか。」
意外にもロベールさんではなく未だにロベールさんを抱っこしているツヴァイトさんが最初に私の挨拶に反応を示した。
「ヴィオニーヴェ陛下唯一の婚約者候補。この国へ留学早々がっつりヴィオニーヴェ陛下から囲われているんだろ? 」
蔑まれている? ううん。私という人間を見定めようとしているのかな? 質問が意地悪だ。
まぁ……私が登校する前日だっけ? 全校生徒に私のことが通達されたらしいから……そう思われるのも当然なのかもしれない。かえすがえすも何してくれちゃっているの? ユリウス陛下だよ。
私を守るためのより効果的な方法だというのはわかる。わかるけどちょっとやりすぎよね。
「ユリウス陛下は心配性なのです。そうですね。囲われているのかもしれませんね。」
敢えて否定せず、肯定してしまえ!とばかりに頷いて微笑んで見せた。
だってやりすぎだとは思うけれど、もうユリウス陛下がやってしまったものは仕方がない。
恥ずかしい思いをした分、いっそ有効活用しないとだよね。
開き直った私にソルジュが隣でクスリと笑った。
「ああ。そういえば、ティアーナは溺愛されていたな。パーティーの時はヴィオニーヴェ陛下の膝の上に抱っこされていたか。」
目を細めて感慨深げにレオンハルト様がポソリと言うのが聞こえて慌てる。
「うええ! 何で、そんなことを思い出すのですか! 忘れてください! 」
自分でも忘れていた黒歴史をぶちこまれてしまった。恥ずかしい! きっと私……今、顔が赤くなってしまっていると思う。だって頬が熱い。
「ユリウス陛下は、だから過保護なんですってば! 」
怒ったように言うと、レオンハルト様はくつくつと笑った。
「そう、貴女がティアーナ・ヴァルシードさんなのね。」
ロベールさんは私を値踏みするように眺め回した。
怖い……。
眼差しも鋭いし、私に対して敵意を持っているような気がする。敵意までいかなくても良くは思っていなさそう。
「どういうことですの? シェザリオン様。女神セレネ様の神聖な気配がどうしてこの方にあるというのです? たかだか聖女でもないただの留学生にあるはずがないではありませんか。」
「いや、私には見えるよ。だから彼女に聞いているんだ。ねぇ、ティアーナ・ヴァルシードさん……。」
リュミエール殿下が私に手を伸ばした。
「どうして? 」
私は後退った。
どうして? と言われてもわからないよ。
あと数センチでリュミエール殿下の手が私に触れそうになったとき……。
「勝手に未婚の女性に手を触れないでいただきたい。」
リュミエール殿下の腕を何者かがガシッと掴んだ。
え?
ホワイトナイト様?
どこから現れたの? え? 魔法? え?
ホワイトナイト様は私に目をやり困ったように目尻を下げた。
「このままでは、授業に遅れますからね。それに、不埒なことをする輩からティアをお救いしないといけませんから。」
リュミエール殿下を不埒な輩と呼ぶホワイトナイト様って不敬だよね。でも……いつも通りすぎて「あはは……。」と脱力してしまった。
しかも、このタイミングで助けにくるって、本当にずっと私を見ていたとしか思えない。ストーカーも吃驚だよね。
「無礼者! 」
いつの間にロベールさんを下ろしたのかツヴァイトさんが、ホワイトナイト様とリュミエール殿下の間に割って入った。
「貴方は私には敵いませんよ。そして、私はヴィオラス王国国王ユリウス・ソルティオ・ヴィオニーヴェ陛下の命を受けています。その意味はわかりますね? 苦情はヴィオニーヴェ陛下へどうぞ。」
そう言って、鋭い表情で対峙しているツヴァイトさんにホワイトナイト様は艶然と微笑んだ。艶めいているのにその微笑みは酷く冷たく見えた。
「私がティアーナ様の護衛としてここに居ることの意味をお考えください。貴方がたが決して軽んじて良い相手ではないのですよ。」
「貴様っ、リュミエール殿下に対して不敬だぞ! それにフィオラ・ロベール様はいづれ大聖女になられるお方だ。そちらこそフィオラ様を尊ぶべきだろう! 」
ツヴァイトさんが声を荒らげた。
「ここは学園ですからね。不敬も何もないでしょう。」
ホワイトナイト様は淡々と言う。そして「ふふっ。」と、嘲るように肩を揺らして笑った。
「大聖女ですか……。大聖女もどきを尊ぶ趣味はありませんね。いや、もどきにも至らない偽物大聖女でしょうか。」
ひええ。
ホワイトナイト様は何故か喧嘩を売りに行っていない? どうしてこんなに険悪な状況に?
ホワイトナイト様の服をツンツンと引っ張る。
「ホワイトナイト様、言い過ぎです。」
私が上目遣いにホワイトナイト様を見上げて言うと……。
「ああ……ティア、なんて可愛い。ねぇ、ほら、貴女の髪は神々しくもこんなに金色に輝いて……瞳は、吸い込まれそうなほど美しく神秘的なピンクトルマリン……まさに天の至宝。ティアは私の女神です。女神セレネ様の気配どころか……それよりも清らかで尊い。それなのに、あの方がたは侮辱ともとれる発言をしました。だから、ね? ティア、私が怒るのは当然でしょう? 」
ホワイトナイト様はうっとりと私を見つめた。
いきなりこれは何?
もう、何がなんだか……。
「ティアーナ! お前……大変だな! 」
うへっ!
いきなりレオンハルト様に抱き上げられてしまった。
「捕獲した。授業に遅れる。ソルジュ行くぞ! 」
ひぃぃぃ!
ホワイトナイト様のせい? で……私は、猛獣王子に捕まえられてしまった。
読んでくださりありがとうございます(*´▽`)
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執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。




