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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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魔法技術のクラス


今日もなのね……。


私はギュッと抱きしめられながら半ば諦めて天井を仰いでいた。





朝、目覚めると猫ちゃんが、シーツの中に潜って私の身体に身を寄せるようにして眠っていた。

昨日の朝と同じだ。

やっぱり猫ちゃんは何かに怯えているような感じがする。


夜に私がベッドに横になった時には、猫ちゃんは窓辺の猫ちゃんの寝床にいた。それがいつの間にかこうして私に身体をぴったりくっ付けている。甘えられているようで、庇護欲をそそられる。私に守って欲しいのかな? 学園に通うようになってからだよね。こういうの。猫ちゃんがこんな風になるようなことがこの数日間に何かあったかな? 色々思い起こしてみるけれど何も見つけられなかった。




そして……。

朝の支度を始めた頃、部屋にやって来たホワイトナイト様がサリナに私の入浴の指示を出した。


あ、昨日もこんな事があったなあ……。


と、思い返している間にサリナに入浴させられて、制服に着替えていた。


全くもって、何度説明されても猫ちゃんと一緒に寝ていただけなのに何故わざわざ朝から入浴しないといけないのかわからない。例え猫ちゃんが雄だとしても!

だけど、私と一緒に眠ることで猫ちゃんの心が安らぐのなら何としてもそうしようと決めたのだから、仕方がないと観念した。朝のお風呂ぐらいは我慢しよう。


でも、


でもだよ。


これは勘弁して欲しい!


私をきつく抱きしめるディーンさまの匂いに翻弄されていて身体が熱くて堪らない。心臓もさっきからドキドキし通しで息も絶え絶えになっている。


ふええ。


入浴と匂いの上書きがセットって何?


嫌あああ!


支度を終えて部屋を出ようとした間際、ディーン様が昨日と同じ様に現れ、あれよあれよという間に、当然のように私は抱きしめられてしまったのだった。






学園に向かう馬車の中で悶々としている私にホワイトナイト様は呆れたような顔をした。


「全てティアが悪いです。」


ぐぅっ。


「ディーンが警告していたでしょう? 」


『ティアがアレと暫く一緒に眠るというのなら、毎日匂いの上書きをしないといけいね。』


ディーン様の言葉を反芻してガクリと私は肩を落とした。


言っていたよ? 言っていたけれど……本当にやる?

ディーン様って忙しくないの? わざわざ朝来てやること? 猫ちゃんの匂いなんて別に大したことないのに……大袈裟すぎるよ。





しかし、これが……今後暫く続く私の苦行ともいえる日課になってしまうのだ。この時の私は大したことはないと甘くみすぎていたのだった。








今日は学園の門をくぐった後、トラブルに巻き込まれる事もなくスムーズに教室までたどり着けた。

さすがに二日も昨日みたいなことがあったら堪ったものではない。


教室に入るとソルジュがすぐに私に気がついて「おはよう。」と、声をかけてくれた。


「おはよう、ソルジュ。」


「黒板に魔法実技の授業のクラスが張り出されているよ。」


ソルジュが親切に教えてくれる。


そうだった! 昨日カルマン先生が確認するようにと言っていたのだった!

朝の羞恥プレイともいえるあれやこれやですっかり忘れていたよ。


「ありがとう。」


ソルジュにお礼を言ってから見に行った。


うーんと。


ん……。え?


ええええええ!


………………嘘。



魔法技術クラス分け


(Aクラス)


ガブリエル・リデロ・ルシーア(3年)

ヒィロ・シュナウザー(3年)

レオンハルト・フォーティス・エンデストリア(2年)

フローレンス・ベルン(2年)

ガイアス・シモンズ(2年)

シェザリオン・ソリアル・リュミエール(2年)

アルベルト・ツヴァイト(2年)

フィオラ・ロベール(1年)

ミシェル・レンブラント(1年)

ソルジュ・レーヴェン(1年)

ティアーナ・ヴァルシード(1年)

マティス・カスティーユ(1年)

セレスト・クライスラー(1年)

リリアナ・キンドレー(1年)



Aクラスに私の名前があって、ソルジュも一緒なのはとても嬉しい。だけど、この錚々たる顔ぶれは何?

固まりすぎじゃない? 私のクラス。

しかも、エンデストリア殿下いるし!

ピンク頭の一人のロベールさんもいる。聖王国の王子様に、大司教候補? おまけにレンブラントさん……前途多難な未来しか見えないのは気のせい?


張り紙を見ながら固まっている私の肩をソルジュがポンと叩いた。


「……私も驚いたよ。このクラス分けはちょっと尻込みしちゃうよね? 王子様が三人、一クラスにかたまるってね。」


え? 三人?


思わず顔を引きつらせてしまう。


「三年のガブリエル・リデロ・ルシーア殿下はルシアン王国の第二王子だよ。他の二人は知っているよね? 」


ルシアン王国? 確か北にある国だったような。地図で見たことがある。というか、地図でしか知らない。


「教えてくれてありがとう。勉強不足で知らなかった。」


「ティアーナの国からだとかなり遠いからね。とても寒い国だよ。」


それにしても、どうしよう。エンデストリア殿下……あ、あ、あ、レオンハルト様と呼べと言われたんだった。王族から言われたら断れないのをわかっていて言ったに違いないから狡い。しかも友人と言われてしまったし。それはね。獣人の事について知りたいよ。レオンハルト様なら何でも知っていそうだから、本来なら仲良くなった方がいいのだけれど……できれば関わりたくないんだよね。彼の持つ雰囲気が苦手だし。猛獣なところにいつも怯えてしまう。



うーん。だけど、もしも万が一本当に友人になれたら……。



私の目的に一歩近づけるかもしれない。



『運命の番』の真実を得てアスラン様を幸せにする。



読んでくださりありがとうございます(*´▽`)


いいね、ブックマーク、評価をありがとうございます。とても励みになります。


執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。

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