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ヴィオラス王国へいってまいります


国王様の命で登城してから二週間が過ぎた。


あの日の約束通りサティス殿下と手紙のやり取りをしている。彼からの手紙は今のところ六割私をいたわるような内容で三割が隣国の情報、残りの一割がアスラン様の近況だ。


あまり状況は変わっていないみたい。


アスラン様が離宮に幽閉されてから、何度もユノルト男爵令嬢が面会に来ているそうだ。『皇太子を幽閉するなんておかしい!ここから今直ぐだして!』と騒ぎ立て周囲を困らせているらしい。

それとは対照的に、アスラン様は抵抗することもなく幽閉を受け入れ、静かに落ち着いた様子で過ごしているという。だだ、ユノルト男爵令嬢を目にすると人が変わったように彼女の元へ行きたがり暴れてしまうらしい。そのため、ユノルト男爵令嬢はアスラン様に悪影響を及ぼすとし面会を禁止。その流れで、全面的に面会謝絶となるそうだ。アスラン様に近づけるのは、今後暫くは、国王様とサティス殿下、アスラン様の腹心ルイス・デズモンド侯爵様だけになるらしい。


なんだかなあ。


アスラン様はユノルト男爵令嬢と引き離されて辛いのを耐えているのだろうか。

私がアスラン様を想うときに苦しいと感じるようにアスラン様も彼女を想って苦しいと感じているのかもしれない。


『運命の番』って良くわからない。

身近にない事象だからか、言葉が独り歩きしているような気もする。

王家もまだ大した情報は掴めていないみたいだし。

『運命の番』に詳しい国は、国交していない国だしなあ。


私たちは獣人について無知すぎたのよね。


そもそも王家は龍の血が入っているというのに、大元の獣人国のこを知らないのは怠慢だと思う。

早ければ早いほど知っておいたほうが良い。

そう考えると、王家だけに任せておくのは不安よね。

やはり、私も積極的に調べないと。


サティス殿下の手紙のなかに、

隣国は獣人国エンデと国交があると書いてあった。


これは絶好の機会だ。

折角これから行くのだ。

有益な情報を得るために、アスラン様のために、頑張ろうと改めて思った。





いよいよ、隣国ヴィオラス王国へ向かう日がきた。


サリナは私専属メイドなので連れていく。他に、お父様の命で護衛に我バルシード公爵家の騎士団から騎士二人を連れていくことになった。

赤い髪に青い瞳のカイル・ケインズ卿と銀色の髪に灰色の瞳のユノー・グラス卿だ。

なんでもこの国で二人は最強クラスの騎士なのだそうだ。

それぞれからカイル、ユノーと呼んで欲しいと言われ、私のこともティアーナと呼ぶことを条件に了承した。

カイルは筋肉質だがしなやかな体躯の好青年で、ユノーは見るからに筋骨隆々の格好いいおじさまだった。


二人とも気さくな感じで、良い人そうだ。

さすがお父様の人選。

安心して隣国にいける。



ヴィオラス王国までは隣国とはいえ馬車で一月はかかるのではないかと思っていたが、何とヴィオラス王国にあるうちの秘密の拠点と転移門で繋がっているのだそうだ。


初めて聞いた。


密入国で法律違反にならないのかと心配したが、


「使用時に自国と渡航国に申請をするから大丈夫だ。国が管理する公の転移門もあるが、公爵家には特別に自前を持つことが許されているのだよ。」


とお父様が教えてくれた。


道中危険だから最強の護衛がつくのだとおもっていたのに……

道中自体がなかった。


「ティア、気をつけて行っておいで。」


少し寂しげに言ったお父様に私は笑顔でこたえた。


「お父様、いってまいります!」



そして、


お父様に見送られて私たちは転移門をくぐり隣国ヴィオラス王国に降り立った。




そこは、神殿のような静謐な気配のする場所だった。


足元に魔方陣が淡く光っているのが見えたが、すぐに薄くなって消えた。



「お待ちしておりました。この転移門の管理を任されておりますアレクセイ・ホワイトナイトでございます。」


漆黒の長い髪を首の後ろで結わえ、魔導師が着ているような黒いローブを身にまとった長身の男が恭しく頭をさげる。


「お役目ご苦労様です。

私はヴァルシード公爵が次女ティアーナ・ヴァルシードです。宜しくお願いします。」


私は、膝をおり頭を下げた。


と、


「あああああ!何て尊い!

貴女がお生まれになってから16年、お目にかかれる至福の時を想像しながらこちらで待っていました。はぁ、神々しく輝く黄金の髪。私の魂を惹き付けてやまない神秘的な瞳。はぁ、何て美しく清らかなピンクの宝石でしょう。……ティアーナ様は私の女神です。そのうえ、こんなにお可愛らしいなんて!」


は?は?はあ?


顔を上げたホワイトナイト様の知的な雰囲気の漂う端正な顔立ちに感嘆したのもつかの間……いきなりスイッチが入ったように興奮し、まくし立て始めたのに思いきり引く。


「絵姿を公爵様に何度お願いしてもくださらなくて、そろそろメイヴェ王国までいただきに伺おうと思っていたところです。いえ、大丈夫です。絵姿なくとも私の魔法で見守っておりましたとも!」


恍惚とした潤んだ瞳で私を見詰めてくる。


何か怖い。


「無礼ですよ!ホワイトナイト様!許可もなくお嬢様のお名前を呼ぶなんて!」


サリナが目を吊り上げて怒る。

カイルとユノーは彼の様子に危機感を覚えたのか私を隠すように立った。


「ティアーナ様とお呼びしてもよろしいですか?

私の永遠の忠誠を貴女に差し上げましょう。」


「何を言ってるんですか!貴方は!!!」


サリナは大激怒だ。


「まあ、まあ、サリナそのくらいで」


あまりのことに、顔をひきつらせながらもサリナを諌める。

ホワイトナイト様は残念な人みたいだけど、ここの管理をしているということは一応公爵家の人間よね?しかも転移門って絶対的な信用がないと任せられないと思うのよ。


すると、


ホワイトナイト様はカイルとユノーの隙をついて颯爽と私の前に立ち膝をついた。そして、二人が止める間もなく私の手をとる。


「ティアーナ様、私は貴女のしもべです。どうか私をお使いください。ティアーナ様に忠誠をお誓いします。」


手の甲に口付けを落とした。

瞬間、周囲の空気が凍りつく。


「お嬢様に何をするんですかあ!!!」


サリナが横から私の手をさっと引き抜き怒号を放った。




その後、大変だった。

何故こうなった的な状況に呆れるやら煩いやらで途方にくれそうになったが、もめにもめ結果的に……

護衛の1人としてホワイトナイト様は私たちについてくることになった。


彼は見た目通り魔導師なのだそうだ。昔は魔法を使える人も多かったのだが、だんだん減ってきていて現在では稀有な職業になっている。魔導師が居るだけで護衛のしやすさが数段あがるらしい。彼が私たちについてくると転移門の管理ができないのではとお断りもしたのだけど遠隔で可能と何が何でもついていくとしつこく食い下がるので此方が折れてしまった感じだ。


伝書ルリ鳥を飛ばしてお父様にホワイトナイト様の件を伝えることにした。


ルリ鳥は瑠璃色で尾の部分が黄色く長い可愛らしい鳥だ。足に手紙を結んで放つとお父様の元に飛んでいく。賢い鳥なので主人と慣らした相手の元に飛ぶように訓練して使うのだ。




空に羽ばたくルリ鳥を見送って私たちはデスターニア公爵家へ向かった。



読んでくださりありがとうございますm(_ _)m

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