魔力属性判定
程なくカルマン先生が来て、キャロライン・レンブラントさんは自分の教室へ帰っていった。
やれやれだよ。
こちらも関心は無かったのだけれどミシェル・レンブラントさんも無かったらしく、私に対しては終始無反応だった。
ただただ、キャロライン・レンブラントさんに絡まれただけだったという。
朝から本当にやめて欲しい。
そして、教壇に立ったカルマン先生が
「今日は魔力属性判定を行います。」
と、言ったのだ。
「ああ、延期されていた魔法の実技の授業がいよいよ始まるんだね。」
隣の席でソルジュが目を輝かせている。
魔法の実技の授業はまだ始まっていなかったらしい。良かった。最初から学べるのはとても運がいい。私は、全然魔法が使えないから途中からだと理解しにくいかもしれないし。
それにしても、馬車の中で、ホワイトナイト様がつけてくれたピアスはタイミング良すぎでしょう。正に今日魔力測定があるなんて。……もしかするとホワイトナイト様は今日あるって知っていたのかな?
耳についている石に触れる。
王家に伝わるアーティファクトって……国宝だよね?
紫色の石。
光属性を隠すためだけれど、アスラン様の瞳と同じ色を着けるのはちょっと嬉しい。
そんなことを考えている間に、カルマン先生は教卓に何やら複雑そうな魔道具を組み立てて設置していた。
「本格的な魔力属性判定の魔道具を使うんだな。」
「そうなの? 私、初めて見た。」
ソルジュの呟きが聞こえて私はこっそり尋ねた。
「ティアーナは魔力属性判定したことないの? 」
「ないよ。私、最近まで魔力自体持っていないと思っていたし。」
ソルジュは驚いたような顔をした。
「メイヴェ王国でも貴族は5歳になると神殿で魔力属性判定するはずなんだけど。変だね。」
今度は私が驚いた顔をしていると思う。
「全然知らなかった。」
そんなの知らない。五歳といえばお妃教育が始まった頃だ。お父様は魔力も膨大で私をオネエ司教から助けてくれた時の氷魔法はすごかった。領地にいるお姉様も魔法を使えるようなことを聞いたことがある。ホワイトナイト様の話ではお母様も二属性持っていたらしいから、普通なら魔力属性判定やるよね? でも、全く記憶にない。なんでかな?
「では、準備ができましたので、呼ばれた人は前に出て来てください。」
カルマン先生の声がした。
なんだか、緊張してくる。ホワイトナイト様が私の属性は光と水と風だと教えてくれたから結果は分かっているのだけれどドキドキする。
ん? 貴族が五歳で魔力属性判定をするのなら、このクラスの大半がもう自分の属性を知っているってことよね?
なのに、わざわざ皆判定するの? 私みたいにした事がない人だけでよくない?
ふと浮かんだ疑問をソルジュに聞いてみる。
「それはね。稀なんだけど後発属性がみられることがあるからなんだよ。五歳では一属性だったものが十年経って二属性になったりね。」
「そんな事があるんだ。」
「ミシェル・レンブラントさん。」
カルマン先生がさっき絡まれたキャロライン・レンブラントさんの弟ミシェル・レンブラントさんを呼んだ。
「はい。」
ミシェル・レンブラントさんは静かに立ち上がると教卓へ向かった。
彼が一番目なんだ。魔力属性判定ってあの魔道具でどうやるんだろう? 私は興味津々でじっと見つめた。
「レンブラントさんその窪みに手をあててください。」
カルマン先生の指示に淡々とミシェル・レンブラントさんは応じる。
彼が何か四角い大理石のような物の上に手を置いたように見えた途端。
パーッと眩い太い水色と細い金色の光の柱が天井に伸びた。
わあ! 綺麗!
「あの色のついた光の柱で属性が判るんだよ。彼は、水と光かな? 」
「二属性なんだね。光って珍しいんじゃないの? 」
私の光属性を隠さないといけないくらいだし。
ソルジュは少し首を傾げて「うーん」と考え深げに唸った。
「ティアーナも知っていると思うけど、聖女が持つという光属性はとても貴重なんだ。だけどね、そこまで珍しいというわけではないんだよ。光属性の魔力量の少ない者なら結構いるんだ。」
そうなの?
それなら、私の光属性を隠さなくっても大丈夫なのでは?
あれかな? またホワイトナイト様の過保護的なやつなのかな?
「次、メルク・マドレーさん。」
「はい。」
細い茶色の光の柱が天井に伸びる。
茶色は土属性かな?
次々と生徒の名前が呼ばれ属性が判明していく。
「ソルジュ・レーヴェンさん。」
ソルジュが呼ばれた。 ソルジュの属性ってなんだろう? すごく興味がある。
ソルジュが魔道具に手をあてると、赤と水色と緑と茶色と暗紫の光の柱か天井へ伸びた。それぞれ均等な太さで虹のように綺麗だ。
それを見てクラス全体がざわついた。
皆、吃驚しているみたいだ。
これって……五属性? 五属性って……え? まって? ソルジュって何者?
ソルジュが席へもどってくる。驚きのあまりに目を見開いている私を見つけて、ソルジュはニッコリ笑った。
自分の席に着いたソルジュは少し照れたように頭を掻く。
「魔法は得意なんだ。」
得意で片付けられる属性の数なの? ソルジュすごすぎるよ。五属性ってなかなか居ないよね。
「次、ティアーナ・ヴァルシードさん。」
遂に私が呼ばれた。
席を立つと気持ちを引き締めて教卓へ向かった。
教卓にある魔力属性判定の魔道具は、遠くから見たときよりも繊細な造りで複雑そうだった。四角い大理石のような物の中央が手のひらの形に窪んでいて、その部分はクリスタルみたいに美しかった。
「さあ、ヴァルシードさん、そこに手をあててください。」
魔道具をじっくり見入りすぎていたみたいで、カルマン先生に促される。
私は、緊張しながらそっと手をあてた。
その瞬間、目が眩むほどの眩い水色と緑と白い光の柱が天井を突き抜けるように伸びた。
ええええっ!
何で? 水と風属性のはずなのに……この白い光って何? 三属性あるんですけど!
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執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。




