獣人とお友だちになりたい
私はホワイトナイト様の言葉に目を見開く。
「ホワイトナイト様! それ、すごく嬉しいです! 」
だってホワイトナイト様はその美貌で生徒の視線を集めすぎるのだもの。それにユリウス陛下の配慮はわかるのだけど、折角学園で学ぶ機会を得たのだから普通に学生したい。昨日も散々そんな事を考えていた。勿論、獣人のことエンデ王国のことを知ることが一番大事だ。でも、クラウスはこの学園ならば獣人国の人たちと自然な交流ができると言っていた。それなら尚のこと普通の学生の方が良くない? 獣人のお友だちをぜひ作りたい。
あ…………。
あれは無理だったなあ……と、クラウスとの会話を思い出して遠い目になる。
学園に行くことを提案された時に、エンデ王国第一王子が留学していると聞いて、彼なら獣人のことについて最も詳しく知っているだろうから、あわよくば顔見知りになって色々教えてもらおうと思っていたのよね。あの時は……。
もう、今は気持ち的に無理だけど。
だってあんなだとは思わなかったし。むしろ近づくのは遠慮したいし。
「ティアと距離を保つとは言っても非常時に間に合う場所にいますし、貴女から私が見えなかったとしても私は片時も目を離しませんので安心してください。」
ホワイトナイト様が言うと不思議と粘着質な男の言葉に聞こえて少しだけゾクリとするのは何でだろう。
そんな私の考えを読んだかのようにホワイトナイト様は思わず後ずさりたくなるような危険な笑みを浮かべた。
「ええ。貴女へのストーキング技術には自信がありますよ。貴女が生まれた時から見守っていましたからね。年季も入っています。ふふふ。」
本当に白と同一なのこれ?
ホワイトナイト様としては通常運転。白だと……白どうした? レベルでおかしい。
……逆に私も白から見たら華どうした? になるのかな? 前世と今生が良い感じに混ざり合ってできたのがティアとホワイトナイト様なのかもしれない。
「ホワイトナイト様……そこは威張れるところじゃありません。」
ホワイトナイト様は呆れた様子の私にクスクスと笑った。
「ああ、それと……。」
思い出したように口を開く。
「学園では魔法の授業もありますから真面目に学んで来てくださいね。貴女の魔力は神聖力がもとになっていますので光属性ですが、ティアのお母君であるフェリシアさまの水と風属性を受け継いでいますのでそちらの属性を公にしましょう。光だと神殿に目を付けられる可能性がありますから。」
知らなかった。
お母様も魔法が使えたんだね。しかもニ属性持ち。
おまけに私……三属性も使えるの? すごいなあ。まだ何も使えないけれど、いずれは使えるようになる? 何かわくわくしてきた。
不意に、ホワイトナイト様が目を輝かせてニコニコしている私の耳朶に手を触れた。
んえ?
「……つ! 」
チクリとした痛みがして驚く。
「これは、とある方からの預かりものなのですが、何でも王家に伝わるアーティファクトで、貴女の光属性を隠せます。」
痛みは直ぐに消えたけれど思わずそこに自分の手をあてた。
とある方って? 王家に伝わるって? 突っ込みどころ満載なんですけど?
「な、なんですか? 」
「いきなりの方が痛みが少なかったでしょう? 」
うわ。絶対わざとだ!
耳朶に固いものが触れる。
「元は古代の魔法が付与されたアメジストで作られたピアスですが、外れると厄介なので石を魔法で耳朶に埋め込みました。あ、それと質問は受け付けません。」
しれっと言うけれど、乱暴すぎない? 質問しちゃ駄目なの? ただ受け入れろってこと?
「大丈夫です。先ほど程度の痛みは伴いますが取り外し可能です。」
ホワイトナイト様は、涼しげな表情で言った。
大丈夫ってそこ? これは、何も話す気がなさそうだ。
「全てはティアの為ですよ。では、参りましょう。」
話しは済んだとばかりにホワイトナイト様がエスコートして馬車から降ろしてくれた。
そして、昨日と違う。
ホワイトナイト様に見送られてティアは一人で正門を入った。
他の学生と同じように。
一人で歩いていると自然と笑みが溢れる。
華だと普通のことだけれど、ティアは違う。生まれてから今までそうやって一人で歩いたことがなかった。必ず近くに護衛が数人はりついていた。それなのに、ホワイトナイト様が何処からかストーキングしていたとしても、見渡す限り護衛は一人もいないのだ。
「お早う、ティアーナ。何だか楽しそうだね。」
後ろから私に並ぶように歩み寄ってきたソルジュが笑いながら声をかけてきた。
「ソルジュ、お早う。」
「あれ? 今日は一人なの? あのやたらと綺麗な顔の護衛は? 」
早速、ホワイトナイト様のことを聞いてくる。
「何処かにいるはずなんだけど、私が学園で浮かないように離れたところから守ってくれることになったの。」
「そうか。 良かったね。確かに昨日はティアーナ目立っていたから。」
「だよね。」
いつも以上にニコニコしてしまう私の耳朶で紫色の石がキラキラ輝いた。
ソルジュがそれを見て、何故水色か濃紺の石ではないのかと訝しんでいるとは思いもしなかった。
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執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。




