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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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華と白一くんと白と


散々、オネエ司教は自分の名前……黒蝶の美しさを語り続け私を辟易とさせた。

明後日に生命の危機にさらされる不安もさることながら……本当に疲れた。

ようやく解放された私は、帰りもカイさんの付き添いで部屋まで戻って来た。


部屋の扉の前に熊のような男が立っていた。熊のような男は私をここにさらってきた後は見張りをさせられているのかもしれない。雰囲気……盲信の異教徒たちとは毛色が違う気がするのだけど。


部屋の中には、白一くんが宙でとぐろを巻いて待っていた。

私を見るやシュルシュルシュルととぐろを解いて空中を泳ぐように寄ってきた。

私の肩の上の辺りでうねうねしている。


「聖女さま、私はこれで退出いたしますが、ご用がおありの時にはこの者ユランに申し付けてください。」


熊のような男を示した。


「熊さんじゃなかったのか……。」


私の中では彼は熊という認識。大きいんだもん。どこから見ても熊さんだよね。今さら名前がユランさんと教えられてもと失礼なことを考える。ここで目が覚めてから色々なことがありすぎて頭の中が、もういっぱいいっぱい。思考回路もどこかバグっている気がする。


「良くわかったな。俺は熊の獣人だ。俺は扉の外にいる。何かあったら呼べ。」


「こら! 聖女様にその口のききかたはなんだ! 」


カイさんがユランさんを咎める。


「俺は雇われ者だからな。お前たちの流儀に従ういわれはない。俺の好きなようにさせてもらう。嫌なら解雇しろ! 」


さすが、熊さんだ。態度もでかい。

それにしても熊の獣人だったのか! びっくりした。熊さんで合っていたとは。熊のような男は熊の獣人でユランさん……。

学園で獣人とお近づきになって獣人について知ろうと思っていたんだけど、こんな近くに獣人がいたなんて。あ、思えば不埒な獅子も獣人王子だったっけ。メイヴェ王国を出た途端に獣人との遭遇率が上がっている。


「では、失礼します。……お前もこい! 」


「え? あああ? 」


お辞儀をしてカイさんはユランさんを引きずるようにして部屋を出ていった。

ユランさん雇い主に叱られるんじゃない?


扉がパタンと閉まり、静かになった。


私は思わず、息を「はーぁ」と吐いた。

精神的な疲れでしゃがみ込んでしまう。


『大丈夫ですか? 華さま。』


白一くんが心配して私の顔を覗き込んでくる。


『ねぇ、白一くんは、いつでも私の側にいてくれると思っていたのにどうして離れてお部屋でお留守番していたの? 前世では絶対に離れなかったよね? 』


気になっていたことを心話で話しかけた。

前世では白一くんと私は一心同体と言っても良いほど密に繋がっていた。華に危険が及んだ時いつでも対処できるように、本体の白がそう命じていたのだ。だから、オネエ司教の部屋で白一くんが居ないと気づいてから不思議でたまらなかった。


『華さま、申しわけありません。彼の者に私の存在を気取られそうでしたので、隠れておりました。」


んんん? でもさ、鬼? 悪魔? メアから私を助けてくれたよ? 白一くん姿を現して。


白一くんは私の心の声を読み取って、実際わざわざ心話と意識しなくても容易く私の心の声を拾っていくのだ。


『あれは鬼でしたから。此方では悪魔といわれる者ですね。あれの言う『我が君』と黒蝶の言う『我が主』が、同一の者なのか気になるところではありますが、少なくとも黒蝶は前世で私と因縁のある者です。今はまだ私が貴女の側に居ることを隠しておきたい。その方が油断するでしょう? 』


白一くんは身体全体で私の頭を撫でながらこたえた。


ああ、白だ。


白一くんを通して白が話している。

白一くんは白の一部だけれども魂も一部なので大概は弱体化した白に似ている別物といった感じで独立した思考で行動している。けれど、こんな風に、唐突に白に成り代わる。というか、白が全面にでてくることがある。


白、あのオネエ司教頭おかしいから!


オネエ司教……黒蝶。

白と前世の因縁って……あの人も転生した人なの?

でも、白は神様の眷属よね? その白と因縁って……。


『貴女は知らなくても良い話です。それより黒蝶のせいで穢れが貴女に絡みつているようです。禊をしておきましょう。』


白の因縁であるなら私も知りたいんだけどな。白は教えるつもりは無いみたいだ。大体白は前世でも少し意地悪だった。修行も……ああ、そうだ。ホワイトナイト様のように飴と鞭がえげつなかったのを覚えている。そもそも白はどうしてこの世界に存在しているの? 白一くんがメアから私を助ける為に突然現れて……多分白一くんが引き金になって……私は、前世を思い出したのだ。何となく、白一くんが存在するから白も存在するだろうなあ……と思っていたから素直にこれは、今、白だと認識している。んあ? あれ? これって、もっと驚くべきことだよね? なに安直に受け入れているの? 私?


これは……


部屋に戻った時からずっと感じていたけれど、この思考回路のバグっぽいのと精神的な疲れは、穢れのせいだったのかな?


でもどうやって禊をするの?

前世で禊をしていたような聖域はここにはないよ?


『貴女はもう幾度かこの世界でも禊をしていますよ? 霊的な夢の中でですが、有効です。』


知らないし。全然覚えていないよ?


『私は、貴女とそこで会っていましたよ。さあ、ベッドに横になってください。』


欠片も覚えていない。


しゃがんでいた状態から立ち上がって白に言われるままにベッドに行き横になった。


『さあ、眠って! ティア。』


言葉と共に、白一くんはすーっと吸い込まれるように私の中に入って行った。


白もティアーナをティアって呼ぶんだ。華って呼んだりティアって呼んだり変なの。






そうして……

室内に静寂が広がった。

読んでくださり

ありがとうございますヾ(。・ω・)ノ



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