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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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白と邂逅


熊のような男は軽々と私を担いで歩いて行く。

蛇のような男が馬車を茂みに隠しに行った。どうやら道から外れて木々の生い茂る森の方へ向かっているみたいだ。熊のような男の肩に胸を圧迫されて頭が男の背中に下がっているけれど自分の髪の毛の隙間から周囲が窺えた。

だいぶ、街から外れたところにいるようだ。

全く見知らぬ風景。


ここはどこなの? どこまで歩くの?


じわりと涙が溢れてきた。


まさか、こんなことになるとは思ってもみなかった。あんなに頑張ったのにユリウス陛下の後ろ盾があっても危険な目に遭うのは変わらないじゃない。

ユリウス陛下の力に影響を受けない者に狙われたのかな? でも、これは、学園にいくことで想定していた危険とは違うよね。 まだそっちの方が安全だった。

護衛にホワイトナイト様もいて、ディーン様までつけてきた時には……お父様の過保護だと思っていたのにな。こういう危険も想定してた? ディーン様から夜中に怒られたっけ。ディーン様も護衛で何処かにいたはずなのにさらわれちゃった。あ……。皆、心配しているだろうな。

アスラン様に『運命の番』が現れて婚約破棄されてから……何か変だ。襲撃にあったり、今みたいにさらわれたり。

私の知らないところで何かが起こっている気がする。……ほんの一月程前のことなのに、アスラン様から愛されていて……相思相愛で幸せだったのが嘘みたい。もう、遠い昔のように思える。


つ、ぐすっ。


「おい、泣くと消耗するぞ。止めとけ。」


熊のような男がボソリと言った。


そんなことを言われても。……あなたたちのせいじゃない。


……ぐすっ、ぐすん。


「いや、寝かせるか。」


ボソボソと呟く声とともに


痛っ!


首の後ろに衝撃を感じた。……が、すぐに何もわからなくなる。



私は、気を失ってしまったのだ。








………ポチャン。


水滴が落ちる音がする。


清浄とした水の湧き出る泉。そして神気の漂う鳥居。


この前は水面を歩いていたが、今日は身体を横たえて浮かんでいた。


心が安らいでいく。


夢の中だろうに、何故か意識ははっきりしていて現実の私との区別がついていた。


ここには恐怖も不安も何もない……ただ、心が凪いでいるだけ。


上に広がる霞みがかった紫色の空を、浄化されて空っぽになった心で見ていた。


煙るようなアスラン様の瞳の色だ。


心に欠片が戻ってくる。


私の黒髪が水面に広がっている。ティアーナとは似ても似つかぬ色。そして……。

ピンクトルマリンではない黒い瞳。

本当に違う。


私は華。


着ている服も……今日は巫女服だった。

ティアーナが着ているような中世のドレスなんて着たこともない。


あ……これは禊だ。


華は巫女だから定期的にしていたっけ。


今の私はティアーナなのに、まだ禊が必要なの?

変だ。今の私はティアーナとして生きているのに。


そして、もっと変なのは……

ここに、ティアーナなんていないはずなのに存在していること。


シュルシュルシュルと水を滑る音がした。


気配でわかる。


白だ。


『……ああ、いた。』


何故か安堵した声。

白が私の浮かんでいる腕に巻き付いてくる。

横目で見ると白が微かに発光している。これは、白が何かしら力を使った時になるやつだ。


『私の一部を残しておきましょう。』


白の一部?


『覚えていますか? 貴女のお好きな白分身一号こと白一(しろいち)くんですよ。』


白一くん……華に常に憑いていた小さい白蛇だった。

白の子どもバージョンみたいで華の密かな萌えだった。


白一くんが白の身体から出て来て私の中に入っていく。


『……そろそろ、覚醒したほうがいいのでしょうね。』


白がスルッと腕から身体を解いて離れていった。


『ふむ、華次第といったところか。』


シュルシュルシュル


白が水の上を私の顔の傍まで滑ってくる。


『華……力を望むのなら全てを思い出しなさい。今の貴女は無防備すぎます。それでは、ティアーナの望みは叶えられないかもしれませんよ。』


力?

全てを思い出す?

ティアーナの望みを叶えられない?


華はティアーナでティアーナは華……ティアーナの望みは華の望み。

どちらも私。

足りないのは記憶だけ……。


なんか……ややこしくない?


そう思った瞬間、ふわっと身体が浮き上がるような感じがして全てが暗転した。







う、う……ん。


私は目を開いた。薄暗くてよく見えない。


夢を見ていた気がするけれど目が覚めた途端に忘れてしまった。


ここはどこ?

私……どうして?


記憶を辿っていく。熊のような男に担がれていて、あ! 途中で首に痛みが。恐らく、手刀でも入れられたのかもしれない。


気を失っている間にここに連れてこられたの?


どうやら私はベッドの上に寝かされているようだ。

しかも、感触がふわふわして柔らかい。とてもさらった者に使うとは思えない立派なものだ。

薄暗さに目が慣れてくるとそれが天蓋付きのベッドだとわかる。

カーテンが下ろしてあり、外から見えなくなっていた。


上半身を起こしてみれば、白い修道服を着せられていた。


え………。


着替えさせられてる!


誰に?

気を失っている間に何もされていないよね?

私、どのくらい気を失っていたの?

どういう状況?

誰かこの状況を説明して!

私は、半ばパニックに陥りかけていた。

読んでくださりありがとうございます(*´▽`)

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