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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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ティアーナの危機と猫ちゃん


王宮での周辺諸国交流パーティーは、多少のトラブルはあったものの大方ユリウス陛下の思惑通りに幕を閉じた。私とユリウス陛下の仲の良さも過大に伝えることができ(主にユリウス陛下の演技力で)、唯一の婚約者候補と知らしめたことで陛下の後ろ盾が成立した。つまり、『私の大事な者に手出しした奴はそれ相応の覚悟をしろ! 』みたいな脅し? 威嚇? 大概の貴族たちは恐れて私に近づこうとか、手をだそうとかしなくなるらしい。そうでなくとも、面倒事は避けたい人が大半だから絶大な効果が期待できるということだ。何はともあれ、初めてのヴィオラス王国公式イベントが終わり……ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、王立ミカエリス学園の特例試験まで後三日と迫っていた。


朝、目が覚めるとホワイトナイト様がベッド脇に立っているの。……怖いです。ぐすん。

追い立てられるように、洗面、身繕い、朝食を済ませると机の前に拘束。

そして始まる……飴と鞭の入り交じる過酷な勉強時間。

これが、あれから毎日続いていた。もはや、ため息しか出ないよ。

初めてベッド脇にホワイトナイト様が立っているのを見たときは、悲鳴をあげそうになった。そのせいで沈黙の魔法をかけられたのは記憶にまだ新しい。公爵家の騎士たちが飛んできちゃうところだった。



さすがに集中力が切れてきた……。

休憩したい!


今しがたまで私に付きっきりだったホワイトナイト様は、セバスが呼びに来てクラウスの所へ行った。何をしているのかは知らないけれどたまに呼び出されているみたい。


サボるなら今だ。

少しくらいなら良いよね。


ペンを休めて窓から見える青い空を眺めた。

今日はとても良い天気だ。雲一つない。


もうずっと私は、室内に閉じ込められていて外には出ていなかった。勉強しなければならないせいだけれど、あの獅子、エンデストリア殿下のせいでもあった。

クラウスは公爵だけあって、この屋敷の守りはかなり厳重だった。それなのに、あの獅子は易々と入ってきたのだ。何かしらの王家に伝わる魔道具を使ったのかもしれないけれど、入って来たことには変わりないので屋敷の警備の見直しを図っているところらしい。『それが終わるまでは外にはでないでくださいね。』と、申しわけなさそうな顔つきのクラウスから優しく言い含められてしまった。あの顔でお願いされたらどんな人でも断れないと思う。


それにしても……。


お外は気持ち良さそうだなあ……。


バルコニーの向こうに見える緑色の木の葉がそよそよと穏やかな風に揺れている。

それは、太陽の光を浴びて輝いてみえた。


綺麗だなあ。


心を奪われて暫く眺めていた。


……ん? ………あれ? どうしたんだろう?


どういうわけか、目蓋が重たくなってきた。


う……うんん。


何だろう……甘い香りがするような? 何の匂い?


「ふ、ふわああ。」


欠伸まで出てしまい、目を擦る。


勉強しないといけないのに……いやに眠い。


………ねむっ。


頭が朦朧としてきた。


お勉強の………途中で……居眠りなんて……。


……だ……………め……な……のに。


目が開けていられなくなる。


ホワ……イトナイト……様が……戻って………きたら………ふわああ。


…………怒られ………………………ちゃ……。


パタン!と、机に突っ伏してしまった。



側に控えていたサリナや扉の前に立っていたユノーが不自然な体制でズルリと床の上に倒れ込み眠ってしまっていたのにも気づかず、真っ暗な闇に落ちていく。


「おい! 夢見香はもういい! 急げ! 」


何者かの押し殺した声が深い眠りの底に落ちる寸前に聞こえたきがした。








ガタガタゴトゴトゴト。


身体が揺れている?

なんでぇ?


まるで馬車にでも乗っているみたいに揺れている。

しかも、揺れがかなり激しい。


ペロッ! ペロッ! ペロペロペロ!


ふ、わあ!


ひゃあ! 顔がくすぐったあい!


ペロペロペロペロ。


生暖かい湿気った感触が、容赦なくペロペロしてくる。

………これ、身に覚えがある。

そうしている間にも、顔がベタベタと濡れてきた。この紛れもない感触。

ああん……いやあ!

べちょべちょになっちゃう! やめて!


「猫ち…………! ! ! 」


私は、パチッと目を開けた。


わあぷっ! ぷっぷっぷ………。


白い物体が口を塞ぐように乗り上げてきた!


おうふ! 苦しい! 重い重い!


手でのけようとして、気づく。


何これ!


私の両手は体の前で縛られていた。

足もだ。動けない!


え? ちょっと待って!

私、どうなっているの?


クラウスの屋敷にいたはずなのに、どうしてこんなことになっているの!


白い物体は私が静かになったせいか、ゆっくり顔から身を退けた。


ああ、やっぱり猫ちゃんだった!


猫ちゃんの青みがかった鮮やかな緑色の綺麗な瞳に私の顔が映っていた。

猫ちゃんは頭をグリグリと私の身体に押し付けてから顔を上げると、心配そうにこちらを見てきた。


一体何が起こっているのだろう?

私は身動きできないように手足を縛られているし。

今、転がっているところは馬車の床の上だし。

馬車は相変わらず酷い揺れで、何かから逃げているようだ。


え? と、いうことは………。


私、さらわれているの?


嘘………。


どうしよう。いつ さらわれたの?勉強に疲れて眠たくなったことは覚えているけれど、部屋の中だったよ?

……え? それって……部屋の中でさらわれちゃったってこと? でも、どうやって? サリナもユノーもいたよ? 皆がいるところで私だけさらって来れる? だけど、そうとしか考えられない。思い返してみると、あんなに急激に眠たくなってしまったのはおかしすぎる。何らかの方法で眠らされたのかもしれない。


あろうことか、私は、真っ昼間の公爵家の部屋からさらわれてしまったようだった。



猫ちゃんはどうしてここにいるの?

拘束されていないところを見ると、私みたいにさらわれたわけではなさそう。もしかして付いてきてくれたの?


いつの間にか移動して、猫ちゃんは私の両足を縛っている縄を切ろうとでもするかのように、ガリガリ噛み始めていた。


読んでくださりありがとうございます(*´▽`)

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