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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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レンブラント公爵令嬢襲来(続き)


「不躾ではありませんか? レンブラント公爵令嬢! 」


ホワイトナイト様が背筋が凍るような冷たい声で咎めるように言った。


「あら! 」


レンブラント公爵令嬢は初めてホワイトナイト様の顔が目に入ったという様子で、まじまじと顔を見つめた。


「貴方、綺麗な顔をしているわね。私の従者にしてあげてもよくてよ? 」


は?

何を言い出すの?

この人、ホワイトナイト様に無茶苦茶なことを言い出した。

従者って何?

メイヴェ王国最強の魔導師を相手取って失礼すぎない?

明らかにレンブラント公爵令嬢は私たちを見下していた。


メイヴェ王国よりもヴィオラス王国の方が大国だと思っているのだろう。


確かにヴィオラス王国の方が国土的には広いが、メイヴェ王国は、どの国にも先駆けた技術力に優れ、戦力が飛び抜けて高い。というのも、魔力のある人間が他の国に比べてどういうわけか多く生まれるからだ。魔力のある者は世界的に少ないし、年々減ってきている。それでもメイヴェ王国においては少ないなりにちゃんと生まれてくる。戦いにおいて、剣だけで戦うのと魔法も交えて戦うのとではどちが有利なのかということだ。


だから、侮られる謂れは全く無い。


「そんなちんくしゃの側にいるよりも、私に使えた方が良いに決まっているじゃないの。そうでしょう? 」


ホワイトナイト様をうっとりと見つめレンブラント公爵令嬢は、婀娜っぽく身体をくねらせた。

それに嫌悪を覚える。


……気持ち悪い。


「死んでも嫌です。」


そう言って、ホワイトナイト様は、恐ろしいほど冷ややかで美しい笑みを浮かべた。


それは、冴え冴えとした冬の月のように美しいのに……漆黒の闇から生まれた魔王のようだった。

思わず息をのんだ。……恐怖で身がすくむ。


怖い!

美人が怒るとすごい迫力だ。


「嫌ですって? 身のほどをしりなさい! 私は公爵令嬢なのよ! 」


こんなに怖いのに、レンブラント公爵令嬢は負けてはいなかった。

つんと顔を上げてホワイトナイト様を睨みつけている。



カツカツカツ!と足音がして、


「キャロライン様!一人でお出にならないでくださいとあれ程申しましたのに! 」


部屋の入り口から騎士服に身を包んだ男が必死の形相で駆け込んできた。


クルクルとした癖毛のある金髪の可愛らしさの残る童顔の男だ。

彼はキーッ!と敵意を含んだ眼差しをこちらに向けた。


「キャロライン様、ご無事ですか? おのれ! キャロライン様に無礼を働いたのではなかろうな! 」


………あ、駄目なやつだ。

あの主人にこの騎士って感じだ。

主従は似るのね……と、ちょっと現実逃避したくなってくる。

どんどん事態が悪くなってる?

無礼を働かれているのはこちらなんですけど?

さっきから言いがかりをつけられて困っているんですけど?


これは、ユリウス陛下のせいよね?

ちょっと想定外とか言わせないんだから。

ああ、良くみたらレンブラント公爵令嬢のドレスはユリウス陛下の瞳の色だ。

すごいなあ。婚約者候補でもないのに着ちゃうんだ。というより、婚約者候補は自分だと思っていたのよね? 話しぶりからすると。なかなか常識も通じないようだし、お付きの騎士様も諌めるどころか彼女と同じように常識に疎いようだし。どうしたものか……。


あああ! 面倒くさい!


もう、クラウスの屋敷に帰っちゃおうかな?


本気でそう考えた時……


「これは、何ごとかな? 」


ユリウス陛下が会談を終えて戻ってきた。


「まあ! ユリウス陛下! お待ちしておりましたのよ! 」


レンブラント公爵令嬢が目を輝かせて満面の笑みを浮かべた。


「私、この者に、ユリウス陛下とは不釣り合いだと教えて差し上げていましたの。陛下は私をお選びになるはずですもの。きっとこの者に誑かされておしまいになったのですね! 」


ユリウス陛下の顔が険しくなっていく。


「ユリウス陛下は私があの者からお救いいたしますわ! 」


部屋の温度が氷点下まで下がったような気がした。

ユリウス陛下から凄まじい怒気を感じる。


「キャロライン・レンブラント公爵令嬢。」


地を這うような低い声が響く。


「誰がユリウスと呼ぶことを許した? 」


鋭い目を細めて威圧し、レンブラント公爵令嬢を竦み上がらせた。


「す、すみません。陛下! 」


「何か誤解をしているようだが。 」


ツカツカとユリウス陛下は私に歩み寄ると、


えええっ!


私を抱き上げた。


何でぇ!!!


腕に乗せるように縦抱きにすると、愛しい者であるかのように私を見つめた。

誠に素晴らしい演技力だ。


「偽りなく、彼女だけが私の婚約者候補だ! 」


「そんな……。」


レンブラント公爵令嬢はよろめき、騎士様に支えられた。


「わかったのならば、退出せよ。」




ユリウス陛下に追い出された形で漸く嵐が去った。


やれやれだ。


「ユリウス陛下! こういう争いは起きないと仰いませんでしたっけ?」


私がチクリと言うと、ユリウス陛下はクククと喉で笑った。


「女というものは恐ろしいな。」


「はぐらかそうとしていますね? それより、下ろしてください。」


ほいほいレデイを抱き上げないで欲しい!


「ユリウス陛下! ティアーナ様は私にお渡しください。私が抱っこして帰ります。」


どさくさに紛れてホワイトナイト様が私を抱っこしようとしている!

断固拒否だ!

このところ何かにつけて抱っこされている気がする。


私は子どもではないんですからね!


心の中で抗議した。

読んでくださりありがとうございますヾ(。・ω・)ノ

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