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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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夢の続きは


……ポチャン。


水滴の落ちる音がする。

足元をみると驚いたことに水面を踏んでいた。

そこから……広がっていくように水の波紋が円を重ねていく。

ずっと奥底まで見えそうなくらい水が澄んでいた。

前を見ると、向こうに鳥居がみえた。

引き寄せられるように歩きだす。


『ここを知っている。』


この風景も、水の上を歩く感触も。

少しずつ記憶の欠片が集まってくるような感覚。


私は華だ。


ここは……。


スルスルスル……と足首に何かが纏わりついてきた。

ひんやりして目を落とすと、大きな白い蛇がいた。

私の足と戯れながらついてくる。


『白へびちゃん!』


『そのネーミングセンスはなんとかなりませんか?

貴女は(しろ)と私を呼んでいたでしょう? 』


白は呆れたように言った。


『つ、ふふふっ。』


白は私にだけ見える神様の眷属だった。

最初に見えたのはいつだろう? 物心ついた時には側にいたよね。


『そうだった! 白だ! 白が白へびちゃんは嫌だって言うからそう名付けたんだった! 』


一つずつ思い出す。


ん……あれ?


重大な何かが頭をかすめた。


『白……大変!

私、死んでしまったんじゃない? 』


白はスルスルと私の前に回り込み鎌首をもたげてこちらを向いた。


じっと私を見つめる。


『貴女の名前は? 』


……どうして名前?


『……華。』


………ちがう。華じゃない!


私は………。







頬に生暖かい湿ったものが触れてくるのを感じた。


何?くすぐったいよ。


ふにゃって顔が崩れる。

目をそおっと開けると、目の前いっぱい猫ちゃんの顔だった。


ふわう!


びっくりしている傍からペロペロ顔を舐められる。


猫ちゃん、なんて可愛いの!

朝からこんなに可愛くていいの?

いつもはつんつんしているくせに、今日はどうしたの? うふふふ。やっと私を構ってくれる気になったのかな? 猫ちゃん、可愛すぎ!

ああ、猫ちゃんのペロペロで目が覚めるなんて、至福すぎるでしょう。


うっとりしてしまう。

私の顔は、にやけすぎて残念なことになってしまった。それでも、

更なる至福を求めて……

猫ちゃんをむぎゅむぎゅしようと手を伸ばしたとたん、


パシッ!


私の顔面に猫ちゃんは尻尾パンチをくりだした。


え? あれ?


猫ちゃんは感心を無くしたようにプィっと身を翻すと、ベッドから飛び降りて非情にも行ってしまったのだ。


私の至福が……。


ふて寝しようかなあ。

夜中起きちゃったし……

…………?


ガバッ!と身体を起こす。


まって! ディーン様に抱っこされてベッドに寝かされたのは夢?


うわ! 夢じゃない!


自分の身体のあった場所に金糸の縫いとりのある黒いマントが広がって皺になっていた。

身体に巻き付けたまま寝かされたのだろう。


これどうしよう……。

サリナにお願いしたら綺麗にしてくれるかな?


私ったらベッドに横になってからの記憶がない。

きっとすぐに寝てしまったのだ。


恥ずかしすぎる。


子どもみたいに縦抱き抱っこだったし、ディーン様とは会って間もないのに。そういえば、頭も撫でられた! まさかの子ども扱い? それに……


怒られちゃった。


自嘲する。

ディーン様の言葉は心に響いたし、私と真剣に向き合ってくれたのが思いの外嬉しかった。


あ………。

ディーン様、結構好きかも。


不意に、思って……呆気にとられてしまった。


どうして?

ああ、そうか。アスラン様に似ているからだ。

思った以上に、アスラン様と重ねて見てしまったのかもしれない。

気を付けないと。


ん?

目の端に、白くて長いものが見えた気がして動きを止める。


……白?


ポツンと頭の中に名前が浮かんだ。


白? って何?


戸惑う。何か思い出せそうな気がするのに、思い出せない。

すごく大事なことを忘れているような気がするのに。

むむむむ!

眉を寄せて額に皺まで寄せてううんううんと考え込む。

かなり変顔だ。


「大丈夫ですか? お嬢様。便秘でございますか? 」


サリナが残念な生き物でも見るかのように声をかけてくれた。


いつの間に来たのだろう? 全然気がつかなかった!


「わあ! やめて! サリナ。 そんな筈ないじゃないの。考え事をしていたのよ。」


「お嬢様……

公爵家の令嬢があんなお顔をするのはどうかと思いますよ。」


深く嘆息した。

そして、目敏くも私のお尻の下に敷かれている黒いマントを見つけた。


「それは? お嬢様! なんという物を敷いているんですか! 」


うへっ!


仕方ないじゃないの。これは不可抗力なの!


「ねぇ、サリナ。これ綺麗にできる?」


上目遣いに目を潤ませて可愛く?お願いすると、

サリナはギョッとしたように一歩後退ると、やれやれといったふうに首を振った。


「お嬢様、誰からそのようなお願いの仕方を教えて貰ったのですか? サリナだから良いですが、うっかり殿方にでもされたら困ったことになりますよ! 」


サリナから叱られてしまった。


けれど、数分後、


「もう、仕方がないですね。 サリナにお任せください。新品同様に綺麗にしてご覧に入れましょう。」


狙い通り……

サリナは胸を張って言ってくれたのだった。


読んでくださりありがとうございます(*´▽`)

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