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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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ユリウス陛下と対面する


身なりを急いで整えると、ホワイトナイト様のエスコートでクラウスの執務室へ向かった。

執務室の前に見慣れない騎士が二人いてドアを守っていた。白銀の騎士服に濃紺のマントを纏い引き締まった表情で立っている。見るからに、鍛え上げられた体つきをしていて強そう。

やはり、王様が中にいるらしい。この騎士たちは王様の近衛騎士か何かだと思う。


騎士の1人がドアを開けてくれた。


果たしてそこに、

濃紺の髪が印象的な精悍な顔立ちの男がクラウスの隣に立っていた。立派な身なりをしていて風格があり一目で高貴な身分だとわかる。


「紹介しましょう。こちらは、我が主君、ユリウス・ソルティオ・ヴィオニーヴェ国王陛下です。」


クラウスが口許を綻ばせる。

王様のことをとても敬愛しているようだ。


「お初にお目にかかります。私はメイヴェ王国ヴァルシード公爵が次女ティアーナ・ヴァルシードでございます。」


メイヴェ王国の恥とならぬよう細心の注意を払って上品で美しいカーテシーをした。


「お初にお目にかかります。私は、メイヴェ王国黒翼騎士団特務隊隊長アレクセイ・ホワイトナイトでございます。お見知りおきを。」


隣でホワイトナイトさまがふわりと流れるように優雅に膝をおり頭を下げるのが見える。


すると王様は頷くと


「ヴァルシード公爵令嬢、私のことはユリウスと呼べ。私も貴女のことはティアーナと呼ぶ。」


はい?

畏れ多くも隣国の国王陛下の御名を初対面で呼ぶことを許されてしまった。

ああ、厳密には初対面ではないけれど、私からしたら初対面だ。


「ホワイトナイト卿にもユリウスと呼ぶことを許そう。」


なんともあっさりとしたお方のようだ。

王様のことは本当に畏れ多いけれどユリウス陛下と呼ぶことにした。


あの時のお礼を言いたい。


「では、私のことはアレクセイとお呼びください。我が女神ティアーナ様に害をなされぬ限り、適時力をおかししましょう。」


気のせいでなければ、ホワイトナイト様がすごいことを言っている。

これは不敬ではないのかな?

心配して周囲をうかがえば、クラウスも別段変わりなく普通にしている。


「それは、助かるな。アレクセイ、貴方の強さと実力は聞き及んでいる。敵となれば厄介だが、見方となれば強大な力を持つのと同等になる。よろしく頼む。」


ホワイトナイト様を見つめるユリウス陛下の透き通るような水色の瞳は強い意志が宿っているかのようだった。

若くして国王になっただけある。纏う空気がもう為政者だ。

それでいて清廉さを感じる。


こんなすごいお方に助けて貰ったなんて。

あああ。無様にも気を失ってしまったところを見られてしまったのは恥ずかしすぎるけれど、勇気を振り絞る。


「あの、ユリウス陛下、メイヴェ王宮での夜会の折りはお助けいただきありがとうございました。お礼が遅くなり申しわけありません。」


漸く、あの時のお礼を言うことができた。


「ああ、気にすることはない。貴女のせいではないのだから。むしろ、よく耐えたと言うべきか。貴女の助けに少しでもなれたのならば良かったと思う。」


ユリウス陛下はどこまでも清々しい。


「ティアーナ、今日私がここへ来たのは、貴女の後ろ盾が私であることを公的に知らしめる前振りなのだ。今度貴女に来て貰う交流パーティ以前から貴女と親交を深めていたということにしたい。貴女は何者かに狙われている可能性がある。しかも襲われたのは我が国でだ。それでなくとも、貴女はメイヴェ王国の公爵令嬢であり、お父君は王国の重鎮の一人。その上、元皇太子殿下の婚約者だ。我が国でそれこそ害されるなど許しがたいことだ。」


私が襲撃されたことがこんなふうに影響を与えていたなんて。

皆が大騒ぎしすぎていると思っていたけれど、ユリウス陛下の話を聞くと、そうなのかと、納得せざるおえない。

国単位で考えた方がすっきりするのかな。

私は皇太子殿下の元婚約者ってだけで、瑕疵つきの公爵令嬢であっても、身分は高いことに変わりはないから、この国で何かあったら大変ということ。あ、ということは、この国に来たことで迷惑をかけていることにならない?


「それでだな。貴女には私の婚約者候補になってほしい。勿論、表向きでかまわないし、帰国するときには候補から外そう。」


へ?

聞き間違いかと思って、不敬ながらまじまじとユリウス陛下を見つめ、それから、ホワイトナイト様を仰ぎ見た。


「ユリウス陛下、ティアーナ様はメイヴェ国王の命により、国王の許可のない婚約、婚姻を禁止されています。」


ホワイトナイト様は淡々と述べた。

表情が全て消えてしまっている。

白い美しい顔が、無表情だととても冷たく見える。


「それならば、抵触しないな。」


は?

ユリウス陛下はホワイトナイト様の表情には全く構わずさらりと言う。


「あくまでも候補だからな。メイヴェ国王も文句は言うまい。それにだ、アレクセイ。婚約者のいないティアーナを学園に入れるのか?今度のパーティにも来るが、エンデ王国の第一王子もいるぞ。彼の国の王家は一夫多妻制だが、まだ王子たちには婚約者さえいない。あまりに、無防備すぎるとは思わないか?

彼の国だけではない。周辺諸国の王族も貴族もいる。ティアーナは身分だけでも目をつけられる上にその容姿だ。猛獣の檻の中に入れるようなものだ。

だから、私にしておけ。私ならば安全だ。」


「ユリウス陛下、貴方が猛獣になられることはありませんか? 」


ホワイトナイト様は射ぬくような眼差しをユリウス陛下へ向けた。


読んでくださりありがとうございますヾ(。・ω・)ノ

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