カイルとユノーの受難
だいぶ間があいてしまいました。
ごめんなさい。
え、え、えっ? ちょっと待って?
メイヴェ王国黒翼騎士団特務隊隊長としてって……
「ホワイトナイト様! カイルとユノーは、我がヴァルシード公爵家の騎士です。ですから、それはおかしくないですか?」
二人はメイヴェ王国騎士団の指揮下ではないよね?
「ヴァルシード公爵家の騎士は、確かにオルフェス・ヴァルシード公爵の指揮下にありますね。ですが、ヴァルシード公爵はメイヴェ王国騎士団総括室長官でいらっしゃいますから、メイヴェ王国黒翼騎士団特務隊隊長の私とカイル、ユノーは同じ指揮下。ならば、おかしくはないでしょう?」
それって、
……何か漕ぎ着けっぽい。
ジト目でホワイトナイトさまを見てしまう。
「カイル、ユノー、私に何か異論がありますか?」
ホワイトナイト様がカイルとユノーに目をやると、二人は胸に手をあて頭を下げた。
「ご、ございません!」
うん、ホワイトナイト様、それ、二人に目で圧をかけているよね? しかも、綺麗に微笑みながら。うん、微笑みなのにゾクッとしたし。
「カイル! ユノー!」
二人に若干強く呼び掛けたホワイトナイト様の顔からスッと表情が消える。
「二人には罰として、ティアの護衛を降りて貰います!」
えええ!
そんな! カイルとユノーを私の護衛から外しちゃうの?
……嫌だ。カイルとユノーは、私が隣国へこの国へ行くことを決めた時にお父様が私のために選んで付けてくれた護衛で……国をでるときから此までずっと私を護ってくれたのに。
カイルとユノーは頭を下げたまま、意気消沈したように目をぎゅっと閉じた。
「嫌です! ホワイトナイト様! カイルとユノーは私の大事な護衛です!」
思わず声をあげた私にホワイトナイト様は咎めるように目を細めた。
そして、冷ややかな笑みを浮かべる。
……うっ。何?
「ティア、罰を望んだのは彼らですよ?」
え?
望んだ? 二人から謝罪されたけれど、罰して欲しいなんて一言も言っていなかったよね? ホワイトナイト様がそう決めつけて言っているだけで。
それに、私を護れなかったというのなら……ホワイトナイト様もだよ? ディーン様と一緒に私をメアから救ってくれたけれど、メアの領域に私が引きずり込まれるのは防げなかった。公爵家の結界も破られたんだよね? ……だから、本当に今回はだれも悪くない。相手が悪すぎただけ。なのに、どうしてカイルとユノーが罰をうけないといけないの?
「ティアは彼らの……ヴァルシード公爵から貴女の護衛を拝命した騎士の矜持を無下にされると?」
騎士の矜持ぃ?
私からしたら、何それ?って感じだよ。
如何にもそれらしいことをホワイトナイト様は言っているけれど、ホワイトナイト様、先ほど、『ちょうど、駒が足りない』とか言っていませんでした? 悪い顔をして。
私が胡散臭そうにじっとホワイトナイト様を見つめていると、やれやれとホワイトナイト様は肩を竦めた。
「ともかく、これは決定事項です」
酷い!
ホワイトナイト様の横暴!
カイルとユノーが罰を受けるいわれはないのに。カイルとユノーはメイヴェ王国最強クラスの騎士。それでも敵わなかったのはメアが人外だったから。何度思い返しても……突然破れたであろう公爵家に施されていた結界。刹那、引き込まれたメアの支配する領域。無理だよ。誰にも阻めない。
むぅぅぅぅ。
なのに、問答無用で罰を与えるなんて!
騎士の矜持と言われようが更に尤もらしいことを言われようが、ホワイトナイト様に断固反対っ!
「ティア、決定事項です。カイル、ユノーも良いですね」
目で抗議する私をけんもほろろにホワイトナイト様は突き放した。
……酷い。
「さて、ティアは目が覚めたばかりでまだ安静が必要です。ティアが休めませんので、皆さんは持ち場に戻ってください」
ホワイトナイト様の号令で皆は部屋からでていった。
そうして、部屋にはサリナと猫ちゃんとホワイトナイト様だけになった。
猫ちゃん……ヒューベルトくんはいつの間にやら猫の姿になっていた。
「おや? ベルくんは猫化したらティアの傍に居られるとでも?」
ビクッとヒューベルトくんは白い体を震わせた。
「まあ、いいでしょう。その代わりティアが安静を守るように見張っていてください」
ヒューベルトくんはホワイトナイト様に頷いてピョンとソファーの上にとび乗るとそこで丸くなった。
「サリナさん、私は所用を片付けて参りますのでティアを見張っていてください」
……言い方!
見張らなくても、ちゃんと安静にしますよーだ!
だって、信じられないくらい身体に力がはいらない。
今だってこうして身体を起こしているのがやっとだ。
……うーん。三日も眠っていたのなら仕方がないのかなあ。
私って、こんなに体力なかった?
……ああ、うっかりしていたけれど、そういえば、私、令嬢だった。
私はパタリと身体を倒して横になった。
前世の記憶が甦ってから、華の記憶のせいでティアーナの身体は勘違いしてしまう。令嬢ではない一般人としての身体能力があると。だから思う。
……体力欲しいなあ。筋肉いるよねえ?
サリナが聞いたら卒倒しそうなことを考えながら私は目を閉じた。
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執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。




