心配をかけてごめんね
更新が遅くてごめんなさい。
拙作を読んでくださる
皆さまに感謝しています。
ホワイトナイト様が部屋の結界を解いた途端、扉が開いて、サリナを筆頭に皆が部屋へなだれ込んで来た。
え? え? えええええ!
ベッドの上に上体を起こした私は……
ふぎゅぎゅっ!
勢い良く白い塊に押し潰されるように後ろへ倒れた。
「おねえさま! ティアおねえさま!」
ヒュ、ヒューベルトくん?
「ティアーナお嬢様!」
ヒューベルトくんの焦燥で震える様な声とサリナの思い詰めた様な涙声で、私は思わず息を詰めた。
これって……メチャクチャ心配をかけちゃった?
ヒューベルトくんの重みを胸の上にずっしりと感じる。初めてヒューベルトくんがヒト型になったときのようにプルプルとその身体は震えていて、胸がジーンとしてしまった。
……心配をかけてごめんね。
心からそう思った。
……んだけれど、
ヒューベルトくん! ごめんなさーい!
申しわけないと思っているの! 本当に、真摯に……だけど、ヒューベルトくんの重みで圧迫されている胸が物理的に苦しいの! 誰か助けて? ずっと寝ていたらしい私の体力は思ったよりも落ちていて、押し退けられない。うううん、それ以前に……どうしよう? こんなふうに私にしがみついてくれているヒューベルトくんを引き離せないよ。
これ、また、私、意識を失っちゃうんじゃない?
まって? まって? そしたら、また皆に心配をかけちゃう?
……と、
「こら! ばか猫!」
ため息まじりの暴言が聞こえた。
ホワイトナイト様?
ヒューベルトくんに何てことを言うの!
……それに、不敬だし。
猫の姿だけれど、ヒューベルトは一国の王子様なんだよ? ばか猫なんて言っちゃ駄目。
意識が途切れ途切れなりながら心のなかで文句を言っていると、不意に私の胸の上から重みが消えて、身体が楽になった。
「ベルくん! 貴方、ティアを殺す気ですか? サリナさんも落ち着いてください」
「だ、だって! ティアおねえさまがっ! 僕は心配で……心配でたまらな……くっ」
何故か部屋の端で半分だけ人に戻ったヒューベルトくんがシュンと耳を垂らして項垂れていた。
私の閉じかけた目蓋の隙間に、ホワイトナイト様がヒューベルトくんを私の上から剥がして投げ飛ばしたのが見えたのは気のせいではなかったのか……。
ちょっと、乱暴すぎない? しかも、ホワイトナイト様、魔法を使わず素手でですか?
「……申しわけありません」
うっ、サリナもシュンとしている?
見れば、サリナまで項垂れているではないか。
「まあさ、お嬢ちゃんのことを皆、心配してたんだ。許してやってよ」
側から聞こえてきた声に驚く。
あれ? ユランさんまで部屋へなだれ込んできた塊の中にいたの?
「おい! こら! ユラン! 不敬だぞ! 言葉遣いを改めろ!」
と……これはカイルだ。
そして、スッとカイルの横にユノーが並びでた。
え? 何?
二人がとても真面目な顔をしていて驚愕した私は、側にいたサリナに手伝ってもらって半身を起こす。
すると、カイルとユノーは揃って跪くと胸に手をあて頭を垂れた。
「「ティアーナ様、お護りできず申しわけございませんでした」」
ええっ? 何で? どうして謝るの?
そんな……あれは不可抗力でしょう?
だいたい、ホワイトナイト様でも防なかったのに……誰であっても無理よ。カイルやユノーのせいではないのよ?
「そんな! カイル、ユノー、謝らないで。今回のことは誰にも予測できなかったと思います。……私、一瞬で攫われてしまいましたし。相手は人外。どうすることもできなかったと思います。……カイルやユノーにはいつも感謝しているの。だから、謝らないで」
カイルとユノーはメイヴェ王国を出たときからずっと私を護衛してくれている。表立ってはホワイトナイト様が私の傍にいるけれど、カイルとユノーは見えない時でも常に私の周囲に目を光らせ警護してくれているのを知っている。私が、メアの空間に攫われたときもいつも通り部屋の扉の前で私を警護してくれていたはずだ。
……まさかあんな風に攫われるなんて誰も思わないよ。メアは鬼……この世界では悪魔? 人外だもの。人の襲撃とはまるで違った。公爵家の結界を易々と壊して、私をメアの空間へあっという間に引きずり込んだのだから。
頭を垂れたままのカイルとユノー。
困ったなあ。カイルとユノーはすごく責任を感じているみたい。二人は悪くないのに……。
どう言葉をかければ良いのか私が逡巡していると少し苛立たしげな声が落ちてきた。
「カイル、ユノー、反省するのは大いに結構ですが、ティアを困らせていますよ? そのくらいにしておきなさい」
ホワイトナイト様の言葉にハッとしたようにカイルとユノーは顔を上げた。
「……っ、申しわけございません」
「重ね重ね、申し訳なく……」
私は、カイルとユノーの沈んだ表情に胸が詰まる。
本当に二人のせいではないのに……。
オネエ司教率いる盲信教団に攫われてから大して日も経っていないというのに……喉元過ぎれば何とやらで油断していた私のせいだ。
「……やれやれ、カイルとユノーはティアに罰して欲しいようですね?」
えっ? 何で?
罰して……って何?
ホワイトナイト様、いきなり何を言い出すの?
ハッとして仰ぎ見た私に、ホワイトナイト様が、それはそれは美しく微笑んだ。
うぐっ!
目が笑っていないんですけど?
しかも、ホワイトナイト様、悪い顔をしていますよ?
待って? これは、何か嫌な予感がする。
背筋がゾワゾワしてくる。
「ちょうど、駒が足りないと思っていたのですよ。何かと事が重なりましたからね。いえ、私も多忙すぎて、実は過労死寸前なのですよ」
ホワイトナイト様、いったい何を?
「ティアは罰するのは苦手でしょうから、代わりに私がメイヴェ王国黒翼騎士団特務隊隊長として罰を与えることにしましょう」
えっ?
読んでくださりありがとうございます(*´▽`)
いいね、ブックマーク、評価をありがとうございます。
執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。




