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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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夢が覚めても


 フワッとホワイトナイト様に巻き付かれたまま白い光に包まれた。


「全身全霊をかけて貴女を離しませんから」


 ふえっ? ………ホワイトナイト様、それは重いです。

 ホワイトナイト様から思いも寄らない強い気迫を感じて、私はたじろいだ。

 これ、もの凄くどころかもっと……飛んでもないくらい心配させちゃったの?


「さあ、戻りますよ」


 ホワイトナイト様の言葉と共に、すーっと身体が空気に溶けるような感じがして、ホワイトナイト様共々何かに引き寄せられるように落ちていった。






 そして、私は目を覚ました。


「……戻ったの?」


 見慣れた天井がみえる。


 ……ん? と? あれ?


 何か違和感が……


 ウエストが重い? ……というか、からだに何か巻き付いているような?


「……ああ、良かった。目が覚めたんだね?」


 アスラン様?


 ……あ、きっとこれも夢なのね? だって、アスラン様の声が聞こえる。


 しかも、ベッドの上だし。アスラン様どころか男性の声が聞こえるはずがない。本当に聞こえたとしたら大問題だ。


「貴方は、3日間も眠っていた。ティア、とても心配した」


 ……大問題なのに、やっぱり聞こえる。

 恐る恐る声のするほうへ顔を向けると、赤い瞳が私を見つめていた。


 うわ! ディーン様っ! 何でえ?

 近い! 近い! 近い!

 

 何故か、ディーンさまが、私の隣で横になっていて、その腕ががっしり私の身体に巻き付いていた。

 

 一気に心臓がバグバグしてくる。


 何で? 何で私、ディーン様と同じベッドで寝ているの?


 思わずキョロキョロしてしまう。


 えっ? えっ? えっっ?


 その上、まさか、室内に二人きりなの?


 嘘お!


 頭が混乱して挙動不審になりだした私。


 どうしてこんな状況に? しかも、ディーン様とこんなに密着しているし! 心なしか……アスラン様と同じディーン様の良い匂いがする。それは、するよね! こんなに近いんだから! うえーん! どうしよう! これって未婚の淑女としてどうなの? だめよね? 不埒よね? イケナイことだよね?

 

「ティア、落ち着いて? 大丈夫だから」


 ディーン様が私の背中をトントンとあやすように叩いた。


 ふ……ふえっ!


 更に身体が密着しちゃったんですけど! もっと大丈夫じゃなくなってる! 


 私は、ディーン様を手で押しやって距離を取ろうとした。


「あ、ティアまだ駄目だよ」


 ディーン様はそれを阻止する。


 なんでえ?

 私は、頭が混乱しすぎてもう涙目だ。


「ティア、良いかい? まず、この部屋には結界が張ってある。解くまでは誰も入ってこれない。次に、私が同じベッドでティアをこうして掴まえているのは、貴女の身体を護るためだ。貴女の魂に引き寄せられて身体が移動する可能性があった。アレクは無事にティアの魂を見つけてここに戻せたみたいだけれど、アレクが戻るまではこのままでいたい」


 んえ?


 ディーン様は、理路整然と説明を始めた。


 ディーン様の穏やかな声と、凪いだ瞳に、私の心が鎮められていく。


 ふ、不埒なの.……私だった? ディーン様の善意を不埒と思った私を許して?


 私は、余りにも恥ずかしくて、ちょっと泣きたくなった。


 でもね、そうは言っても……ディーン様、近すぎだよ。


「……貴女の魂が行方不明になったのは私たちにとって予想だにしない出来事だったんだよ」


 だけど、ディーン様の憂いを含んだ真剣な眼差しに何も言えなくなる。


「ティア……私もアレクも血眼になって探した。鬼との戦いの後で貴女は弱っていたのに……貴女を見失うなんてあってはならないことだった。私たちの落ち度だ」


 ……そんな。

 だって、あれは仕方がないよ。ディーン様やホワイトナイト様のせいではないのに。

 ……だって

 ……だって、あれは


「男神セレネ様のせいなので、ディーン様やホワイトナイト様は悪くないです!」


 私は自分たちを責めてしまっているディーン様に異を唱えた。


「男神? セレネ?」


 突然の意図しない私の発言にディーン様は目を瞬かせた。

 

 だよね?

 そんな表情になっちゃうよね?


 そして、私は黄金色のデプッとした鳥さんの話をディーン様にしたの。


「……そうか」


 私の話を聞いたディーン様は地を這うような低い声で忌々しげに言った。


「あいつの横やりのせいだったのか。この借りはいずれ返そう」


 あ? へ?

 ディーン様! 話聞いていた? あいつ……って女神セレネ様のことだよね? 男神だけど。

 セレネ様は神様なんだよ? その神様にあいつ? 罰当たりじゃないの? そのうえ、どうして報復宣言みたいなのをしているの?


「良いですね。私も賛成です」


 空間にキラキラ輝く魔方陣か現れて、そこからホワイトナイト様がニコニコしながら現れた。


「あの方、ティアに祝福などというマーキングをしているのですよ! 許しがたいです! 倍にして借りは返してやります!」


 ちょっ、ちょ……

 あの方って一応神様だから!

 一応ってつけている私も大概だけれど。神様に報復とか物騒すぎる。

 

 それにしても、ディーン様とホワイトナイト様……仲が良すぎない? というか、息が合いすぎていない?

 メイヴェ王国双龍騎士とメイヴェ王国黒翼騎士団特務隊隊長だからかな? 同国の騎士だし、上司、部下の関係らしいし、もしかすると私と知り合う前はコンビを組んで行動していたのかな? 


「ところで、ティア?」


 何故か、ホワイトナイト様がいつにも増して美しい笑顔で迫ってくる。

 何だか、ものすごく嫌な予感がする。

 無性にホワイトナイト様から逃げ出したい。逃げ出さなくとも距離を取りたいのに、未だに私の腰にはディーン様の腕が巻き付いている。

 

 ……逃げられない。ひええ! ホワイトナイト様が怖いんですけれど!


 鼻先がくっつきそうなところまで、ホワイトナイト様の顔が近づく。


 近い! ホワイトナイト様まで近い!


「……どうして、メアの穢れを結界で防がなかったのですか? ねえ? ティア?」


 へ? えええっ?

 

 ホワイトナイト様の笑顔が怖い!

 


 読んでくださりありがとうございます(*´▽`)


 いいね、ブックマーク、評価をありがとうございます。


 執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。

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