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愛する人は運命の番と出会ってしまったけど私は諦めきれないので足掻いてみようと思います。  作者: 紫水晶猫


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女神様

 


 な、何が?

 

 この暴力的な光で、何が起こっているのか確かめたいのに目が開けられない。


 こんなことってある?

 ここ……神域だよね? 

 

『あら? 熱量が多すぎたみたい? 私の気持ちだと思って、ちょっと多めの祝福受け取ってちょうだい』


 透明度の高い低音の声……


 直接、頭の中に語りかけられているような不思議な感覚がした。


 さっきより目蓋で感じる光が弱まったような気がして……私は、そっと目を開いた。


 ふええっ?


 黄金の……目が覚めるような黄金色の羽毛でモフッとした……いやいや、デプッとした? 直視するには耐え難い光を振り撒きながら、どうしてキメ顔なの? ……の鳥? 鳥よね? 鳥さんが圧倒的存在感で私の目の前に鎮座していた。


 な、何なの? コレ?


 眩しいのに、奇妙奇天烈すぎて目が離せない。

 

『良い機会だからお邪魔しちゃったわ。初めましてかしら? 私、女神セレネ様って呼ばれているの。よろしくねぇ。ああ、そうだ。私、女神って呼ばれているけど男神なのよね。困っちゃうわよね? 訂正を神託でするのもどうかと思って勘違いさせちゃったままなのよぉ』


 いやいや、テヘペロって顔しないで!

 突っ込みどころ満載すぎて私の情報処理が追い付かない。……女神じゃなくて男神? 目の前にいるの……デプッとした鳥さんなんですけど? 


 そして、その話し方は……まさかのオネエ?

 キャラが盲信教団の某司教と被ってるよぉ。


 このシュールな状況は何?

 

 ……っ、と、ちょっと待って! 男神セレネ様、祝福がどうとか言っていなかった? 祝福は駄目なやつだと思う。それこそ、女神さまの祝福持ちといえば聖女の定番設定。


「祝福、お返ししてもいいですか?」


 すぐさま私は、男神セレネ様に言い放った。


『え?』


「ハッ!」


 暫しお互いに見つめあい、何となく気まずい時が流れる。


 デプッとした鳥さんにしか見えないとはいえ、神様が好意でくれた祝福を言外に要らないというのは不味かったかな……?


『私と会って……最初の言葉がそれなのぉ?』


 あ、やっぱり神様に対して不敬だったよね? でも、祝福なんて貰ったらリュミエール殿下からまた面倒なことを言われそうなのよね。

 リュミエール殿下って、女神様に関して男神様だけど変に鋭そうだし。男神様に関するものは持っていたくないな。


『……無理よ。私の祝福は返却できないの。だから、有り難く貰ってちょうだい』


 返却不可?

 えええ! 

 しかも男神セレネ様……ちょっと多めの祝福とか言っていたよね?

 うわあ。


「あの、男神セレネ様? どのような祝福かお聞きしても?」


 うん、そこが、もしかしたら一番大事なとこかもしれない。

 返却不可だというのなら、どうやったら誤魔化せるかを考えないとだし。


『癒しと浄化とちょい予知もろもろ詰め合わせセットよぉ』


 へ? 『色々詰め合わせお得セット』みたいに言わないで欲しい。

 しかも、ちょい予知……って何? オマケ感半端ない感じで、とんでもないものを入れてきているんですけど。


 思わずジト目で男神セレネ様を見てしまった。


『ふふふ。あら、嫌だ。そんな目で見ないでちょうだい』


 男神セレネ様は、デプッとした身体を震わせた。

 黄金色がキラキラと瞬く。

 瞬く度に目が痛い。


 ……どうしよう? コレ?


『あ、あのねぇ、一度だけ貴女と会ってみたかったのよ。夢で神様に会うっていうのはセオリーでしょう? セオリー通りにやってみたら、神域じゃないの。神域なら、実体で簡単に降りられるし、折角だから、インパクト重視の見た目にしたっけわけよ。第一印象って大事だから。そして、お土産に祝福。ねえ? 完璧でしょう?』 


 ……うん。本当にどうしよう?


 頭の中がおかしくなりそう。視界いっぱいの黄金のひよ子の特大ばんみたいなデプッとした鳥さんが身体中キラキラなのに目までキラキラさせて……オネエ言葉でとんでもないことを言ってくる。


『女神セレネ様の神聖な気配がする』ってリュミエール殿下が私に言っていたけれど、こんな気配だとしたら、悲しくなってしまいそうだ。

 神聖な女神セレネ様のイメージが、崩れすぎて……現実逃避したくなってきた。……そう! これはきっと、夢。私は、夢だと思うことにした。事実、夢だし。

 そう思ったら、少し落ち着いてきた。


「どうして私に会いたかったのですか?」


 私は、男神セレネ様に気になることを聞いてみることにした。


『当代の聖女に興味があったのよ。天啓を授けて終わりじゃ薄情でしょう?』


 さらりと凄いこと言った!

 天啓って? 

 

 私の驚いた顔を見て男神セレネ様はデプッとした鳥さんの黄金色の翼をバタバタさせた。

 ……いちいちキラキラと眩しい。


『ああ、でも、天啓は大神官より神聖力を持っていた白蛇ちゃんに授けたわねえ。懐かしいわ』


 えっとぉ……

 それって、白? 


「あの! どうして私が聖女なのですか? そんな力もないのに……」


 オネエ司教たちに攫われたあげく散々聖女様と言われ、ついさっき、メアから拉致られそうになって、それだって聖女だと思われているせいで……いくら神様から言われたとしても自分が聖女だなんて絶対に認めたくない。

 

 未だ私には何の力もないし。それは、メアから良いように嬲られたことでも分かるというものだ。


『大丈夫よ。祝福もしたし』

 

 後付け? 

 思わず、心の中で突っ込んでしまった。


『あなたは、前世でも聖女だったじゃない?』


「神社の巫女です」


 つい、反射的にこたえる。


『それを、こちらでは聖女というのよぉ』


 それは、大雑把すぎるのでは? 

 ……どうしたものか。

 私は認めないけれど、本当に聖女だとしたら、徹底的に証拠隠滅しよう。

 男神セレネ様が天啓を大神官に授けなかったのは不幸中の幸いだった。

 だけど白から天啓を授かったとか聞いたことがあったかな? ……全く記憶にない。


「あと、祝福のセット中にはいっていた『ちょい予知』って何ですか?」

 

 これは、ちょっと気になってしまった。だって、予知能力があったら危険を回避できるかもしれない。


『それはね。本当に、たまになのだけれど、未来が見えるのぉ。ただ、見たいものが見えるわけではないのね。うーん。説明しにくいわあ。実際に見えたら分かると思うけど』


 うーん、これはきっと役に立たないやつだ。


 そう思って、私が遠い目をしていると、男神セレネ様が翼をパタパタさせ、ボテ! ボテ! っと、デプッとした身体に埋もれていた足を踏み鳴らした。


『ちょい予知はともかく、癒しと浄化は使える能力よぉ』


 私の反応が不満だったのか、男神セレネ様が祝福の素晴らしさをアピールしてくる。


 男神セレネ様……デプッとした鳥さんが前のめりで、瞳を潤ませて私を見つめてきた。しかも、だんだん私に、にじり寄ってくる。


 え? え? えっ?


 黄金色のキラッキラのお顔が近すぎた。視界いっぱいに広がって……これは、眩しすぎ!


 私は、耐えきれずに目を閉じた。




 

『……時間切れみたいね?』


 フワリと頬に風を感じた瞬間、男神セレネ様の声が何故か耳許でした。



 

 読んでくださりありがとうございます(*´▽`)


 いいね、ブックマーク、評価をありがとうございます。とても励みになります。


 執筆が遅めではありますが皆さまが楽しんでくださるよう頑張ります。

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