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幼女剣王KUSARI アイドルオタクの俺が殺伐最強美幼女に転生して異世界でアイドルグループを立ち上がるまで  作者: 王子ざくり


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 コレアが配った資料は、何箇所かに印を付けられた地図と、数字の並べられた書類だった。書類には、標題として人物や建物の名前が記されている。


「では、資料が届いたところで、話を再開させてもらいます」


 ルゴシが言った。


「さっき言った通り、アルスは『スネイル』配下の奴隷商を転々とさせられている。間違いなくこれは『洗浄』のためでしょうな。名前や出生地を書き換え、書類上まったくの別人に変えてしまう。そして移動した先の奴隷商でも同じことを行い、また次の奴隷商でも。通常はどんなワケありの奴隷(しょうひん)でも3ヶ所程度で済ますところを、アルスの場合は8ヶ所でやってましてね。ここまで書き換えを繰り返すと、彼の居場所を探すのも、彼が本来なんという人物だったか辿るのも、ほぼ不可能になる――文字通り、彼の人生の痕跡を洗い流してしまうというわけです。アタシの場合は『スネイル』の帳簿から何とか足取りを掴めたわけですがね」


 資料の表紙を指差し、彼は続けた。

 それは、マタ=ドナリの地図だった。


「結論から先に言いますと、現在(いま)アルスがいるのは、|ここ

《・・》です。このマタド=ナリに、アルスはいる。帳簿を見た限りでは、1ヶ月前マタド=ナリ(ここ)の奴隷商に運ばれて以降、他所の街に移動はしてない。じゃあ、マタド=ナリの奴隷商にガサ入れすれば見つかるかっていったら――」


「1ヶ月……」


 誰かの呟きに、頷いてルゴシは続けた。


「そう。1ヶ月というのは、余りに長すぎる。だって、2ヶ月で8ヶ所移動したんですから。そのあとの1ヶ月間、他所の街に行ってないっていうのは、これはもうこのマタド=ナリで買い手がついちまったと考えるべきでしょうな。で、どこの誰がアルスを買ったのか? それが、今日手に入った資料で割り出せたってわけです――では、お願いします」


 そこから先は、コレアの説明になった。


「本日押収した資料から、マタド=ナリ内での『スネイル』の人、物、金の流れは、おおよそ把握できました。ルゴシ=クチーナ氏に教授いただいた『スネイル』の帳簿の読み解き方が無ければ、ほぼ不可能であったと思われます。ありがとうございます」


「いえいえどういたしまして」


「資料からの情報により、マタド=ナリにおける潜在的『スネイル』協力者、拠点とされている施設が割り出されました。『スネイル』が新たな幹部を送り込んできたとしても、以前のように蔓延ることは防げるでしょう。この資料の活用により、ハジマッタ王国が得られるものは計り知れません」


 資料の2枚目を見るよう、コレアは促す。2枚目も地図だったが、こちらはマタ=ドナリではなく周辺国も含めた広範囲の地図で、日付と矢印がいくつも記されていた。


「そしてここから先は、おそらくハジマッタ(われわれ)には無用――活用する術のない情報となります。ご覧頂いてる資料は『スネイル』がある品物(・・)を移動させた記録になります。マタ=ドナリを出発し、各地にある『スネイル』の拠点を転々として、最後はマタ=ドナリに戻っている。この移動が始まったのが、半年前」


「アタシを痛い目にあわせた奴隷商のところが、3ヶ月とちょっと前ってところでしてね――で、その品っていうのが」


「『壺』です。押収した資料には、壺としか表記されていませんでした。しかし、別の資料と合わせてみると――3枚目をご覧下さい」


 3枚目も地図だった。2枚目と同じ地図で、日付と矢印が記されてるのも同じ。でも数は少ない。比べてみると、2枚目の日付と矢印を、いくつか抜き出したのが3枚目のようだった。


 コレアが言った。


「3枚目に記されているのは、各地の『スネイル』拠点で会議が開かれた日付です。幹部主催で――『スネイル』のボスも参加する会議です」


 ということは――


「『壺』とボスは、一緒に移動してるってことですな」


――ルゴシが言った、その時だった。


 俺の中で、像が結ばれた。

 同時に、声が甦る。


『ボスは……『スネイル』は、マタド=ナリにいる。少なくとも、俺らがボスに会うのは、いつだってそこだ。丸いテーブルに俺らを座らせて、目を瞑らせて、ボスがその周りを回って……』


 丸いテーブルを囲んで『スネイル』の幹部たちが座っている。

 テーブルの真ん中には『壺』が置かれている。


 ルゴシが言った。


「アタシの考えではね、その『壺』こそが『スネイル』という組織のボスであるところの――スネイル本人だ」


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