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3.情報交換と話し合い (2)

 本日は、少し長めなので、1話のみ投稿です。

 前書きと後書き、カッコ入りの文章が何故かルビにされてしまいがちなので、ところどころお前ルビじゃないだろ、というのがルビになっていると思います。

 筆者視点では気づきにくいので、もしあれば、教えていただければ助かります。

 何とかメンタルを回復させたあと。

 私は、やっぱり気まずさによって頭を深く下げたまま、のそのそと前を歩くアルトさんの後ろに、へばりつくように執務室に入る。

 私がドアから数歩離れた後、ゆっくりと、だけど完全に閉じられた。

 思わずびっくりして顔を上げ振り向く。

 そのとき。


 「さあ、もうフードを取ってもいいぞ」


 と、声を掛けられ、私は正面に向き直り、声をかけたひとを見た。

 壁際に置かれたコの字型のソファーにローテーブル。

 ソファーには、一人と二人に分かれて向かい合うように座っている。一人の人の隣にも、立っている人がいるが。

 よって、合わせて四人。

 それにしても、ソファーもテーブルも透明だけど何で出来ているんだろ......?

 内心首を傾げつつ、言われるがままフードを取る。

 そして、四人に向かって、ぺこりと頭を下げた。


 「あの、初めまして。

  私は、橘 芹奈、姓が橘です。

  私立桃華学院高等部、一年生です」


 とりあえず、そう名乗った。

 すると、すっと一人で座っている方の人が片手を上げた。

 銀の髪を後ろで束ね、金の瞳をした男の人で、顔立ちは隣に立つ、灰色の短い髪に金の瞳をした人と似ている。

 言い方はあれだが、アニメやゲームで見る王族っぽい雰囲気を纏った二人だ。

 ひょっとしなくても、兄弟かな?


 「丁寧な挨拶をありがとう。

  俺がこの国、リースリア王国の国王、マティアスだ。

  ちなみにそこに突っ立ってるのが俺の弟、ニコラウスだ」


 「兄さん、その説明はどうかと。

  セリナさん、初めまして。私がこの国王の弟で補佐を務めております、ニコラウスと申します」


 あ、やっぱり。

 でも、どっちがお兄ちゃんかわかんないやりとりだなぁ......。


 「今、なんか失礼なこと思っただろ」


 「きっ、気のせいですっ!」


 すっと私は目をそらした。

 王様、察し良すぎ、怖え......。

 すると、こちら側に背を向けて座っていた二人組がマティアスさんたちに一言断って立ち上がり、私の方へ来た。

 二人は背が高めの男の人と女の人のペアで、男の人は短めの黒い髪に濃い緑の瞳。

 そして、茶色かがった真っ直ぐな黒髪に濃い茶色の瞳をした女の人の方は......。


 「さ、咲良お姉ちゃん?」


 「芹奈ちゃん、久しぶりー」


 さっきまで男の人の影となってよく見えていなかった女の人は私の父方の従姉、風守 咲良、だった。

 私は思いもしなかった再会に驚きすぎて、ぽかんとしてしまった。

 すると、隣で様子を見ていた男の人が顔を片手で覆って大きくため息をついた。


 「どんな娘が事件に巻き込まれたのかと思えば、君の血族でしたか......。

  流石“トラブルコレクター”、納得です」


 うん、なんか不名誉な認定された。

 てか、咲良お姉ちゃん、一体何を、どれだけやらかしたの?!


 「もう、変なことを芹奈に吹き込まないで、クリス。

  芹奈ちゃんも、こいつのことは気にしなくていいわよ」


 「あ、うん......」


 スパコーンといい音を立ててはたかれるクリスさんを見つつ、私はその返事だけを、何とか絞り出した。

 私が引いていることを察してか、咲良お姉ちゃんは、こほん、と咳払いした。

 そして、私の方へと駆け寄ってきて、私を、ぎゅっと抱きしめた。



 「芹奈ちゃん、無事で、本当によかった......」


 「さ、咲良お姉......ちゃん......」


 私も、ぎゅっと、抱きしめ返す。

 ああ、間違いなく、私が知っている、咲良お姉ちゃんだ......。

 その声と体温で、ぷちんと何かが切れてしまった私は、思わず涙ぐんでしまった。

 声をあげて泣き出してしまった私を宥めつつ、顔を上げた咲良お姉ちゃんは、アリアさんとアルトさんの方を見た。


 「改めまして、私は、風守 咲良、と申します。

  『砦』で彼、クリス・エンディト、の補佐を務めている者です。

  この度は私の従妹を助けていただき、本当にありがとうございました」


 その声は、姿勢こそは私を抱きしめたままだったが、感謝が籠ったものだった。

 隣できりっと顔つきをしたクリスさんは、すすっと咲良お姉ちゃんの前へ移動し、


 「初めまして、『砦』から来ました、クリスです」


 と挨拶をしている。

 鼻をすすりつつ、私は、抱きしめられたままの姿勢で、気になったことを、小さな声で尋ねた。


 「咲良お姉ちゃん、いつからここのことを......?」


 すると、咲良お姉ちゃんも、そっと耳打ちするように、答えを返してくれた。


 「ええ、彼、向こうでは私と同じ、花森大学の同級生で、遠藤 透、って名乗ってるんだけど......、まあ、大学に入った頃に色々あったの。

  また、機会があったら教えてあげる、長い話になるから。

  仲良くしてあげてね、口はさいっこうに悪いけど」


 へええ、『砦』のひとって科学界にもいるんだ。


 「まあ、ね。私も、『砦』の一員だもの。

  そして、こいつは、科学界のことを知るために『留学』中なの、また向こうで機会があれば会えるかも、ね」


 『留学』なんてあるんだ......。

 『砦』って、どんなところなんだろう?

 私は内心首を傾げた。

 よくわかんない場所ってイメージはそのままだけど、怖いイメージは無くなっていくなぁ。


 「初めまして、カザモリ様、エンディト様。

  私が、アリア・シュバルト、こちらが、私の弟の、アルト・シュバルトです」


 「初めまして、アルトです」


 アリアさんとアルトさんが咲良お姉ちゃんたちに挨拶をする。

 その所作は、マティアスさんたちのように、貴族的なもので、本当に貴族なんだ、と実感する。

 ......だって、初対面があれなんだもん、仕方ないよね?


 「いやいや、そんな畏まった言い方しなくてもいいですよ! 私たちは、『砦』の者ですし。

  この世界の者ではないんですから」


 そう言って、咲良お姉ちゃんはにこっとアリアさんに笑いかけた。

 咲良お姉ちゃん、一国の王様や貴族相手でもそれでいいの? 

 『砦』だからいいのか......。

 私はもう、思考停止しかけていた。


 「......ええ、そうね。

  わかったわ」


 それを受け、アリアさんも、咲良お姉ちゃんに笑って見せた。

 咲良お姉ちゃんとアリアさん、なんか似てるもんなぁ、それをお互い嗅ぎ取っていたりして。

 やっぱり、同類同士、何か通じるものが......、ひっ、ごめんなさい、お願いだから二人してそんな目でみないでぇ! 別に悪い方で考えてないから!

 思わず、咲良お姉ちゃんから離れてしまうほどの圧だよ......。

 疑わし気な二組の目に晒されつつ、私たちは、コの字型ソファーに、マティアスさんとニコラウスさん、咲良お姉ちゃんとクリスさん、アリアさんとアルトさん、と移動し、別れて座った。

 ちなみに私は、一人だけ、普通のイス――とはいっても座り心地の良い、高価そうなものだ――をローテーブルの、コの字型ソファーがない辺に置いて腰かけている。

 座り心地はいいけど、居心地は悪い。

 私は落ち着かなくて、もぞもぞと体を動かしたのだった。

 なんというか、裁判を受ける気分が近いと思う。

 そうなると、位置的に、私が被告席、王族チームが裁判官、シュバルト姉弟が検察、『砦』チームが弁護人の位置だ、と頭の片隅で現実逃避するかのように考えた。

 私は何も罪を犯してない、はず......。

 こほん、とクリスさんが咳ばらいをした。


 「では、セリナさん、確認のため、貴女がここに来るまでの出来事を、もう一度、話してください」


 「はっ、はい!」


 私は頷いて、今朝、クラスメイトと出会ってからここで目覚めるまで、ナイトのことはまるまる抜いて話した。

 手帳でメモを取りつつ聞いていた咲良お姉ちゃんは、私の話が終わると一言、


 「ねえ、なんか隠してるでしょ?

  怒らないからお姉ちゃんに教えなさい」


 「君は『お姉ちゃん』では......、いでっ」


 と、言われた。

 思わず、肩を震わせる。

 ちなみに、余計なことを言いかけ制裁を受けているのはクリスさんだ。


 「な、なんのことかなー、わかんないー」


 「隠しても無駄よ?」


 さっさと吐け、そうすれば楽になるぞ、と笑顔で言われ、私は全てを正直に話すしかなかったのだった。

 ここに鬼取り調べ係がいます!

 もっとも、それを口に出してしまった約一名はがどのような道を辿ったのかは、ご想像にお任せする。

 咲良お姉ちゃんって、こんなにパワフルなひとだったっけ?

 まぁ、私、本気出した咲良お姉ちゃんに、最後までしらを切り通せたためしがないんだけどね......はぁ。

 咲良とクリスのコンビは、実は芹奈たちよりも先に、筆者の構想にありました。『砦』やその周辺、そして魔法についての大まかな設定は、あの子たちについて突き詰めていく中で生まれた、という裏話。

 咲良にきょうだいがいる、という設定はありましたが、従姉妹という設定は咲良たちを出す際に決まったので、二人は苗字が違います。芹奈にとっては、父方の親戚ですが、両親の結婚の際に父が改姓したために違う、という後付け設定。芹奈が小さい頃は交流が現在よりもあり、手や足が出やすいのは、間違いなくいとこたちの影響です。筆者が忘れてなければ、この辺りについて、きちんと物語内で触れたいですね。

 そして、いつかは、咲良やクリスをメインとした物語を出したいです。読みたい方がいれば、筆者が連載中の連載の内、一つを完結させた後に、手をつけたいな、と。

 それでは、紺海碧でした。次回は、6日に投稿します!

 

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