3.情報交換と話し合い (1)
何故かカッコ内の言葉がルビになってしまい、しばらく格闘した結果、諦めてカッコを外しました。
読みにくくなっていたら、申し訳ないです。
今回もちょっと長め&説明多い回です。
さて、私が王宮内を出歩くにあたって、いくつもの問題点があった。
まずは私の髪と服だ。
ちなみに、私には魔力がある、らしい。
つまりは、魔法が使える、ということだ。
ここの世界の魔法が、どういうものかは知らないけど。
ちなみに私以外の三人には、ナイトと契約できた時点で、わかりきっていることだったみたいだ。
そしてこれは、アルトさんを病室からアリアさんが放り出したあとあった、私への診察の上で確定した。
異世界転移の定番だと思うでしょ?
問題なのは、この世界では、魔力持ちには――後々詳しく説明すると言われたが――利き手とは反対の手首に、その属性の色の石のようなものでできた腕輪が、生まれつきついている、ことだ。
その腕輪の色は、髪の色と(例外もあるけど)一緒らしい。
魔力持ちは魔力持ちを感覚だけで見分けることが出来る、訳ではない。
だけど、私の髪の色である黒と、腕輪の色である青、明らかすぎる食い違いが出てしまうので、そこで私が科学界の人間だとバレてしまう可能性があるのだ。
普通、科学界の人間には魔力持ちはいない。
だけど、稀にいることは確かで、その場合、科学界における遺伝が優先するので、色が食い違ってしまうらしい。
それに、ここでは、このブレザータイプの制服はひどく目立つ。
これだけの情報が揃ってしまえば、誰かは知らないが、犯人さんに「あなた方が探しているであろう人はここでーす!」と言っているようなものだ。
これは結局、かなりぶかぶかだが、アリアさんの予備の濃いめの緑のローブを着て、フードですっぽりと頭を覆うことによって解決した。
どうせ、私はちびですよう、これからだもん。
まあ、フードが取れてしまえば、そこでゲームオーバーだけど、ないよりましだ。
カツラが切実に欲しい。
もう一つの悩みの種、ナイトは目立つので、ペンダントに戻ってもらった。
まあ、私が魔力持ちでナイトと契約しているので、アリアさんとアルトさんは私の魔法界残留は不可能ではないだろうと言っていた。
先述したことからわかるように、私の存在はかなり奇特だから。
そして、この事件は、それが原因で起きたものだといえるから。
まあ、詳しいこの世界の説明は残留が正式に決定して、教えてもいいと許可が出てから、らしい。
というか、今の私はかなりグレーゾーンの範囲まで情報を持った状況らしい。
魔法界に科学界の人間が来た場合、魔法界のことを知られないようにして帰ってもらうことが一番なんだって。
......なんか、ごめんなさい。
主な原因はナイトです。
私、がっつりアルトさんたちを巻き込むつもりはなかったんだよ?
私が助かったのは事実だけどさ。
というわけで、私とアリアさんとアルトさんの三人で執務室まで足早に向かった。
私の感想は、王宮って広いね、というものだった。
目に映る全てが目新しく、きょろきょろしているうちに、近くにある、ひと際大きな、“城”とはいかないまでも、ここがこの王宮の“中心”だといやでも分かる建物に――後でここの正式名称が“中央王宮”、通称“中央”だと知った――平然と入っていくアリアさんに内心慄きつつ、遅れまじとついて行く。
まるでラビリンスのような建物の中を見るうち、私のテンションはけっこう上がっていた――数分後のことを考えないようにしつつ。
こうして無事に、執務室と思わしき場所に到着した。
アリアさんが代表で、扉の前に立っていたSP的な立場と思わしき人とやり取りしているのを横目で眺め、私は緊張してバクバク鳴る胸を必死に抑え、そして俯いた。
すると、ぽん、と柔らかく頭を撫でられた感触がした。
見上げると、アルトさんが、わざわざ治癒の塔を出るときに深くかぶったローブのフードを取ってしゃがみ込み、私を安心させるかのように目を合わせて笑いかけてきた。
「そんなに緊張しなくて大丈夫だよ。
王はおれたちより10歳くらい年上の、まだ若いけど、しっかりされた方だよ」
「貴方それ誰目線のセリフですか......」
「あはは。
まあ、優しい方でもあるし、少々失礼なことしても処罰なんてないから。
だから、安心して」
それに、おれたちもいるからさ、とアルトさんは言った。
あ、励ましてくれてるんだ。
そう、私は悟った。
不思議と「頑張らねば」という気持ちが湧いてくる。
「はいっ」
私は、ぐっと胸の前で両手を握って見せた。
「さ、行くわよ」
いつの間にやら、扉の前で立っていたSPさんは、すぐに開けられる位置に移動していて、、アリアさんとすごく微笑ましそうにこちらを見ていた。
もしかして、今のやりとり......。
「うん、かわいいなあって見ていたわよ。
それに、あのアルトがそこまで気に掛けるの珍しいし」
「うわぁ......!」
私は思わず小さく悲鳴をあげ、その場にしゃがみこんだ。
は、恥ずかしくて、死ねる......。
自分のことで精一杯だった私は、最後にアリアさんが気になる一言を言っていたものの、それを気にすることも、ましてや突っ込むことなんて、全く頭にその時はなかったのだった。
『中央』の名前、実は、ちゃんと他の名前あったんです。しかし、書き起こす前に忘れてしまい、あれになったという。なんて言ってたっけな、自分......。
ちなみに、この国では、個人的に親しい人は王族への対応が友人と変わらなかったりします。だからこそ、アリア・アルト姉弟は、王族に対して割と失礼なことを言っても許されています。友人なので。もちろん、公の場では、きっちりとしますが。
ただ、それはこの国の特徴であって、場所によっては、王族・皇族が絶対的な権力を握っている国も存在します。いつか、そんな国の様子も、出せたらいいな(実は別作品でちょっぴり出てたり)。
それでは、紺海碧でした。次回は、5日にお会いしましょう。