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8.予定と計画を立てよう

 本日も2話投稿のつもりです。これは1話目。

 サブタイトルは完全に語感で決めました。決して何も考えずにつけて、意味まで配慮できなかったわけではないです。はい。

 「芹奈ちゃん、よろしくね!」


 「え、あ、うん」


 『一度巻き込んだのなら途中退場にせず、最後までつき合わせる』、というなんとも言えない決定に基づいて残留が決定したみどりちゃんは、ぎゅっと私の手を握り締めてきた。

 ......でも、これでいいのかなぁ......、『砦』って、こういう時、みどりちゃんたちは問答無用で帰すって思ってたから。

 ちょっと不安になりつつも私も握り返した、その時だった。

 何かが、私たち子ども組(さんにん)の目の前に、それぞれ現れた。


 「「「葉っぱ?」」」


 ちょうど私の顔程もある緑色の葉っぱが、目の前に現れて、私は驚いてのけぞった。

 ひらひらと落ちていくそれを、慌ててしゃがみ込んで、床に落ちる前にキャッチする。


 「な、なんですかこれ......」


 「それが、“言の葉”だよ」


 「ああ、例の!」


 兄様が私の隣にしゃがみ込んで、葉っぱを覗き込みながら、教えてくれる。

 勝手に飛んで行ってくれる、あれね。

 表には、私の名前と、『デア・シャッテン魔術団』とこちらの文字で記されていた。

 ......『橘 芹奈』表記ってことは、こっちでの名前を知らないってことで、いいのかな?

 知ってたら知ってたで怖いけど。


 「『デア・シャッテン魔術団』だと......?」


 「「「「デア・シャッテン?!」」」」


 兄様が強張った顔で呟き、それにマティアスさんたちやヤートさんたちまで驚きの声を上げ、食いついた。

 周りの反応に、思わず、私はびくっと身体を揺らした。

 え、ちょっと、説明お願い。

 割とその反応怖いよ......。


 「あ、ああ、うん、驚かせてごめんね」


 最初に我に返った兄様がそう言いつつ、私の頭を撫でた。

 うん、ごまかさないで。

 きゅっと睨むと、兄様はすっと目を逸らした。


 「『デア シャッテン』って、ドイツ語で『影』って意味って、聞いたことがあるぜ」


 そのセリフを発したのは、意外なことに、石川君だった。


 「それと何か関わりが、あるんだろ?」


 彼が、兄様に向かってそう問う。

 へえ、案外物知りなんだなあ。

 そう思っていると、私はみどりちゃんに耳打ちされた。


 「まー君って、十三歳や十四歳が罹る、あの病気に罹ってたから......」


 「それって、中二病と言うのでは......?」


 「お前ら、シリアスな場面でふざけるな」


 それを聞いた石川君は、むっとした顔で文句を言った。


 「それに、俺にそれを教えたのは、章だぞ」


 「あ、やっぱり、そりゃそうだよね。

  それにしても、宮沢君って、すごいねぇ。

  ひょっとして、歩く知恵袋とか?」


 四人の中でも頭脳派って感じはしてたけどね。


 「案外、橘って、酷い......」


 「はいっ?!」


 「はい、二人ともそこまで、おれが悪かった、ちゃんと教えるから」


 頭を抱えた兄様が、そう割って入った。

 ついさっきまでは、他と同じく厳しい顔をしていたはずのマティアスさんが、お腹を抱えてぷるぷるしているのを横目で見つつ、石川君と私は距離を取った。


 「ここがあなたたちが昨日までいた世界とは違って、“魔法”が存在し、それを扱える人間もいる、というのは知ってますよね」


 「「はい」」


 兄様に問いかけられた二人が、頷く。


「おれたち魔力持ちは、その力を扱う為の学校に行かなければならないんだけど、そこで、『この力を、決して私利私欲の為、人を傷つける道具にしない』って誓うんです」


 知らなかった。

 でも、すごく大切なことなのだろう。

 兄様の真剣な横顔を見つつ、私はこくりと息を呑み込んだ。


「デア・シャッテン魔術団は、その誓いを破り、自分の為なら魔法の力で他人が、傷ついて良いって、考えてるんだ」


 その顔は、真剣さは変わらないものの、顔色はだんだんと青くなっていく。

 昨日の、ラリマーさんの言葉が、頭をよぎる。


 『貴方は、貴方の属性を好きではないのは、知っていますよ。

  そのせいで色んな事件に巻き込まれたことも』


 確信は、持てないけど。

 私は兄様の横に近寄って、そっとその震える手に、自分の手を重ねた。

 なんとなく、そうしなければならない気がして。


 「えー! なにそれっ」


 「俺たち......、そんなにやばかったのか。

  じゃあ......」


 二人の顔色も、悪くなっている。

 頭に浮かぶのは、連れ去られたという二人。

 辺りに、重苦しい空気が漂う。

 私は、黙って葉っぱの裏に書かれた文面を読んだ。

 そこに、この状況を打破できる、何かがあるんじゃあないかって。

 まあ、それは、甘すぎる考えだった。

 そこには、こう書かれていた。


 『橘 芹奈様


  この度は、突然の召喚に応じて頂き、ありがとうございます。

  しかし、行き違いがあったことに関しましては、大変申し訳ございませんでした。

  つきましては、一週間以内に合流し、貴女と“お守り”、そしてその力について話し合いをしたいと思っております。

  貴女のご学友が大切であるならば、『デア・シャッテン魔術団』宛てに言の葉を送っていただければ幸いです。


  デア・シャッテン魔術団』


 ぷちっと何かが切れる音が、聞こえた。

 なにが、『突然の召喚に応じ』た、よ......!

 まさに、ふざけるな、だ。

 けど、これで分かった。

 奴らは、敵だ。

 そして間違いなく、私を脅しに来ている。

 私がこれに従わないと、赤堀さんたちがどうなっても知らないぞ、と言っている。

 いや、こうして私たちに接触してきたということは、村上さんたちだって危ないのかもしれない。

 そして、“お守り”というのは、きっとナイト、つまりナイトが宿るペンダントを指すのだろう。

 ――やっぱ私狙いか......!

 私は、言の葉を睨みつけた。


 「ふっふっふっ」


 自然と、笑いがこみあげてくる。

 ぐらぐらと、何かがお腹の底からこみあげてきた。


 「ふふふふふ」


 だんだんと、周りの音が、遠くなっていく。


 「わっ、芹奈ちゃんが壊れた」


 「おおお、おばあちゃんどうしよう......」


 「咲良と起こり方がそっくりですね......」


 「私あんなに怖くないわよ!

  それに、そんなこと言っている場合じゃあないわ!

  このままじゃあ私たち、氷漬けよ!」


 「芹奈は水属性だったのねぇ......」


 「おばあちゃん!」


 遠くの方で、誰かが慌てている声が、聴こえる。

 でも、そんなの気にならなかった。

 私は、これまでの人生で、一番怒っている。

 後から振り返れば、私がガチギレしたのはこれが初めてで、ちゃんとした思考力が飛んだのも、もちろん初めてだった。

 そして、このことがきっかけで、ちゃんと魔力の制御を学ぼうと決めた原因となったのは、言うまでもない、のだが。


 「セリナ!」


 狭まる視界のなか、唐突に兄様が割り込んできた。


 「何ですか?」


 「セリナ、分かるよ、だけど、今君がすべきことはこうじゃあないだろう?」


 「じゃあ、どうするんですか?

  このままじゃあ、赤堀さんたちはどうなるかわからない。

  なら、このふざけた奴らを、潰さなきゃ」


 うっすらと笑って見せる。

 しかし、兄様は怯むことなく、私の肩を掴んだ。


 「今、君の力は暴走している。

  このままでは、その子たちを助ける前に、君も、君の友達も死んでしまう!

  怒る気持ちも分かる、でも、今は、感情を抑えて!」


 し......ぬ?

 力の暴走?

 え? 今、私、どうなっているの?

 急に、私の胸の中に、怒り以外の感情――恐怖がこみあげてきた。

 どうしよう、どうすれば、感情をコントロールできるの?

 そんな私が、全てのコントロールが出来なくなるまでには、時間は掛からなかった。

 目の前が、真っ暗になる。

 怖い......、怖い!


 「すみません......、緊急事態ですので」


 「ええ、芹奈を助けられるのは、貴方しかいませんので。

  お願いします」


 「......はい」


 そう、遠くから聴こえたとき、首筋に衝撃を感じ、私は意識を手放した。

 手放す直前に、すうっと体から、溢れんばかりに存在感を発揮していた何かが、吸い出されていったのを、感じた。

 ......それにしても私、気失ってばっかりじゃない?

 魔力が暴走したらこういうことになるよ、という回。火属性だったら、たぶんもっとやばくなっていたかもしれません。かといってこのような事態は危険なので、訓練しよう、という話が出ていたのです。

 これからちゃんと教わって訓練しようね、周りのためにも。

 それでは、紺海碧でした。同時投稿されている次話に続きます!

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