7.再会1/2 (1)
本日も2話連続投稿、これは一つ目です。
ちょっと短い。話はだいぶ動きます。
結局、一人で出歩かせるのは危ない、とのことで、兄様と私で、昨日も訪れたマティアスさn......、様の執務室に移動した。
昨日、一人で外に出て迷子になったという、前科があるもんね......。でも、兄様、知ってるはずないのに、どうして知ってるんだろ?
まあ、今はそれを考えてる暇がない。
目的地に到着したからだ。
兄様に続いて、入室する。
「せ、芹奈ちゃん!」
部屋に入った途端、奥から突進してきた何かに抱き着かれ、私はよろけてしまった。
「む、村上さん?」
「ひぐっ、うん、うん!」
そう、抱き着いて来たのは、あのとき別れてしまった四人のうちの一人、村上 みどり、だった。
そして、私たち二人に抱き着いてきた少年が、一人。
「い、石川君......?」
後から来たのは、男子の片割れ、石川 正史、だ。
「おう」
私は二人の姿を見て、涙腺が決壊してしまった。
ぼろぼろと涙が溢れてくる。
「二人とも......、良かったっ、無事でっ......!」
「せ、芹奈ちゃんこそ......!」
「橘こそ、な」
二人の返答は息ぴったりで、私は、紛れもなく彼女たちが本物であると確信した。
そして、しばらく三人で、再会の涙を流し続けたのだった。
* * *
涙が落ち着いてくると、二人の様子が落ち着いて見えるようになった。
二人とも、周りに溶け込んでしまえるような、質素、悪く言えば地味なベージュのマントに、下はウチの制服をそのまま着ているようだ。
どうしてこんな格好を?
「みどりも、芹奈ちゃんの髪色とかについて、じっくりと話を訊きたいよ」
「お、確かに」
「うん、出来る限り説明するけど......、あとの二人は?」
そう、私に抱き着いているのはこの二人だけ。あとの二人は、どこに行ったのだろう。
「「それは......」」
二人は強張った顔になり、目を見合わせた。
まさか......。
「ほら、子供たち。
そのまま立ってないで、こっちに来なさいな」
昨日のローテーブルスペースには、何故か人数分の席が設けられた透明な円卓が出来ていた。
そしてその前に立っていたのは......。
「おばあちゃん!」
私の父方、そして咲良お姉ちゃんたちにとっても祖母にあたる、風守 美枝子、だった。
私は走り寄り、抱き着いた。
お父さんにとっては犬猿の仲である相手だが、私にとっては優しいおばあちゃんだ。
「よく、頑張っているねぇ」
「ううん、まだだよ」
私は、おばあちゃんの目を、じっと見つめた。
「私と一緒に巻き込まれた子は、まだいるの。
それに私、まだ何もしてない。
おばあちゃん......、お願い、私、まだやることがあるの」
「そうねえ」
おばあちゃんは、にこりと笑った。
「それでは、これからのお話をしましょうか。
まず、貴方達全員の話を聞いて、足りない知識を付け足すわ。
それから、一人ずつ意思を確認しましょう」
村上さんたちと私は目を合わせ、頷いた。
そして、異口同音に言った。
「「「お願いします!」」」
『砦』のあの二人だけでは危ないのでついてきた、芹奈と咲良のおばあちゃんが登場です。
二人のおばあちゃんの名前は、筆者の亡くなった祖母からいただきました。咲良たちの祖母の名前を考えていた時、名づけの条件に適していたのもあり、追悼の意味を込めて名前をお借りしました。
筆者の物語で今後彼女は、芹奈や咲良たち孫や、彼女たちと縁で繋がったクリスやアルトを、時に優しく、時に厳しく導く存在になるでしょう。
というか、なって欲しい。
それでは、紺海碧でした。同時投稿されている次話に続きます!




